2013年ドラフト総決算~三寒四温~

選手コラム 2013年ドラフトニュース

 2013年ドラフト総決算、第9章、スポニチ大会、センバツ高校野球大会、そして大学の春季リーグ、ひっそりとしていた野球場に選手の声と応援の声、ファンの歓声が響く。2013年ドラフト候補にとっての、ラストスパートが始まる。

社会人野球開幕

 JABAスポニチ大会、神宮球場には12球団のスカウトが集まっていた。目当ては2戦目に登場するJR東日本・吉田一将。191cmの右腕は新春のスカウト会議で候補に挙げるチームこそ少なかったが、既に社会人NO1と評価されている投手だった。

 その試合の前にスカウトの目を集める投手がいた。神宮球場の開幕カードはHonda熊本の2年目・平田真吾と、東京ガスの3年目・石川歩が先発する。まだ寒い神宮で二人とも立ち上がりに失点する。その後は二人とも粘りの投球を見せるが、平田真吾は5回にピンチを招き降板する。石川歩は粘りを見せるが試合は同点となり勝利投手にはならなかった。しかし、この二人の投球は新たな候補の登場として、スカウトの目に留まった。

 2戦目に登場したJR東日本・吉田一将は8回を投げて7奪三振、4安打2失点と安定感を見せて勝利を挙げる。チームは予選リーグで敗退したが、視察したスカウトからは「先発で使いたい投手」と早くも起用法を見据えた声が出る。ケガも無くフォームのバランスも崩さず、春の登板を迎えたことにスカウトは安心する。そして今年1年間は見続けることになる、と心の中でつぶやく。

 同じ日、岩槻球場で投げた投手がいる。神戸国際大附から入社して3年目、入社時に3年でプロ入りすると宣言していた新日鐵住金かずさマジック・岡本健投手が、3年目の春にキッチリ結果を残す。NTT東日本戦に先発し7回3失点も9三振を奪って勝利を挙げたのだった。東京から離れた岩槻に来たスカウトは少なかった、いたかもわからない。しかし、この情報はすぐに伝わり、ドラフト候補投手にまた一人加わった。

 昨年、都市対抗、日本選手権連覇を果たしたJX-ENEOSは三上朋也投手を先発させる。三上朋也は大学時代に190cmの身長でオーバースローで剛速球を投げていたが、腕をスリークォーターに下げ、横からスライダーなど変化球を投げる投手になった。社会人投手は独特のフォームで投げる投手が多い。社会人で生きる道を模索し、角がどんどんとがっていく。三上投手もこれで戦う事に決めたのだろう。チームも初戦の先発と準決勝で先発させ、今年は三上で連覇を狙うと宣言をした。

  

センバツ大会序盤、春の魔物

 続いて高校野球が幕を開け、甲子園の前に出場する各チームは各地で練習試合を行い、実戦経験を取り戻してく。昨年は藤浪晋太郎と大谷翔平が試合毎に球速を伸ばし、三振を奪って競い合いとなったが、今年はホームラン数で競い合う。大阪桐蔭の森友哉は序盤の3試合で4本塁打を記録すると、仙台育英の上林誠知も1試合2本塁打を放つ。常総学院の内田靖人は8試合で5本を放つ。それぞれ開幕が待ちきれずに次々を花火を打ち上げていた。しかし、大阪桐蔭のもう一人の主砲・近田拓矢は四球を受けて骨折しベンチ入りメンバーから外れてしまう。3連覇を狙う王者・大阪桐蔭に暗雲がたちこめた。

 センバツ大会が開幕すると、さすがに本番の緊張感が漂い、スラッガー達が、まずは小手調べという感じでヒットで競演する。聖光学院・園部聡選手が3安打、北照の吉田雄人は3安打2盗塁、上林誠知はワンバウンドの投球をセンターに運び、快足を飛ばして2ベースにすると、センターではスライディングキャッチの華麗な守備を見せた。出場校最後の出場となった大阪桐蔭・森友哉は5打数4安打3打点と爆発し、トップランナーで最注目選手の座は譲らなかった。

 投手だって負けていない。済々黌の大竹耕太郎は初戦で注目スラッガーの一角・内田靖人のいる常総学院と対戦する。内田が2安打を放ちチャンスを作ったものの、大竹の変幻自在の投球で9安打を許しながらも完封する。敦賀気比の岸本淳希も9回3安打で5失点も11奪三振を記録、喜多亮太とのバッテリーはこの大会で評価が大きく上がった。

 ただ、スカウトが最も期待していたと思われる報徳学園の乾陽平は最速も142km/hどまり、9回4安打8奪三振も4失点で初戦で敗れる。スカウトからは、素質の良さを評価するコメントが見られたが、乾陽平が見せた今年最後の好投になってしまう。花咲徳栄の147km/h右腕、関口明大投手も調整に失敗した。143km/hを記録するも制球が定まらず8回11安打4四死球で8失点で敗れる。秋に積み重ねた自信が崩れていった。一二三慎太投手、伊藤拓郎投手など、これまで多くの投手がこのパターンで自分の投球を取り戻すのに苦労をしていたが、今年も魔物が襲いかかった。関口の球を受け、励まし続けた若月健矢は、打撃でもバックスクリーンにホームランを放ち奮闘するが、勝利にはつながらなかった。

