大学野球選手権は決勝戦が行われ、亜細亜大が上武大に7−1で勝利し日本一となった。昨夏に難病の潰瘍性大腸炎になった田中幹也主将とエースとして成長した青山美夏人投手が柱となっていた。
30年の中で最も弱いチーム
優勝後のインタビューで、亜細亜大の生田監督は「30年亜大でコーチ、監督とやる中で一番弱いチームでした」と話した。
昨年は阪神にドラフト5位で指名された岡留英貴投手と3年生の青山美夏人投手の2枚がいたが、今年は青山投手が残ったものの、2、3年生でもう1人の柱となる投手が春前の時点でおらず、東都リーグ戦でも1戦目と3戦目は青山投手が投げ、2戦目は1年生投手などを起用してきた。勝ち点5のうち、3試合が○●○の2勝1敗での勝ち点だった。
しかし、その中でエースの青山投手が大きく成長し、リーグ戦で6勝0敗の成績を残した。その青山投手はこの日の決勝でも9回139球を投げきり、9安打を許すも7奪三振1失点と先発としてエースの投球を見せた。
また、チームの柱である主将についても、元々は1年時からリーグ戦で出場をしている内野の要・田中幹也選手が就任するはずだったが、昨年夏に難病の潰瘍性大腸炎を患って離脱した。治療に専念し、その後、新型コロナのクラスターが発生して寮が閉鎖されるなどして、田中選手が戻ってきたのは今年2月だった。
昨年12月には新チームの役員として藤江亮太選手が主将に就任した。しかし、2月に復帰した田中選手が「僕はプロに行きたい。今、休んだら僕の夢が絶たれてしまう。練習をさせてください」とすぐに練習を始め、グラウンドで1人で練習を始めると、他の選手が1人、2人と寮に戻り、グラウンドで自主練習を始めた。
チーム全員がそろったのは2月中旬で、まずは体力づくりから開始した。その中で「幹也が頑張っている。僕らはもっと頑張れる」とチームが一つにまとまり、藤江選手も田中選手に主将を受け渡した。
この日、田中選手は2番ショートで出場し、5打数2安打3打点。ショートでも再三の好プレーを見せた。藤江選手も前日の東日本国際大戦でホームランなど3打点を挙げる活躍を見せ、この日も1安打1打点を記録した。
2月の時点では亜大史上最弱だったかもしれないが、20年ぶり5回目の日本一となった。
青山投手は先発としてはまだセーブしながら投げているところがあるが、昨年まではリリーフとして快速球を投げていた。この春はエースとしてチームを日本一に導き、秋は全国連覇の目標もあるだろうが、自分の人生のための投球を見せるかもしれない。
また、田中選手はこの日のプレーを見ても、ドラフト2位前後で指名されそうな能力の高さを持っている。日本ハム・坂本スカウトも「普段の練習から、集中力を持って実直に野球と向き合っている。そこに勝負強さが生まれる」と練習の態度を評価する。スペシャルな足もあり、18日からの大学代表合宿では昨冬に最速だった日体大・矢澤宏太選手などとの足の競争も注目される。
まずは日本一を讃えたい。



生田監督は「30年亜大でコーチ、監督とやる中で一番弱いチームでした」と話した。2月上旬、コロナのクラスターが発生し寮が閉鎖すると、潰瘍性大腸炎から復帰したばかりの田中幹は指揮官に直訴した。「僕はプロに行きたい。今、休んだら僕の夢が絶たれてしまう。練習をさせてください」。たった1人、グラウンドで練習を続けた。それを聞きつけた選手たちが、1人、2人と寮に帰り自主練習を始めた。全員そろった2月中旬。体力づくりからスタートした。





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