全国高校野球選手権秋田大会は11日、2018年夏の甲子園で「金農旋風」を巻き起こした金足農業が由利に7-0で7回コールド勝ちし、2年連続の夏の聖地へ向けて好発進した。当時のエースだったオリックス・吉田輝星投手の弟、エースの吉田大輝投手（3年）が「6番・投手」で先発。投げては5回2安打無失点、打っては2安打2打点と、投打にわたる活躍でチームを勝利に導いた。
兄から贈られたグラブで快投「気持ちがこもっていた」
「流れが来ていたので、気を入れた。浮いてしまったが、気持ちがこもっていたので三振がとれた」。5回、この日4つ目の三振を奪うと、マウンド上で兄のように雄叫びを上げた。立ち上がりは先頭打者にヒットを許し、続く打者には死球を与えるなど不安定だったが、「野手のおかげで波にも乗れた」と、2回以降は危なげないピッチングを披露。最速142キロをマークしたストレートを軸に、5回を投げ2安打無失点、三塁を踏ませない快投を見せた。
この日、マウンドに上がった吉田投手の左手には、兄・吉田輝星投手から18歳の誕生日にプレゼントされたグラブがはめられていた。開会式前日には、その兄からLINEで「もう一回甲子園行けよ」と激励のメッセージが届いた。「ありがとう。絶対に行くから、また見に来てね」と返信したという。偉大な兄の思いも背負い、エースとしてマウンドに立ち続けた。
打っても2安打2打点！「勢いづく1勝になった」
投球だけでなく、バットでもチームに貢献した。3回2死一、二塁のチャンスでライト前へタイムリーヒットを放つと、4回2死一、三塁の場面でもセンター前へ運び、この日2打点目。チームは6安打で7点を奪いコールド発進。「打力がチームとして結果を残せていなかった中で、初戦でコールド発進できた。ほんとに勢いづく1勝になったのかなと思います」と、チームの勝利に手応えを感じていた。
7年前の夏、兄・輝星投手が決勝で大阪桐蔭に敗れたあの試合を、アルプススタンドから見つめていた。「輝星があんなに打たれてボロボロにされたのを初めて見たので、よく分からない気持ちっていうか、自分の中で心が動いたというか」。その光景が、今の吉田投手の原点にある。
6月には、その因縁の大阪桐蔭と招待試合で対戦。敗れはしたものの、「全国上位レベルと対戦させてもらって、通用するところ、ダメなところが分かって、自信になった」と、貴重な経験を積んで夏に臨んだ。「輝星の時は優勝できなくて、自分たちは1回も校歌を歌えなくて、1回戦で負けてしまったので。今年はラストの年なので死ぬ気でチームみんなでつかみとりたいと思います」。2018年の借りを返す舞台は、甲子園しかない。兄が成し遂げられなかった全国制覇へ、吉田大輝の挑戦が始まった。
吉田大輝投手 プロフィール
- 氏名：吉田 大輝（よしだ たいき）
- 生年月日：2007年4月23日
- 出身地：秋田県潟上市
- 経歴：天王ヴィクトリーズ（小1冬） – 天王中学校（軟式野球部）、ネオ・グリッターズ（硬式） – 金足農業高校（3年）
- 投打：右投右打
- 身長・体重：179cm・86kg
- ポジション：投手
- 主な特徴や実績：オリックス・吉田輝星投手を兄に持つ最速146キロ右腕。2025年夏の秋田大会初戦で先発し、5回無失点、打っても2安打2打点と活躍。金足農業では1年春からベンチ入りし、1年秋からエースナンバー。昨夏、エースとして甲子園出場。血液型A型。
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