【ドラフト物語】福岡ソフトバンク・柴原洋選手と96年ドラフト会議

選手コラム

 福岡ダイエー・ソフトバンクで15年間プレーした柴原洋選手が昨年をもって引退、そして昨日セレモニーが行われた。

 柴原選手が最後の1打席を迎える中、内野を守ったのは福岡ダイエー時代の内野手、一塁手・松中信彦、二塁手・井口忠仁(資仁:千葉ロッテ)、遊撃手・鳥越裕介、三塁手・小久保裕紀。その中で、松中と井口はドラフトの同期だった。

 このドラフト会議ホームページは1996年からスタートしているが、最初に迎えたのドラフト会議で指名されたのがこの3人だった。1996年はアトランタオリンピックにてアマチュアを中心とした選手達で銀メダルを獲得した年、そのメンバーには福留孝介(ホワイトソックス)、今岡誠(千葉ロッテ)、谷佳知(現巨人)、川村丈夫(現横浜DeNAコーチ)、そして松中信彦井口忠仁などがおり大豊作のドラフトと言われていた。特に青山学院大で東都史上初の三冠王、1リーグ8本塁打、通算24本塁打を記録した大型遊撃手・井口忠仁、社会人屈指の長距離砲でオリンピックでも4番を打ち、決勝のキューバ戦で一時は同点に追いつく満塁弾を放った松中信彦にはプロの注目が集まった。

 当時のドラフトは逆指名ドラフト、有力選手は入団したいチームを逆指名することができ、プロ球団側は2位までは逆指名された選手を優先で指名することができた。井口忠仁には川相が引退し遊撃手が空いていた巨人や中日が熾烈な獲得競争をしていたが、オーナーが青学出身の福岡ダイエーを逆指名した。松中にはヤクルトが逆指名を狙い終始マークを続けていたがこちらも地元九州を選択、福岡ダイエーを逆指名した。福岡ダイエーは井口、松中とアマチュア屈指の主軸2人を一気に獲得することになる。

 そしてその後騒動が起こる。井口を獲得できなかった中日は福岡六大学で三冠王に輝くなど首位打者4回、本塁打王3回、打点王4回、リーグ通算21本塁打を記録していた柴原洋選手の獲得に向かった。しかし柴原選手は地元・福岡ダイエー入りを希望しそれ以外ならローソン入りすると表明した。逆指名ドラフトでは逆指名されていなくても1位2位で指名することができた。しかし中日は指名せず、1位で小山伸一郎(現東北楽天)、2位で森野将彦を指名した。当時中日の星野仙一監督はドラフト後に「柴原は金まみれ!」と激しく批判した。

 当時のドラフト制度からすると、有力なアマチュア選手に逆指名権があるのでこういうことは起こりうることだった。当時ダイエーにいた寝業師・根本陸夫(故人)がおり水面下ではいろいろな事が行われていたのかもしれない。しかしドラフト1位から3位までで井口、松中、柴原を一気に獲得した福岡ダイエーのドラフトは大成功だったと言わざるを得ない。それはドラフト当時の評価だけでなく実際の結果からもわかる。

ドラフト 名前 出場試合 安打 本塁打 打点 賞など
1位 井口忠仁 1300 1277 194 748 盗塁王2回、ベストナイン3回、ゴールデングラブ3回
2位 松中信彦 1664 1731 348 1149 首位打者2回、本塁打王2回、打点王3回、ベストナイン5回など
3位 柴原洋 1452 1382 54 463 ベストナイン2回、ゴールデングラブ3回
※井口選手、松中選手の成績は2011年までのNPBでの成績。柴原選手は通算成績。

 ドラフト時の印象は後々の選手のイメージに大きく影響するもので、江川や桑田などは終始付きまとった。柴原選手にも周囲からは厳しい目を向けられていただろう。しかし上記のように成績を残した。引退セレモニーの中でドラフト同期だった井口資仁に対し、「井口がいたから頑張れた」と話し、同じく大学生出身だった井口に相談したり助けられながら共に成長してきたのだろう。

 ***

 96年ドラフト、井口を獲得できなかった中日は森野を指名、松中を獲得できなかったヤクルトは宇和島東高だった岩村明憲(現東北楽天)を指名し、共にチームの主軸を担う活躍を見せた。巨人は西武が狙っていた入来祐作を逆指名させて獲得、高校時注目を集めた日本石油・小野仁と投手2人を獲得した。西武は入来を獲得できず、神戸弘陵の玉野宏昌を指名、指名横浜はオリンピックの主戦・川村丈夫を獲得、2位でも中日が狙っていた森中聖雄を獲得、98年の優勝に繋がっていく。広島も青学大の沢崎俊和、専大の黒田博樹(現ヤンキース)を獲得した。
 青学大からは井口、沢崎、そして千葉ロッテが清水将海捕手を1位指名し3人がドラフト1位指名された。

球団 1位 2位 3位
阪神 今岡誠 関本健太郎 浜中治
福岡ダイエー 井口忠仁 松中信彦 柴原洋
横浜 川村丈夫 森中聖雄 大野貴洋
千葉ロッテ 清水将海 竹清剛治 川俣浩明
ヤクルト 伊藤彰 岩村明憲 山崎貴弘
近鉄 前川克彦 大塚晶文 磯部公一
広島東洋 沢崎俊和 黒田博樹 河野昌人
西武 玉野宏昌 森 慎二 谷中真二
中日 小山伸一郎 森野将彦 幕田賢治
日本ハム 矢野諭 今井圭佑 小笠原道大
読売 入来祐作 小野仁 三沢興一
オリックス 杉本友 谷佳知 塩崎真
この記事を書いた人
yuki

 1996年よりドラフト会議ホームページを解説し、30年間に渡ってドラフト候補選手の分析や12球団のドラフト会議の指名を分析してきました。
 雑誌「野球太郎(http://makyu.yakyutaro.jp/)」にも執筆。
 2008年からはドラフト会議に関する情報を毎日投稿しており、2024年時点で23,000以上の記事書いています。
 また、ドラフト候補の動画とみんなの評価サイト(player.draft-kaigi.jp)では、みなさまがおすすめするドラフト候補選手が、これまでに3万5千人以上登録されておりその評価も行っています。

yukiをフォローする
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする

コメント

  1. あの頃のホークスゎ小久保、城島、井口、松中、柴原選手と野手中心のドラフトで投手陣が手薄で、斉藤投手ぐらいしかいい投手を獲得してなかった記憶があります。小久保と同期の渡辺投手が活躍したのゎ一年目ぐらいだった気がします。いつもいい情報ありがとうございます。