2013年ドラフト総決算~宣誓~

選手コラム 2013年ドラフトニュース

 2013年ドラフト総決算、第7章、2012年の秋を迎え、2013年ドラフト候補者達の周りもだんだんと騒がしくなり、本格的なプロ入りへの競争がスタートします。

日本の中心

 大阪桐蔭が連覇を果たした熱い夏が過ぎ、季節はゆっくりと秋へと進む。プロ野球はリーグ終盤戦となり優勝争いに決着が着き始める中、熱い夏を戦い抜いた高校3年生達は名残と共にユニフォームを脱いでいく。

 大阪桐蔭・森友哉は一人、高校野球を戦い抜き自らの進路について話しする3年生の中に居た。韓国で行われた18U世界選手権、藤浪晋太郎、大谷翔平、北條史也などあと2ヵ月後にはプロ野球選手になるに決まっている選手の中で、2年生で参加したのは一人だけだった。そしてその面々の中で中心で戦ったのも森友哉だった。

 日本は初戦のカナダ戦で敗れたもののエース藤浪晋太郎が踏ん張り、星の取りこぼしはせずに第2ラウンドへと出場を決めたのだが、第2ラウンド初戦のコロンビア戦でまさかの敗戦を喫した。続く韓国戦を藤浪晋太郎の連投で勝利すると、勝てば決勝、敗れれば5位6位決定戦となる運命のアメリカ戦を迎える。

 この試合で森友哉は悪夢を見る。2度にわたる本塁突入でのタックルを受けケガで交代を余儀なくされる。アメリカの選手に対し完全に頭に血が上って興奮した状態でベンチに下がり、そのまま試合を落とす。1番を打ち扇の要を失った日本は、韓国にも敗れて6位に終わった。

 アメリカは日本の中心選手が誰であるかを知っていて、そこを力で潰しに来た。唯一の2年生が日本の中心だった。

 

舞台へ

 来年の甲子園の舞台に立つための戦いは、来年秋のドラフト会議の舞台に立つための戦いにつながっている。そのためには、9月から始まる秋季大会から既に戦いは始まっている。そんな中、神奈川からは桐光学園・松井が敗れるというニュースが飛び込む。その時、高校野球ファンは思った、「松井が出場しないと注目投手は誰になるのだろう」。次に名前を挙げられる投手がなかなか出てこない。その頃から2013年のドラフトについて「不作」という声が大きくなってくる。

 しかし、ポスト松井の座を目指し二人の投手が姿を現した。報徳学園・乾陽平と京都翔英の榎本和輝だ。乾陽平を見たプロのスカウトは一目でドラフト1位を口にした。素晴らしいフォームで撓った腕から投げられるストレートは低めに伸びてくる。球速も140km/hを優に越え、146km/hを記録した。そして近畿大会では大商大堺を5回コールドで完封すると、準決勝では春夏連覇の大阪桐蔭を7回わずか1安打に抑えて完封した。救世主が現れたと感じた。

 決勝ではもう一人の救世主と激突する。京都翔英の榎本和輝は1年生の時にホームランをかけてデビューを飾ったがその12月に左足を疲労骨折すると、投球を再会した6月には右肩痛に襲われマウンドから遠ざかっていた。秋からは背番号3を背負うと9月に投球を開始、大阪大会で登板は無かったが、近畿大会で378日ぶりの公式戦のマウンドに登る。すると神戸国際大附を1失点、履正社を延長12回1失点完投し決勝に勝ち進んでいた。

 乾陽平と榎本和輝は9回を投げて1-1の同点、延長戦に入り、10回、11回、12回も点を与えない。しかし13回、乾が2点を許すと、その裏に榎本が1点を失ったものの踏ん張り優勝を決めた。共にセンバツ出場を確実とし、松井に代わるヒーローを演じる事を許される事が決まっていた。

 

舞台は大学でも

 大学でも大瀬良大地に続く投手の候補が現れず、スカウトたちは焦りを感じるほどだった。そこで目にしたのがある投手の復活だった。慶應義塾大・白村明弘だ。白村は高校時代に145km/hを記録しながらも慶應大への進学を決めて進む。甲子園でベスト8に勝ち進んだ山崎錬などと共に慶応大の黄金期を作るかに思われたのだが、白村は練習への態度や規則を破るなどして野球部からも離れる時期があったという。

 素質を評価しながらも半ば諦めていたスカウトだったが、神宮で投げている白村の速球を見て、再び心に火が付く。150km/hの速球がうなりを挙げて、打者のバットを斬って行く。ストレートを狙っていても打てない球だった。大学生にも救世主が現れた。

 そして東都リーグでは東浜巨投手のラストシーズンに注目が集まっていた。調子は上がらなかった東浜だが最終的に4勝0敗と結果を残し防御率も1.02を記録、MVPに輝くのだが、最優秀防御率のタイトルは取れなかった。それを獲ったのは3年生の九里亜蓮だった。東浜巨投手がブルペンで200球近くを投げ込んでフォームを作るのを見て、競って球数を投げてきた。東浜も九里亜蓮を認め、タイトルを失ったものの笑顔を見せていた。

 

