2023年ドラフト10大ニュース

2023年ドラフトニュース

2023年もあと数時間で終わります。今年のドラフトのシーンを振り返り、10大ニュースとしてまとめてみます。(この記事の選手名は、申し訳ありませんが雰囲気的に敬称略とさせていただいております)

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①佐々木麟太郎選手はアメリカ、真鍋選手が指名漏れで大学、佐倉選手が育成でプロ入り、高校BIG3はそれぞれの道へ

2021年秋、夏の甲子園は無観客による開催だった高校野球も、秋には厳しい措置が徐々に解除されたものの、まだ新型コロナの影響が残り、今ではあまり聞かなくなったソーシャルディスタンス、マスク着用、収容人数制限などが設けられた明治神宮大会が2年ぶりに開催され、希望を灯す3人の左の1年生スラッガーが登場した。花巻東の佐々木麟太郎、広陵・真鍋慧、九州国際大付の佐倉侠史朗である。

まず最初にぶっ放したのは佐々木麟太郎だ。第1日目の開幕試合、対戦相手は東京代表の国学院久我山、1年生どころか高校生とは思えない体が打席に立つと、その初回の第1打席で、左腕投手から軽くライトスタンドへと運んだ。

その花巻東と準決勝で対戦した広陵・真鍋慧は、2回に3ランホームランを放ちライバルの前でその力を見せつける。するとそれを見た佐々木が6-9とリードされた8回に3ランホームランでお返し、同点に追いついた。試合は8回裏に広陵が勝ち越した。

準決勝の2試合目は九州国際大付と大阪桐蔭が対戦した。関西の怪物1年生左腕と話題になっていた背番号14・前田悠伍投手との初対戦で、佐倉侠史朗はライトに痛烈な一発を放ち先制する。しかし大阪桐蔭は松尾選手、など2年生の強烈な打撃で7回コールドで九州国際大付を圧倒した。

決勝は大阪桐蔭と広陵、4番を打つ広陵・真鍋は3安打2打点と気を吐いたが、大阪桐蔭は松尾の2本塁打や、超高校級の2年生投手陣がリリーフし、最後は前田が2回を1失点に抑えて勝利、翌年のセンバツも制覇する大阪桐蔭の強さを見せつけた。

大会前から注目されたBIG3は、全員が見事なホームランを放ち、高校野球が新型コロナに打ち勝った姿を見せた。前田投手も含めたBIG4はこれから注目される事になる。

しかし、BIG3の行方は高校野球の難しさを感じさせた。佐々木麟太郎は順調にホームランを重ね、通算140本塁打と、清宮幸太郎の111本を大きく上回る本数となった。しかし、2年春のセンバツではホームランを打てずに初戦敗退すると、夏・3年春の甲子園には手が届かなかった。真鍋は2年春のセンバツで4番を打ち、3年春のセンバツでチームは3番ファーストでベスト4に勝ち上がったがホームランを打つことはできなかった。佐倉も2年春のセンバツと夏の甲子園に出場するもホームランがなかった。

そして2023年夏、BIG3が再び集った。夏の甲子園、3人にホームランは出なかった。そして侍ジャパンU18代表にも3人とも呼ばれなかった。1年秋から2年間、苦しむ時も多く見られ、そしてその評価に差もつけられ、そして将来への想いも変わりつつあった。

ドラフト会議を前に佐々木は、アメリカの大学に進学することを決め、プロ志望届を提出しなかった。真鍋はドラフト3位までならプロ入りという条件でプロ志望届を提出したものの、12球団からの指名は無かった。唯一指名された佐倉は育成ドラフト3位での指名となった。

BIG3と呼ばれた選手たちが、ドラフト会議では主役となることはできなかった。しかし、アメリカの大学に進学をする佐々木、日本の大学野球に進む真鍋、育成でプロに進む佐倉、きっとこの3人が主役になるのは今ではないのだと思った。

②東都リーグ7投手がドラフト1位指名

東都リーグ、戦国東都と呼ばれ続け、どの大学も全国の優れた選手が集まり、厳しい入れ替え戦のある中での戦いは、今年は例年以上にすごかった。1部リーグの中大・西舘勇陽はクイックフォームから150キロ前後の強い速球を低く投げてくる。国学大・武内夏暉は3年秋から一気に球威が増した150キロの直球を投げ、亜大・草加勝は昨年エースの青山の気迫や投球術を受け継ぐような投球を見せる。そして青学大・常広羽也斗は昨秋に一気に成長した圧倒的な投球を長く続けられるようになり、下村海翔は全ての変化球でストライクを取れ、ストレートの威力も常広に近づいていた。

