U18侍ジャパンはどう戦ったか?

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2019年のU18ワールドカップ、侍ジャパンは5位に終わり、最終日の順位決定戦に出場する事が出来なかった。どう戦ったのか個人的に振り返ってみます。

投手の成績


選手名 高校 身長体重 四死 自責 防御率

佐々木朗希 大船渡 190cm86kg 右右 0 0 1 0 2 1 0 0.00
浅田将汰 有明 181cm85kg 右右 1 1 6 6 11 2 3 4.50
池田陽佑 智弁和歌山 183cm84kg 右右 0 0 7 7 12 2 2 2.08
前佑囲斗 津田学園 182cm88kg 右右 1 0 9 5 13 2 1 1.00
飯塚脩人 習志野 181cm78kg 右左 0 0 3 3 8 1 2 0.00
西純矢 創志学園 184cm85kg 右右 2 0 13.1 11 17 3 2 1.35
宮城大弥 興南 172cm78kg 左左 0 1 8.2 10 9 2 1 1.04
奥川恭伸 星稜 183cm84kg 右右 1 0 7 2 18 0 1 1.29
林優樹 近江 174cm64kg 左左 0 1 3 1 4 4 1 3.00

登板と投球

日付 勝敗 内容 先発・先発予想(球数)太字:責任投手
30日 〇4-2 グループリーグ 対スペイン 池田(62)、(29)飯塚(10) ※池田投手中1日
31日 〇19-0 グループリーグ 対南アフリカ 浅田(54)(16) ※浅田投手は中1日
1日 〇16-7 グループリーグ 対アメリカ (45)、西(44)(32)、飯塚(44)、宮城(14)
2日 ●1-3 グループリーグ 対台湾 宮城(90)西(2)
3日 〇5-1 グループリーグ 対パナマ 西(96)
4日   空き  
5日 〇5-1 スーパーR 対カナダ 奥川(103)飯塚(28)※奥川投手は中1日
6日 ●4-5 スーパーR 対韓国 佐々木(19)、西(64)、飯塚(13)、宮城(55)、
(6)池田(12) ※西、宮城は中1日
7日 ●1-4 スーパーR 対オーストラリア 浅田(51)(98)、池田(47)

エラー&エラー気味の失点

日本は8試合で9つのエラーをし、他にもヒットになったものの外野手が目測を誤ったり、内野守備陣の連携ミスに加え、ファースト、セカンド、ショート、サードが体に近い強い打球を捕球できずヒットにする事もあった。

・スペイン戦 横山選手がライト後方の飛球を目測誤り2失点
・アメリカ戦 武岡選手、韮澤選手の悪送球が絡み6回に3失点し追い上げ受ける
・台湾戦   熊田選手の2つのエラーが絡み2失点して逆転される
・パナマ戦  武岡選手の悪送球と、韮澤選手・坂下選手の連携ミスで先制点許す
・韓国戦   石川選手の悪送球で同点に追いつかれ2失点
       投手のエラーでタイブレークで1失点、なおもノーアウト2,3塁でサヨナラへ
・オーストラリア戦 石川選手の悪送球で追加点を許す

投手陣の評価

評価アップ

投手は全体的に非常によく投げた。野手が得点がなかなか奪えず、またエラーやエラー気味の失点が続く中で、特に三振を奪うケースが目立った。三振を取らないとアウトにならないという厳しい状況で戦っていた。

佐々木投手、奥川投手の2枚看板が目玉だったが、奥川投手は期待に応えるピッチングを見せ、評価は天に届くほど、代表でこれだけの投球をした投手はこれまでおらず、できれば決勝でアメリカとの試合で投球を見たかった。

そして何より頑張っていたのが西投手と宮城投手、リリーフに先発に、そして打者としても起用された。西投手はストレートの力、制球が素晴らしく、縦に沈む球の有効だった。宮城投手はスライダーのストライクの判定が厳しく、味方のまずい守備での失点の増えてしまったが、伸びのある149キロのストレートは素晴らしかった。共に今回の侍ジャパンの左右のエースだった。

また、リリーフの飯塚投手の存在が大きかった。ストレートの制球が良く、またそのストレートを外国人の強打者でも空振りをした。鋭いスライダーは捕手が慣れていない事もあり、控え気味だったが、ストレートで世界のトップクラスと勝負できる力を持っている。

その他の投手の評価

佐々木投手は故障が長引いてしまい残念だった。今大会に関しては評価する状態にはなかった。

投手もアメリカの打者には通用しなかったものの、オーストラリア戦では力を発揮した。浅田投手はオーストラリア戦での先発では前日にかなり肩を作っていた事もあり、また強風の影響もうけ、さらに内野手のまずい守備も重なって失点をした。南アフリカ戦は実力に差があり、評価は難しいがまずまずの投球だった。

池田投手は動く球の持ち味を生かす投球が期待されたが、こちらもスペイン戦で外野手の不運なヒットで失点し、韓国戦では絶対的ピンチの場面での登板、オーストラリアン戦でも厳しい雰囲気での登板となり難しかった。ただ、甲子園で見せた150キロ級の球は見られず、西投手などと比較するとやや落ちる。

そしてU18代表の試合は、これまでの大会でもリリーフ左腕投手の活躍がポイントとなっており、2016年の堀瑞輝投手、2017年の田浦文丸投手が思い出される。今年はその役割が高校生では打てないと言われるチェンジアップを投げる林優樹投手に託されたが、アメリカ戦で先発というサプライズ登板をされ、それによって自信を失ったのか、ベンチで声を出す役割をしていた。そして韓国戦ではタイブレークで自らのエラーをしてしまい、非常に厳しい大会となってしまった。実力を出させられなかったのが非常に残念。

