2013年ドラフト総決算~物差し~

井上晴哉, 小林誠司, 九里亜蓮, 三上朋也, 浦野博司, 山川穂高, 梅野隆太郎, 吉田一将, 東明大貴, 石川歩, 秋吉亮, 三木亮, 岩橋慶侍, 岡本健, 柿田裕太, 吉原正平, 加治屋蓮, 関谷亮太, 豊田拓矢, 森唯斗, 平田真吾, 西原圭大

 2013年ドラフト総決算・第11章、大学生は大学野球選手権で、社会人は都市対抗野球で頂点に挑む。その想いの熱さは、甲子園を目指して戦った高校時代と全く変わっていない。優勝したからといってプロ野球に入れるというわけではない。しかし、ただ頂点を目指す。そしてその戦いで自分の力を見極めていく。

プロで戦うための”物差し”

 去年の大会で、三重中京大の則本昂大は20奪三振を記録し、創価大の小川泰弘が道都大を完封した。それから1年、その二人は、プロ野球のユニフォームを来て憧れの舞台で勝ち星を重ねている。「自分だってやれる」、そう心の中で想いながら戦いに臨む。地方リーグの大学の選手にとってはプロのスカウトに見てもらう舞台であり、特に東京六大学リーグと東都リーグのチームには目の色を変えて戦う。

 この大会にはまず福岡大の梅野隆太郎がハナをきる。中部学院大の好投手・東谷優投手に7回まで無失点に抑えられると、チームは8回に2点目を失い0-2と追い込まれた。しかしその裏、4番・梅野隆太郎の同点2ランホームランが飛び出すと、延長となった10回裏のタイブレークでは先頭打者に指名され、ショート前のボテボテのゴロに全力でファーストにスライディングし、相手のミスを誘ってサヨナラ勝利を飾った。長打力と勝利への必死さがプロのスカウトや観客に伝わった。

 勝ち上がった福岡大に、東北の雄・富士大が襲い掛かる。全日本で梅野と4番を争う山川穂高は、2年生左腕・唐仁原志貴からフェンス直撃の2ベースを放つ。試合は梅野隆太郎がリードする福岡大が4回まで3-0と勝利ペースだったが、富士大が5回に4点を奪い逆転、そのまま勝利した。

 他にも地方のドラフト候補投手が結果を見せる。創価大の184cm右腕・石川柊太が完封すると、投げ合った四国学院の高野圭佑も140km/h中盤の速球を投げ好投を見せた。昨年秋の王者・桐蔭横浜大もリーグ戦では昨年秋のような安定感をなかなか見せられなかったが、それでもこの大会で完封し大舞台に強い所を見せる。

 京産大の岩橋慶侍は球速は130km/h台だが大型左腕として注目されていた。しかしこの大会では6回で7奪三振も2失点しチームも敗れた。また同じく注目されていた左腕、京都学園大・白濱尚貴も完投したものの2失点で敗れ、近大でリーグ戦7勝を挙げて勝ちあがってきた小出智彦も5回途中で8三振を奪ったが2失点して降板する。リーグ戦では頭一つ抜き出ていた存在だったエースだったが、全国の競合と対戦して今の自分の力を確認する。目標としているのはプロだったが、白濱尚貴と小出智彦は社会人入りを決め、岩橋慶侍は進路を迷う事になる。

 

中央の大学に勝つ

 大会中盤からシードされた東京六大学と東都の王者が出て力の違いを見せる。亜細亜大は山崎康晃が1安打13奪三振の完封、明治大も山崎福也が1失点完投し、関谷亮太が6回ノーヒットと完璧に抑えながらも降板するなど余裕を見せる。高校時代に有名だった打者がずらりと揃う打線が、地方のエースを次々と攻略していく。

 例年ならばこのままの勢いで勝ちあがっていくのだが今年は違った。昨年秋の王者・桐蔭横浜大は、亜細亜大の九里亜蓮を攻略して明治神宮大会で制覇しを果たした。そしてこの大会の準々決勝で再び九里亜蓮と対戦する。亜細亜大は小野和博から2回3回に1点ずつを奪う。九里亜蓮も昨年のリベンジに燃えて5回まで無失点に抑えるが、6回に粘りの桐蔭横浜大が2点を奪い同点とする。小野、九里が降板しリリーフの対決となったが、延長10回タイブレークも完璧に押さえた山崎康晃が一回り上回り、亜細亜大が昨年秋の借りを返した。

 準決勝では一試合は明治大と上武大が対戦する。上武大はレベルが高い関甲新リーグを制したが、リーグ戦でコールドの大敗をするなど、投手力に不安定さを見せていた。しかしこの大会ではエース・横田哲が抜群の安定感を見せ、評価の高かった大谷昇吾、三木亮、小川裕生の打線が活発で勝ちあがってきた。この試合でも2点を奪われたものの、三木亮が逆転のタイムリーなど2安打2打点の活躍を見せて、明治大を飲み込んだ。

 決勝は亜細亜大vs上武大、亜細亜大は3年生の山崎康晃が先発し3-1とリードして5回まで進む。しかし6回に落とし穴が待っていた。上武大の清水選手に満塁ホームランが飛び出す。その後は三木亮のファインプレーなども飛び出して亜細亜大の反撃を抑え6-5で勝利、大学野球選手権の常連校となっていた上武大が初の栄冠を手にするのだった。

 

都市対抗までの前哨戦

 社会人野球も激しい戦いが繰り広げられていた。昨年、都市対抗、日本選手権で準優勝に終わったJR東日本は、エース吉田一将投手を始めとした投手陣と野手陣が、全国制覇に向けて万全の仕上がりを見せる。JABA大会の四国大会、岡山大会で続けて優勝する。昨年2冠のJX-ENEOSも東北大会で優勝し力を見せる。