大学野球選手権では青学大が下村の好投と常広の完封で全国を制する。2部では東洋大の細野晴希がその実力を見せつけて1部に名乗りを挙げる。大学侍ジャパン大学代表では春に成績を残せなかった西館が外れ、5投手が代表入りした。日米大学野球では常広、下村が中心となりアメリカでの優勝を果たすと、U18代表との壮行試合では細野が158キロを記録する。

そして秋は、代表漏れした西館がその悔しさを吐き出す投球を見せると、細野も加わった1部リーグは日大も台風の目となり大激戦となる。青学大が抜け出して優勝をしたが、6位まで紙一重の戦いとなった。2部でもスケールはNO.1と評価された専大・西舘昂汰が力強い投球を見せた。

ドラフト会議ではまず武内に3球団が1位指名、常広と中大・西館に2球団が1位指名、下村が単独指名を受けた。2度めの入札では草加が2球団から指名され、専大・西館も指名される。そして最後の細野が指名され、大学の同一リーグから7人のドラフト1位指名選手が誕生した。

③独立リーグから23人が指名、ドラフト2位で2人が指名

ドラフト当日は特別なワクワク感があった。SNSに次々と投稿される四国アイランドリーグプラス、BCリーグ、日本海リーグの選手のプレー、その数はドラフト会議に向かって更に増えていった。そして日本独立リーググランドチャンピオンシップでは、富山GRNサンダーバーズの大谷輝龍と徳島インディゴソックスの椎葉剛が159キロを記録する。球速ではなく、その球の威力や角度は、他のカテゴリーやNPBの選手と比較しても良いものに見えた。

そしてドラフト会議が開幕すると、大谷と椎葉がそれぞれ2位で立て続けに指名されると独立リーグ旋風がスタートし、支配下ドラフトで6人、育成ドラフトで17人の合計23人が指名され、前年の11人から一気に飛躍した。

色々な理由が語られているが、高校、大学、そして社会人からもNPB入りを目指して独立リーグに進む選手も出ており、形は違えど大谷投手も椎葉投手も社会人野球を経験している。NPBの距離が近いということが十分認識され、NPBを経験している指導者の指導もある。また、NPB球団にも独立リーグを担当するスカウトが登場し、独立リーグ側にもNPBとのパイプを繋ぐ役割が設けられた。

高校卒でも大学卒でも1年でNPBのドラフト指名を受けられるという近道となった独立リーグが、今後も次々と素晴らしい選手が指名されるだろう。そのために、今年NPBに指名された23人は全員でNPBに旋風を巻き起こしたい。

④U18代表がW杯優勝で世界一

BIG3に前田悠伍も加えた4人をBIG4と呼ぶ事もあったが、最後はこの選手が東都リーグを中心とした大学勢を相手に一人戦っているように感じた。

1年秋に140キロ中盤の速球のキレが素晴らしく、変化球もうまく使える投手で、勝てる投手が出てきたと感じた。大阪桐蔭の西谷監督もこの1年生をフルに使い、明治神宮大会で優勝を果たしている。そしてこの1年生の2年後の姿を多くの人が想像した。

もしかすると、その想像どおりにはいかなかった2年間かもしれない。3年春はセンバツはベスト4、そして敗退した準決勝の報徳学園戦では2イニングの登板となり、その後、春季大会にはベンチ入りをしなかった。夏の大阪大会では4回戦(東海大大阪仰星戦)の6回2失点と、決勝の履正社戦の2試合のみの登板で、その履正社戦では8回3失点で急成長の左腕のライバル・福田幸之介に敗れた。

前田はセンバツ準決勝の前に左肘の違和感を感じ、その後、左肘の肉離れをしていたことがわかった。大阪大会で投げれられる所にきたものの最後の夏を逃したが、結果としてこれがU18W杯の世界一を達成する投球に繋がったのかもしれない。韓国戦、アメリカ戦と最も重要な試合に先発して決勝に導くと、決勝の台湾戦ではアウエーの中で初回に1点を失ったものの、その後は持ち前の多彩な変化球で打ち取り、U18カテゴリの悲願だった世界一を達成した。

