全国高校野球選手権大会では、山梨学院が岡山学芸館に14-0で圧勝し、同校史上初となる夏の甲子園ベスト8進出を決めた。来秋のドラフト候補にも挙がる2年生の「二刀流」、菰田陽生投手が194cm100kgの巨体から150キロのストレートを投げ下ろし、打っても3安打3打点の豪打で、その規格外の才能を全国に見せつけた。
マウンドで躍動、自己最速に迫る150キロを連発
「7番・投手」で先発した菰田陽生投手は序盤からエンジン全開だった。初戦の聖光学院戦では力をセーブしていたというが、「相手が分析してくるなか、自分も出力を上げなければ打たれる」と、この日は力で圧倒。3回にはこの日最速となる150キロのストレートで空振り三振を奪うと、球場は大きなどよめきに包まれた。4回にも再び150キロを計測するなど、角度のある剛速球を武器に岡山学芸館打線を圧倒。5回2/3を投げて許した安打はわずか1本、無失点と完璧な投球内容で、打線に流れを呼び込んだ。
この投球に、かつて甲子園を騒がせた元西武の松坂大輔氏も「立ち上がりからゲームを支配していた。走者を出したらギアを上げるクレバーさも持ち合わせている」と、そのパワーだけでなく投球術も高く評価した。
打っては「甲子園が壊れるかという勢い」の3安打3打点
バットでも二刀流の鋭さを見せた。初戦では無安打に終わった悔しさを晴らすかのように、この日は3安打3打点の大暴れ。圧巻だったのは2点リードで迎えた5回、2死二塁の場面だ。菰田が振り抜いた打球は、遊撃手の頭上を襲う痛烈なライナーとなり、瞬く間に左中間フェンスに到達。194cm巨体を揺らしながら激走し、悠々と三塁に滑り込んだ。
吉田洸二監督も「甲子園が壊れるかという勢いだった」と話す一打で、チームはこの回一挙6点の猛攻。試合の趨勢を決定づけた。菰田自身も「甲子園という舞台で、自分のプレースタイルを発揮できたのはよかった」と納得の表情を浮かべた。
弱点克服と規格外の逸話
来秋ドラフトの目玉と目される存在だが、意外な弱点がある。それは「暑さ」。吉田監督から、寒い地域に生息する「ホッキョクグマ」と揶揄されるほどだったが、チームメートとサウナに通い詰めるというユニークなトレーニングでそれを克服。「今日は暑かったけど、自分のピッチングができた」と、猛暑の中での快投で成長を証明した。
また、吉田監督によれば、プロレス団体から声がかかっているという。元プロ野球選手でプロレス界の英雄、故・ジャイアント馬場さんの足のサイズが34cmだったのに対し、菰田は32cm。そのスケールの大きさから、「ジャイアント菰田」というリングネームもイメージできる。
山梨学院は先発全員安打となる17安打14得点の猛攻で、春夏連覇へ向けて大きな弾みをつけた。準々決勝の相手は、昨夏王者の京都国際に決まった。京都国際のエース左腕・西村一毅投手との好投手対決が予想される。
今大会は横浜・織田翔希投手や沖縄尚学・末吉良丞投手など、実力のある2年生が甲子園を沸かせている。その中でもひときわ大きな輝きを放つ菰田。「まずはチームの勝ちにこだわりたい。少しでも長く3年生と野球ができれば」。怪物の夏はまだまだ続く。

















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