 そしてもう1つ、活躍が目覚ましいチームがあった。日本生命が3年目となった柿田裕太とエース・吉原正平を小林誠司が巧みにリードし、さらに井上晴哉が主軸に座り各大会で好調ぶりを見せていた。このほかにも、富士重工の東明大貴も安定して成績を起こしていたがセガサミーの浦野博司やパナソニックの秋吉亮は、好投する時もあれば序盤に失点を重ねて降板するなど好不調が激しく万全とはいえない投球が続いていた。

 そして都市対抗予選が始まる。東京の二次予選は、初戦でいきなりJR東日本と東京ガスが対戦する。先発したのは吉田一将と石川歩、石川は初回に2点を失うもその後は8回まで無失点に抑える、一方、吉田一将は8回まで無失点に抑えたものの9回に2失点し同点に追いつかれた。その後はリリーフした投手同士の好投となり延長12回にJR東日本がサヨナラで勝利した。

 東京大会はその後も激戦が続く。勝利したJR東日本にセガサミーの浦野博司が立ちはだかる。第一代表決定トーナメントでJR東日本を完封すると、第二代表決定戦でも吉田一将と投げ合い、1失点完投で都市対抗への切符を掴んだ。まさかの第三代表決定戦までもつれ込んだJR東日本だがここで都市対抗を決めると、第4代表決定戦では東京ガスが最後の代表枠を掴んだ。

 近畿の二次予選の第一代表決定戦では、日本生命が、井上晴哉の2ランホームランに3ベースヒット、2ベースヒットとあわやサイクルヒットの活躍に、小林誠司も2ベースを放ち、さらに柿田裕太が8回を1安打に抑え、最後は吉原正平がリリーフで締めて12-0で圧倒的な強さで都市対抗出場を決めた。パナソニックも序盤は調子が上がらなかった秋吉亮が、第3代表決定戦ではさすがの投球を見せて出場を決めた。

 九州ではJR九州がケガから復活した加治屋蓮と菊池翔太の150km/hコンビで勝ち上がるが、ホンダ熊本の平田真吾が立ちはだかり第一代表で勝ちあがる。JR九州は第2代表で東京行きを決めた。

 しかし、春に安定感を見せていた富士重工の東明大貴は、北関東の決勝リーグでまさかの2連敗を喫し都市対抗には日立製作所のユニフォームを着て出場する事になった。

 

本戦

 都市対抗本戦では1回戦で波乱が起こる。優勝候補と見られた日本生命は、昨年のこの大会で2試合連続完封を記録した吉原正平投手が先発するも3失点して降板、3-4で敗れてしまう。吉原投手はこの投球で「プロ入りについてこれでは無理でしょう。」と話しチーム残留を示唆する。日本選手権はドラフト会議の後に行われるため、小林誠司、柿田裕太、井上晴哉のプロへのアピールの機会も大きく減っる事になった。またセガサミーの浦野博司も6回8安打2失点で姿を消した。JR九州の加治屋蓮はヤマハと対戦し4回5安打2失点、角度のある投球を見せたものの、まだ全国で戦うには経験が必要と思わせる投球だった。

 その他の注目投手は順当に勝ちあがる。パナソニックの秋吉亮は完封し、日立製作所のユニフォームをきた東明大貴も先発して6回3安打1失点で勝利に貢献した。JR東日本の吉田一将も9回途中2安打11奪三振と丁寧な投球を見せた。そして最も注目されたのが東京ガスの石川歩だった。7回を投げて5安打8奪三振1失点と好投し、ドラフト上位候補に挙げられていた吉田一将や東明大貴、浦野博司の中に石川歩の名前も加わった。

 さらに輝く投手も登場した。ニチダイの西原圭大は九州第一代表のホンダ熊本を6安打完封する。ホンダ熊本も8回から登板した平田真吾が素晴らしい投球を見せた。伯和ビクトリーズもTDKに敗れたものの、3番手で登板した三菱自動車倉敷オーシャンズの森唯斗が2回をパーフェクトに抑えた。TDKのベテラン・豊田拓矢投手は6回までパーフェクトの投球を見せ、さらにかずさマジックの岡本健も4試合全てにリリーフで登板し、5イニング以上のロングリリーフもこなしてチームをベスト4まで導く活躍を見せた。彼らにとってはこの投球がプロ入りへの切符となる。

 

 決勝戦はJX-ENEOSとJR東日本の都市対抗、日本選手権で3大会連続となる決勝カードとなる。JX-ENEOSは万全の体制で三上朋也投手をマウンドに送ると6回まで無失点に抑える好投を見せる。吉田一将投手はスタミナの課題を見せ2回途中で1失点し降板してしまう。打倒JX-ENEOSはまた持ち越されることとなった。JX-ENEOSは51年ぶりとなる都市対抗2連覇という輝かしい歴史を作った。

 

 高校生、大学生、社会人による全国をかけた戦いは終わった。ドラフト会議前のアピールの場となる全国の舞台は終わった。この大会まで試合と自分の力を物差しで測り、プロを志望するかしないかの判断をする。そしてプロ入りの力がないと判断すれば、高校生は大学や社会人のセレクションを受ける。大学生は社会人への内定を獲り、社会人はチームに残留する事を決める。

 しかし、その中で選ばれたわずかな代表選手が、今度は世界を相手した戦いに向かう。それはそのわずかな選手に与えられた、プロ野球入りへの挑戦の延長戦だ。


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