U18代表は主将の広陵・小林隼翔を中心に尾形樹人山田脩也の仙台育英勢が強さを見せた他、高中一樹緒方漣の内野陣が安定し、丸田湊斗橋本航河から始まる打線も馬淵監督の野球を理解して1点を奪っていった。前田悠伍武田陸玖木村優人寺地隆成の4人がドラフト会議で指名されたが、この人数は大きな栄冠に比べると少ないようにも思えた。

侍ジャパンU18代表メンバー(2023)
日本高校野球連盟は、8月31日〜9月10日に、台湾で行われるU18W杯の代表メンバーが発表される。

⑤大学代表がアメリカで日米大学野球優勝

日米大学野球というのは、ホームゲームで優勝を守るかどうかの戦いとなる。基本的にどの大会も非常に接戦となるのだが、結果として地元で行われる大会を地元が制する展開となる。

しかし、今年の代表は違っていた。東都リーグ中心の投手陣のうち、初戦に下村と武内の継投で勝利すると、2戦目は草加、細野、3戦目は常広で星を落とす。しかし、ここで大久保監督が腹を括り、4戦目は下村、武内、草加、細野、常広の東都のドラフト1位リレーを見せると、5戦目も細野、岩井、武内が投げ、4戦目で5イニングを投げた下村につなぐ。そして最後は常広が抑えた。

野手もチームの中心と見られた明大・上田希由翔が一塁ベース上で牽制を頭に受けて離脱するという大ピンチとなったが、その穴を宗山、西川、渡部の3年生が埋めていく。そして廣瀬隆太の長打に辻本倫太郎のつなぐ打撃などで得点を奪い、WBCに続くアメリカでの侍ジャパンの優勝を果たした。

この代表からは東都リーグのドラフト1位指名選手以外にも、明大・上田希由翔と桐蔭横浜大・古謝樹が1位指名され、2位で上武大・進藤勇也、大商大・上田大河、名城大・岩井俊介が、3位で慶応大・広瀬隆太、山梨学院大・宮崎一樹、仙台大・辻本倫太郎、が、4位で明大・村田賢一、6位で青学大・中島大輔が指名され、今年のドラフト会議を席巻したのは言うまでもない。

⑥ドラフト1位指名重複&非公開ドラフト

2022年のドラフト会議では、当日までに9球団がドラフト1位指名を公表し、指名の重複も無いという異常な状態となっていたが、今年は阪神の岡田監督がドラフト会議の2週間前にこれに異を唱えて1位指名を公表しない事を決めた。

その後、広島が常広投手の1位指名を公表すると、ドラフトが近づいてから西武、ソフトバンクが武内投手の1位指名を公表し、中日も度会選手の1位指名を公表したが、事前公表はこの4球団のみだった。

巨人は1位指名は当日になると話していたが、実際に水野スカウト部長は1位指名を決めかねていたと話しており、どちらかというと公表しなかった理由はこれが理由だったと思われる。

来年は何球団が1位指名を公表するかが注目される。

⑦社会人野球、ベテラン投手大活躍

社会人野球は都市対抗本戦はトヨタ自動車が優勝したが、その中心となったのはベテランの嘉陽宗一郎とHonda鈴鹿から補強された森田駿哉だった。

1回戦のHonda戦で嘉陽が9回5安打10奪三振1失点完投、2回戦は森田が6回3安打6奪三振1失点、松本健吾が3回1安打無失点で前年覇者のENEOSを下す。

3回戦は再び嘉陽が9回3安打7奪三振1失点で完投し日本通運に勝利すると、準決勝のJR東日本戦では森田が6回5安打1失点、松本が3回1安打無失点で勝利し、勝利のパターンを繰り返した。そして決勝は嘉陽が7回1失点、渕上が2回1失点に抑えて優勝をした。

嘉陽は亜細亜大1年時から注目されたもののプロには縁がなく、トヨタ自動車で6年目となっている。しかし、今年の投球はプロでも十分通用するもので、指名の可能性も各所で囁かれた。しかし、嘉陽投手自身が社会人野球でのプレーを望んだ。

