高校野球神奈川大会では、今年のドラフトの目玉、桐光学園・松井裕樹投手がこの夏2戦目となるマウンドに登った。相手は横浜商大高。
初戦同様、三振をバンバン奪うようなスタイルではなかった。初回、松井投手はストレート狙いの商大打線に対し145km/hを記録したストレートをあえて投げて打たせて取るピッチングを見せた。ただし「少し力んだ」と話すように高めに浮いたストレートやスライダーを打たれ、3回に先制点を許してしまう。
しかしその裏に自らのタイムリー2ベースなどで5点を奪って逆転すると、4回、5回はチェンジアップを中心に3三振を奪った。チームは5回に5点を奪いコールド成立、5回64球を投げて4安打4奪三振1失点という内容だった。
この試合には巨人、千葉ロッテ、阪神、東京ヤクルト、埼玉西武、福岡ソフトバンク、東北楽天、横浜DeNAの8球団20人のスカウトが視察、巨人は原沢敦球団代表兼GMが、千葉ロッテは林信平球団本部長の球団トップが視察した。
○巨人・原沢敦球団代表兼GM:「本調子じゃなかったけど、ドラフトの1位候補であることは変わらない」
○千葉ロッテ・林信平球団本部長:「松井君は、ストレート、スライダー、特にチェンジアップがすばらしい。失点とか彼には関係ない。1位でないと取れない選手です。これだけお客を呼べるというのは得難い存在」
○阪神・佐野仙好統括スカウト:「一番いいのは腕の振り。真っすぐでもスライダーでも同じ」
○楽天・後関スカウト:「立ち上がりは力みがあったけれど四、五回に自分の投球ができる修正力を見せた」
○横浜DeNA・欠端スカウト:「序盤にスライダーの切れがよくなかった。でも、チェンジアップはいいし、四回に連続三振取ったり、違った投球に変えられる」
○福岡ソフトバンク・田口スカウト:「三振を取るだけじゃなく、打たせて取ることやけん制などクレバーな投球が見えた」
思わぬ幕切れに、松井の感情が高ぶった。7点リードの5回2死満塁。3番・水海翔太右翼手(3年)が左翼席に“サヨナラ”満塁弾を放ち、ゲームセット。「5回で終われて良かった。自分が1点取られた分、11点も取ってくれた仲間に感謝です」。甲子園に春夏4度出場の強豪相手に、5回コールド勝ち。うれしい誤算に、お立ち台で笑みがこぼれた。
大人になった松井裕樹が、マウンドにいた。初回、相手打線が初球からスイングした。「積極的に打ってきたので、ストライクゾーンに入れていこう」。あえてMAX145キロの直球で押し、打たせて取った。奪三振がわずか4にとどまったのは、省エネ投法の裏返しだった。
“過去の栄光”を捨てた。「1年前は点差がついても、空振りを取ろうと強引にスライダーで攻めていた」。三振にこだわるあまり、コールド勝ちで100球を要したこともあった。だが、14日の初戦(2回戦)で9回を投げた後、中7日で迎えた万全のマウンドでも、力むことなく5回をわずか64球で投げ切った。
スタンドからはプロ8球団のスカウトが桐光学園・松井に熱視線を送った。 球団幹部が続々と視察。初めて見た巨人の原沢敦球団代表兼GMは「本調子じゃなかったけど、ドラフトの1位候補であることは変わらない」と評価。ロッテの林信平球団本部長も初視察で、平日にもかかわらず球場に1万人の観衆を集めた左腕を「これだけお客を呼べるというのは得難い存在」と語った。阪神・佐野仙好統括スカウトも「腕の振りが素晴らしい」と絶賛。ヤクルト、西武、ソフトバンク、楽天、DeNAも視察し、獲得合戦がますます熱を帯びている。
月曜日ながら観衆は何と1万人。ネット裏にはドラフト1位指名を決めた阪神の5人など、8球団のスカウトが集結。巨人・原沢球団代表兼GM、ロッテ・林球団本部長ら重鎮も顔を並べた。一昨年秋の球団代表就任後、初の高校野球視察となった原沢代表は「1位候補に変わりはない。また見たい」と今後も直接出馬する考えを示した。
※そのほかの球団のスカウトなどのコメントがありまる
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