全国高校野球選手権茨城大会では4回戦で、水戸啓明の今秋ドラフト候補右腕・中山優人投手(3年)が、第2シードの強敵・水城を相手に、夏の茨城大会では47年ぶり2人目となる完全試合を達成した。スプリットを武器に毎回の14奪三振を奪う圧巻の投球で、チームを7-0の勝利とベスト8進出に導いた。ネット裏には巨人、阪神など11球団13人のスカウトが集結。その快投に、球界を代表する投手になぞらえた賛辞が相次いだ。
9回2死フルカウント「一番自信のある真っすぐで」
中山優人投手9回2死からフルカウントとなった。緊張も疲労もある中で、ボールを出せば完全試合がなくなる場面だったが、「最後は一番自信のある真っすぐで、三振を取ろう」と右腕を振り、当てられたものの打球は二遊間へに飛んだ。二塁手・本城海輝選手(3年)が好捕し、一塁へ送球。アウトのコールとともに、歴史的快挙が達成された。「スコアボードを見た時に、すごいことをしたんだなと。少し意識していました。四球を出す不安もあったが、自分を信じて投げた。一人一人の打者に全力で投げた結果です」と、緊張から解放され、心からの笑顔を見せた。
182cm65kgの体から146キロのストレートを投げ、注目されていた中山投手。今大会はチーム力でここまでわずかなイニングしか投げておらず、体力も状態も十分だった。ここまで勝ち上がってきた水城にも勢いがあり、春はベスト4入りして今大会第2シードの相手だったが、この日、最速の145キロの速球で2ストライクに追い込むと、決め球で得意のスプリットを落として三振の山を築き、14個の三振は全て空振りだった。2巡目からはスライダー、3巡目からは投球フォームのタイミングを変えるなど、クレバーな一面も見せた。
巨人「戸郷に似ている」阪神「西武・今井のよう」スカウト絶賛の嵐
この日は11球団13人のスカウトが視察、そのパーフェクト投球に釘付けになった。各球団のスカウトから賛辞が惜しみなく送られた。
巨人・大場スカウト:「まっすぐにキレがあり、力強さもある。左打者の内角を突くところに気持ちの強さが出ている」
阪神・平塚スカウト:「キレと制球力が素晴らしい。西武・今井のような感じ」
東北楽天・部坂スカウト:「力感なくいいボールが投げられる。巨人・戸郷に投げ方も似ている」
レゴブロックが育んだ指先の感覚、元中日・春田監督の下で才能開花
高校入学時は175cm59kgだったが、182cm65kgと大きくなり、ストレートの強さが出た。また、切れ味鋭い変化球を操る原点は、幼少期にある。「保育園から小学校と、レゴブロックでずっと遊んでいたんです」と父・俊高さんと話す。その遊びで研ぎ澄まされた指先の感覚が、この日の112球に生かされた。
「優しい人に育ってほしい」という両親の願いを込めて名付けられた「優人」。その名の通り、普段は物静かな青年が、マウンドでは闘志あふれる姿を見せる。春田監督も「みんな気づいていました。あっぱれです」とエースの偉業を称えた。準々決勝の相手は強豪・藤代。「強い相手。水城さんの分まで勝ちきりたい」。水戸短大付時代の1996年以来、29年ぶりの聖地へ、最高の仲間と勝ち進む。
中山優人投手 プロフィール
- 氏名:中山 優人(なかやま ゆうと)
- 所属:水戸啓明高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 主な特徴や実績:最速146キロを誇るプロ注目右腕。2025年夏の茨城大会4回戦で、大会史上47年ぶり2人目となる完全試合を達成(14奪三振)。巨人、阪神、楽天など11球団のスカウトから高い評価を受ける。元中日・春田剛監督の指導を受ける。



コメント