森田投手は富山商時代の2014年夏の甲子園で日大鶴が丘を8奪三振完封、関西戦では11奪三振で完投しプロも注目した。法政大進学を決めると2年冬に手術を受け、大学ではリーグ1勝に終わり、2018年のドラフト会議ではプロ志望届を提出したものの指名は無かった。

2019年からの社会人でも指名解禁の2020年から3年間で指名は無かったが、今年、いよいよ花開き、ドラフト2位での指名を受けた。26歳のオールドルーキーの投球に、社会人野球の選手の評価がかかっている。

⑧仙台育英・高橋投手などプロ志望をせず、東恩納投手が直前でプロ志望

今年は高校生プロ志望届で色々な動きがあった。花巻東の佐々木麟太郎がアメリカの大学進学を決めると、その前にも専大松戸の150キロ右腕・平野大地も右腕にしびれがあることからプロ入りを取りやめた。

また、昨年夏に夏の甲子園優勝を果たし、150キロ超の速球を投げてU18代表でも投げた高橋煌稀、今夏の甲子園で153キロの投球を見せた湯田統真だけでなく、夏の甲子園で完投を続けた森煌誠もプロからの高い評価を受けながらプロ志望届を提出しなかった。

一方で夏の甲子園終了後には大学進学を明言していた沖縄尚学の東恩納蒼や、その前に大学進学という情報のあった神村学園・黒木陽琉などがプロ志望届を提出して話題にもなった。夏の甲子園やU18代表での投球によってプロへの気持ちも生まれたのか。

しかし結局指名されず、東恩納投手は中央大、黒木投手は亜細亜大に進学となった。プロ側も、多くの選手の情報が集まる中で、進学という情報を得た選手は調査を終了させ、プロ志望をした選手の調査に力を注ぐ事になる。以前は進学を匂わせて獲得を狙うという手法もあったが、最近は球団へのこだわりというものなくなり、そういう事もなくなった(と思う)。

⑨千葉の逸材の大学での指名は無く

2019年のセンバツは習志野の飯塚脩人投手が、星稜の奥川恭伸に投げ勝って準優勝まで駆け上がると、U18代表でも佐々木朗希、奥川恭伸、西純矢と並ぶ実力を見せていた。しかし早稲田大では入学直後に肩の故障に見舞われ、その後は肩痛との戦いとなった。4年春に149キロを記録するまで復活したが、今度は股関節の疲労骨折により野球を引退することを決めた。

その習志野と2019年夏の千葉大会準決勝で対戦した木更津総合には、2年生の篠木健太郎と3年生の149キロ右腕・根本太一がいた。その準決勝は習志野の飯塚が11回を完投し5失点、木更津総合は篠木と根本のリレーで延長11回6失点という激闘で、150キロ近い球を投げる投手たちに千葉県の高校野球ファンは胸を高鳴らせた。

その根本は東洋大に進学も野球部の名簿から名前は消えていた。そして飯塚も一般で就職する事になった。その思いは来年の篠木に託されるが、千葉からは専大松戸の平野大地、幕張総合の早坂響が151キロを記録し、その熱はコロナにも負けず今でも冷めていない。

⑩トレーナーの活躍

近年、ラプソードやトラックマンといった機材を使って選手の能力を分析し、それを元に選手を成長させるトレーナーの活躍が目立ってきている。

SNSではDIMENSIONING.incの北川雄介氏(@yu3su4ke)や高島誠氏(@littlemac0042)など多くのトレーナーの方のアドバイスと、それによって力を発揮できるようになった選手が話題となっており、早坂響投手も北川氏のアドバイスが大きな役割を果たしていると思われる。ただし、その場で記録した球速だけではなく、成長するための考え方を身につけることが重要だが、それが継続してできている選手が、ドラフト候補として注目される選手にもなっていく。その考え方もしっかりとアドバイスされていることが非常に素晴らしい事だと思う。

最新の機器の活用、トレーニングや栄養の情報、Youtubeなど動画の活用、そしてチーム外のトレーナー、様々な環境ができていく中で、日本人選手の力がここの所一気に高まっていると感じる。

選手も色々な情報を集めながらも、自分に合うのはどの方法なのかを考えながら成長していく事が大切になってきそうだ。

最後に

2024年も多くの選手の夢が叶う年になりますように。少しでもそれに協力できるようにドラフト会議ホームページを頑張って参ります。

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