ドラフト総決算2011 ~第2章~

怪物の苦悩と主役交代

2009年秋、怪物・伊藤拓郎と1年生遊撃手・松本剛が率いる帝京は東京大会を制し明治神宮大会に臨む。準決勝では2010年ドラフトの目玉候補だった東海大相模・一二三慎太と対戦、0-4で敗れるものの一二三に匹敵する体の大きさと迫力のあるストレートで、1年生で甲子園、明治神宮大会の大舞台を経験し世代リーダーとしての評価が確立されていく。観客は冬を越えた2010年のセンバツ大会では更なるスケールアップされた投球を求めた。

2010年センバツ、伊藤拓郎は大会前の練習試合で不安を抱えていたものの1回戦の神戸国際大付戦では2失点したものの147kmのストレートと大きなスライダーで5安打9奪三振で完投勝利を挙げ、まだ寒い時期では素晴らしい投球をしたと観客を満足させた。しかし2回戦の三重戦では3-2で勝利したもののストレートの球威が落ちスライダーを多投して何とか勝利を収めた。マウンドには怖いもの知らずの体の大きい怪物の姿ではなく、不安を隠せず体を小さくしている一人の高校2年生が立っていた。
 センバツは3年生世代と2年生世代の戦いが繰り広げされた。準決勝では3年生世代を代表する有原航平投手に2年生世代を代表するスラッガー、丸子達也を要する広陵に対し、横尾俊建、畔上翔、高山俊の2年生世代をそろえた日大三が有原を攻略、9-14で打ち破る。島袋洋奨、我如古盛次、真栄平大輝と3年生世代をそろえた興南と2年生世代を代表するバッテリー葛西侑也、時本亮を要する大垣日大との対戦は10-0で興南が圧勝した。そして決勝、9回まで5-5の同点で延長戦に突入すると11回に5点を挙げた興南が勝利、3年生世代に軍配が上がった。

大学でも世代間の対戦が注目された。東京六大学春季リーグ戦では斎藤世代を呼ばれる4年生、斎藤佑樹、福井優也、大石達也をそろえた早稲田大に対し、3年生エースの明大・野村祐輔が完封勝利を挙げて勝利、勢いをつけて勝ち進むかと思われたが2年生世代の竹内大助、福谷浩司をそろえた慶大が優勝、今季から就任した元プロの江藤省三監督のプロを意識した練習で4番を任された伊藤隼太選手は2本塁打、12打点と頭角を表し始めた。
 東都リーグでも4年生の中大・澤村拓一投手に対し3年生の東洋大・藤岡貴裕が大ブレークを見せる。立正大戦、亜大戦、國學院大を完封、39イニング連続無失点記録を打ち立てた。澤村との直接対決は3回戦で実現したものの澤村が完投勝利、藤岡は連投の疲れもあり2回でマウンドを降りた。
 直接対決では敗れた藤岡だが、6勝1敗、防御率1.07で澤村の防御率1.23を上回り最優秀投手、そしてMVPに輝いた。

 直接対決

 2010年の大学選手権は3年生世代の競演となった。東北福祉大・中根佑二、桐蔭横浜大・東明大貴、愛知学院大・浦野博司などが好投を見せる中、最終的に勝ち上がったのは東海大と東洋大、菅野智之と藤岡貴裕の直接対決が実現する。
 菅野投手は同志社大戦で7回コールドながらノーヒットノーランを達成、続く慶大戦では155kmをマークし9回を4安打17奪三振と驚異的なピッチングを見せていた。対する藤岡投手は準決勝の創価大戦で2失点するも9回をわずか3安打に抑える好投を見せ、万全の状態で決勝に臨む。 決勝は菅野が6回途中まで8安打3失点で降板、熱闘の疲れが出たのに対し藤岡は伊志嶺、伏見のいる東海大打線を5安打9奪三振で完封し全国を制した。
 世界大学野球選手権では斎藤、大石が軸となるも、予選のキューバ戦で藤岡が先発を任される。結果は4回を投げて7安打4失点と世界の壁を痛感する内容だった。7回からは菅野も登板、157kmをマークし3回で5三振を奪うもキューバのホームラン攻勢に会い3失点、力勝負だけでは世界と戦えないことを感じたのだろう。その後、菅野投手の投球スタイルが変わっていく事になる。
 決勝リーグでは斎藤佑樹がアメリカ戦で敗れ優勝は逃したが、中継ぎとして防御率0.00の好投を見せた野村祐輔、台湾戦で先発した菅野智之、そして3位決定戦の韓国戦で先発し5回をわずか1安打に抑えた藤岡貴裕が活躍を見せた。

新たなライバルの出現

 帝京・伊藤拓郎はセンバツの投球からフォームを崩し復活ができないでいた。1年生の時に甲子園で出した148kmの印象が重くのしかかり、周囲の勝手な期待と聞こえるタメ息や評価に押しつぶされていく。夏の東東京大会では1試合に先発したものの本格派右腕の面影は無く敗れていった。
 西東京大会では中心となっていた畔上翔、横尾俊建、高山俊に加え吉永健太朗がエースにのし上がっていく。準々決勝の堀越戦で完投勝利を挙げると準決勝の日大鶴ヶ丘戦では8回途中から延長14回までを熱闘、惜しくも敗れたが140km中盤のストレートは魅力十分だった。
 甲子園では興南の島袋、東海大相模の一二三など3年生が最後の夏を戦っている中、初戦で有原、丸子を擁し優勝候補の一角と呼ばれた広陵を下した投手がいた。聖光学院・歳内宏明。味方打線が有原の迫力ある投球に4安打に抑えられながら奪った1点を守り、140km前半ながらキレの良いストレートで6安打5奪三振で完封勝利を飾った。歳内は続く3回戦でも後に東京ヤクルトにドラフト1位指名される山田哲人や同じ2年生の海部大斗、石井元のいる履正社からも5安打10奪三振、2失点で完投し甲子園のヒーローとなった。

 

 世代リーダーになりきれなかった帝京・伊藤拓郎。だが1年生が見せた甲子園の148kmはライバル達に確実に火をつけていた。秋以降に頭角を現し、高校生候補は豊作となっていく。
 逆に大学生は菅野智之の圧倒的な投球、藤岡貴裕、野村祐輔の既にプロレベルといわれる安定感の高い投球に注目が集中しBIG3を中心とした2011年ドラフト戦線がスタートしていくのだった。

続く


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