 魔物は森友哉にも襲い掛かる。2回戦に向けての練習中に右足に打球が直撃し、2回戦は欠場する。近田拓矢、森友哉の主軸2人を失い、さすがの大阪桐蔭も力尽きた。

 

センバツ大会終盤、主役無き後

 連覇を狙った大阪桐蔭と高校NO1注目選手の森友哉が甲子園を去り、勝ち残ったチームは一気にボルテージが上がる。園部聡は昨年夏の甲子園に続きホームランを放って勝利すると、上林誠知はホームランこそないものの決勝点を挙げて勝ちあがる。その上林誠知を止めたのは高知の和田恋。仙台育英戦では内野安打ではあるが2本のヒットを放ってチャンスを作り勝利した。その和田恋は準決勝で怪物・安楽智大と対戦しホームランを放ったが敗れ去った。

 聖光学園も敦賀気比・喜多亮太のホームランの前に敗れると、その敦賀気比も浦和学院も高田涼太の3試合連続ホームランの前に敗れる。結局、決勝でも怪物・安楽智大を倒した浦和学院が優勝し頂点に立った。

 

 甲子園で熱戦が繰り広げられている間にも、各地で既に春季大会が開幕し、神奈川では桐光学園の松井裕樹は初戦で2安打15奪三振を記録した。センバツ大会で期待した投手が力を見せられなかった中で、「やっぱり今年は松井か」とスカウトの目は今後、松井裕樹に集中していく。

 

大学野球は三寒四温

 センバツ高校野球の熱が冷めやらない中、今度は大学生の戦いが始まる。東都では東浜巨投手にエースを託された九里亜蓮が開幕戦を務めたが、昨年とは違うピッチングを見せる。低めのコントロールで打ち取って0点に抑えるピッチングが持ち味で奪三振も少ないスタイルだったのだが、この日は6回途中までに10個の三振を奪った。しかし6回途中に逆転されて6失点でマウンドを降りる。その後、1勝を上げたものの自分のスタイルを見失った九里投手を生田監督は2番手に下げ、エースの座を3年生の山崎康晃投手に譲る事になってしまう。

 その東都でひときわ注目されたのは、国学院大の杉浦稔大だった。専大との試合で3安打8三振、146km/hの速球が低めに決まり完封すると、3回戦でも1失点完投し、多くのプロのスカウトがドラフト1位確実と評価をした。しかしその杉浦稔大投手にもアクシデントが襲う。練習中に右足を捻挫すると、その後の登板は無く、ドラフト1位確実と評価された矢先に暗雲が立ち込めてしまう。

 東都リーグは、終盤に本来のピッチングを取り戻した九里亜蓮が再びエースに返り咲くと、5勝1敗でMVPに輝き、東浜巨投手から受け継いだ連覇を4に伸ばした。

 

 東京六大学では開幕前に高らかにドラフト1位宣言をした慶大・白村明弘投手、昨年秋のピッチングからどれだけ成長しているのか、期待を持ってスカウトが集まった。しかしその期待は裏切られる。開幕戦で先発するも6回7失点、3回戦でも5回にホームランを浴びるなど3失点しマウンドを降りる。この時の態度にチームメイトからは不満が出てエース失格となってしまった。

 リーグは法政大の1番打者で.488を記録した大城戸匠理、3番で.438を記録した河合完治、4番で3本塁打を放った西浦直亨のドラフト候補トリオが暴れまくる。完全優勝を狙った法大だったが最後に落とし穴があった。優勝を争う明治大との直接対決で初戦を獲って優勝を確信したはずだったが、第2戦で5-5の引き分けに持ち込まれると、3戦、4戦を連敗し、目前まで来ていた優勝がするりと逃げていった。

 優勝したのは明治大、中でも関谷亮太投手は140km/h中盤の速球に角度があり、打てないストレートを投げていた。プロも注目をしたのだが、関谷投手は既に社会人に進む事を決めていた。春に指を骨折した岡大海選手もシーズン終盤に調子を上げて2本塁打を記録し優勝に貢献した。

 

 地方でも横浜商大の岩貞投手は15個以上の三振を奪って完封するニュースが流れると、山梨学院大の高梨裕稔投手も好投した。しかし、スカウトが集まったのは、やはり福岡、九州共立大の大瀬良大地投手の元に連日10球団以上のスカウトが集まり、注目度はNO1だった。

 しかし、その大瀬良大地がおかしい。3年生までリーグ戦での黒星はわずか1つだったが、キャンプ中に肩の張りを訴えると、それを押して登板した初戦で4失点し、2年ぶりとなるリーグ戦での敗戦となってしまう。その後、力でねじ伏せ防御率は0.91でトップとなるが、今シーズンだけで3敗を喫し優勝を逃してしまう。常連となっていた大学選手権に大瀬良投手の姿は無かった。

 

 期待通りの成長を見せた選手もいれば、順風満帆とは行かずに不安な面を見せる選手もいた。スカウトの顔が試合のたびに輝いたり曇ったりした春が終わり、暑い夏の季節が来る。

 春季高校野球、大学野球選手権、社会人都市対抗への戦いが続いていた。

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