成長を見せるスラッガー

 森友哉など捕手の候補が注目されているこの世代に、新たに捕手の候補が追加された。花咲徳栄・若月健矢、関東大会では2試合連続のホームランを放ち、準決勝の常総学院戦では同じく捕手の候補・内田靖人の前で決勝点を挙げた。プロのスカウトは強肩と長打力を絶賛した。

 高知の和田恋も四国大会準決勝で5打数4安打、高校通算31号となるホームランを放つと、骨折したエースに代わってマウンドに登り142km/hの速球で四国を制覇した。

 和田恋は浦和学院の小島和哉から4打数4安打、あわやサイクルヒットの活躍を見せたものの敗れる。榎本和輝も吉田雄人のいる北照に初戦で敗れる。その中で、全国に名前が響き渡ったのは上林誠知だった。

 東北大会では青森山田戦で9回に決勝の2ランホームランを放つと、準決勝の酒田南戦では推定135mの特大ホームランを放つ。甲子園で見せたように確実にヒットを打てるアベレージヒッターだったが、国体の県岐阜商戦でホームランを放ってからスラッガーとして目覚めていた。明治神宮大会でも北照戦で満塁ホームランを放つと、決勝では5打数2安打2打点の活躍で優勝をおさめた。

 国体に続き明治神宮大会も制覇した仙台育英がセンバツで目標にされるチームとなった。

 

送る、贈る

 ドラフト会議が終わり、大学のリーグ戦も終わって大学4年生もユニフォームを脱いでいく。明治神宮大会はそんな4年生の最後の大会となる。亜細亜大の東浜巨投手は福岡大の梅野隆太郎をノーヒットに抑えて1-0で完封し貫録を見せる。法政大の三嶋一輝が則本昂大の三重中京大を破り、東京六大学の意地を見せる。しかし、この大会で主役となったのは3年生投手だった。

 大阪体育大の松葉貴大をやぶった桐蔭横浜大は準決勝で亜細亜大とぶつかる。亜細亜大は防御率NO1の九里亜蓮が先発、桐蔭横浜大は同じ3年生の小野和博が先発する。7回まで0を並べた二人だが、九里亜蓮が先に2点を失う。結局小野は点を与えず完封勝利を挙げた。東浜巨投手の決勝でのマウンドを贈る事ができなかった九里亜蓮は泣いた。高校時代からバッテリーを組んだ嶺井博希とも別れる時が来る。しかし東浜は来年も亜細亜は大丈夫だと安心してユニフォームを脱いでいった。

 決勝では法政大の三嶋一輝を破り、小野和博が完封した。桐蔭横浜大は創部7年目での大学頂点となった。創部2年目から5年目までの4年間をエースとして活躍し、全国を経験させてチームの土台を築いた東明大貴への感謝の贈り物となった。

 

2度目の決戦

 社会人野球日本選手権はいろいろな立場の選手の思いが入り乱れた。高校を卒業して社会人入りしたかずさマジックの岡本健がマウンドに登ると、6回途中まで4安打無失点に抑えて勝利する。日本生命の柿田裕太も初戦に1イニングを投げて高校以来の全国の舞台に立つと、2回戦のかずさマジック戦では先発したものの4回途中3失点でマウンドを降りたものの、二人とも目標に定めた3年目に向けて一歩一歩成長していた。

 また高校からJR九州に入り4年目を迎えていた加治屋蓮も開花の時を迎えた。高校2年生の時に亡くした母がタイムカプセルに「今、きっとプロ野球選手でしょうね」と書いた夢を果たすべく、2年間の体力強化で152km/hを投げるまでになったものの、1月に両足を疲労骨折してしまう。それから1年でようやくマウンドに立ったHonda戦、2番手で5回から登板し5イニングをヒット2本で無失点に抑えた。

 チーム残留を決めたパナソニックの秋吉亮は初戦を完封、2回戦も8回途中9奪三振無失点と絶好調でチームに優勝をつけるべく勝ち進んだ。しかし秋吉を止めたのはJR東日本だった。JR東日本は吉田一将、白崎元気の大卒1年目コンビが絶好調で二人で交代に先発し勝ち上がった。4連投となっていた秋吉も6回7奪三振で3失点と好投したが、この日は白崎が先発も5人の投手でリレーしたJR東日本が、選手の層の厚さを見せ付けた。

 決勝は都市対抗に続き、JX-ENEOSとJR東日本のJJ対決となる。吉田はJX-ENEOSの前に6回途中まで7安打4失点を喫してマウンドを降りる。再びJX-ENEOSの前に途中降板となり、体力の強化と更なるレベルアップをして、打倒JX-ENEOSを誓った。

 JX-ENEOSは決勝は登板しなかったがドラフト会議で指名を待ちながらも指名漏れとなった大城基志が都市対抗に続きMVPを獲得、来年のドラフト会議で指名を待つ事になる。

 

1月へ

 2012年の全ての野球の試合が終わった。高校、大学、社会人で既に多くの選手がドラフト候補として名乗りを挙げていた。2012年のドラフト会議で指名した選手の契約は、大谷翔平選手の説得や、相内誠投手の契約延期といった波乱もあったものの着々と進み、球団も年を締める。

 そして年が明けると、スカウトはドラフト候補の練習初めに足を運び、2013年ドラフトが幕を開ける。そして各球団とも第1回目となるスカウト会議を行うのだった。

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