打者の成績


選手名 高校 身長体重
打率

山瀬慎之助 星稜 177cm85kg 右右 6 0 0 0 0   .000
水上桂 明石商 172cm72kg 右右 15 3 1 2 0   .200


森敬斗 桐蔭学園 175cm75kg 右左 25 8 0 1 2   .320
武岡龍世 八戸学院光星 178cm77kg 右左 24 3 0 6 1 2 .125
石川昂弥 東邦 185cm87kg 右右 24 8 1 9 1 2 .333
韮澤雄也 花咲徳栄 177cm80kg 右左 29 10 0 4 0 1 .345
遠藤成 東海大相模 178cm82kg 右左 16 3 0 3 0   .188
坂下翔馬 智弁学園 164cm67kg 右左 24 3 0 4 0   .125
熊田任洋 東邦 174cm74kg 右左 22 7 0 8 0 2 .318


鵜沼魁斗 東海大相模2年 175cm74kg右右 2 0 0 0 0   .000
横山陽樹 作新学院2年 178cm76kg 右右 12 2 1 4 0   .167

西純矢 創志学園   12 6 2 9 0   .500
宮城大弥 興南   8 3 0 0 0   .375
奥川恭伸 星稜   1 1 0 0 0   1.00

打順の変遷

  スペイン 南ア アメリカ 台湾 パナマ カナダ 韓国 オーストラリア
1  2-0  3-2  6-3  2-0  3-1  1-1  4-1  4-0
2 坂下3-0 武岡4-1 武岡5-1 武岡1-0 武岡3-0 武岡3-0 武岡4-1 武岡1-0
3 韮澤4-2 韮澤4-2 韮澤4-1 韮澤2-0 韮澤2-1 韮澤4-1 韮澤5-2 韮澤4-1
4 石川4-2 石川3-0 石川3-2 石川2-2 石川2-1 石川3-0 石川3-1 石川4-0
5 遠藤3-1 遠藤3-2 遠藤2-0 遠藤2-0 遠藤2-0 熊田3-0 西 3-1 西 3-1
6 熊田2-0 熊田4-3 熊田4-2 熊田2-0 熊田3-1 宮城2-0 宮城4-1 熊田3-0
7 武岡3-0 西 4-3 水上4-0 坂下2-0 横山2-0 西 2-1 遠藤2-0 横山4-1
8 山瀬2-0 坂下4-0 横山2-1 横山2-0 水上2-1 坂下4-0 水上4-1 水上2-0
9 横山2-0 水上1-1 坂下4-2 山瀬1-0 坂下2-1 山瀬1-0 坂下3-0 坂下2-0

打線の評価

全体的に打てなかった。相手のエラーや四球による得点と、ホームランは5本出てたため、その得点は多かったが、ヒットで出塁しバントで送るものの、そこから得点が入らない場面が目立った。

評価アップ

最も評価したいのは石川選手。序盤に4番として素晴らしい打撃を見せた。変化球をしっかりと見極め、甘い球を左右に長打、逆方向へ伸びる球はもちろん、レフトへのホームランも素晴らしい当たりだった。ただし、守備で終盤に悪送球を連発し、それが打撃にも影響するようなところが見られたのは課題となる。

次に評価したいのは選手。1番バッターで痛烈な打球での3ベースヒットが目立った。思い切りの良い打撃は素晴らしく、走塁も見事。慣れないセンターにもしっかりと対応していた。打撃に波があるのは変わらずだが、素晴らしい選手だった。

3番目に評価するのは韮澤選手。コンスタントにヒットを打った。基本的には相手投手を見てから3打席目あたりでヒットを打つ、じっくりといく選手だが、投手が交代してすぐにヒットを打つ場面もあった。外野の頭を越えるような打球は見られなかったが、内野の頭を越す綺麗なヒットを見せた。守備はファーストで、本来のポジションでなく評価はできないが、あれっと思う守備がたまに出るのは以前と変わらず。

その他の選手の評価

捕手の二人は、大きなバッテリーエラーもなく、しっかりと守っていた。短期間のうちに初めて受ける投手の球を受けるには大変だったし、打撃は仕方ない所もあるが、もう少し打てるようになってほしい。

熊田選手は打撃の対応力を見せ、アメリカ戦を中心に良い打撃を見せていた。ただし守備では動きが弱く、肩も強いはずだが送球の精度は高くなかった。武岡選手は打撃で思い切りの良さを見せていたが、2番で良さが出せなかったか。また守備では動きのバリエーションが少なく、送球へつながるモーションができていない。走塁の判断も良くないところがあったと思う。

横山選手は早い球もしっかりとスイングして捉え、外野の深くに飛ばす力を見せていた。かなり能力が高い。飛球を連発する姿はスラッガータイプだと思うがまだ線が細く、来年にかけて体を強くして今のスイングができれば、サク越えを量産できるようになりそうだ。

遠藤選手と坂下選手は残念ながら今大会では期待できなかった。遠藤選手も思い切りは良いものの、ボールとかなり開いたところを振っている所もあり、インコースを強く打てる選手だが、インコースの速球についていけなかった。坂下選手は奈良大会5本塁打の打撃もあったため空振りも多かった。役割は、何とか出塁して足を生かすような活躍をしたかったが、今後、自らのスタイルを模索する必要がある。

チーム作り

内野手

チーム作りの難しさを改めて感じさせた。今回のチームは投手を中心とした守りのチームのはずで、野手はショートを6人集めて編成したものの、その考え方は間違っていた。

特に難しいのはファーストとセカンド。特にファーストは内野手全員の送球の乱れをカバーするポジションで、それによって内野手が自信を持ち、内野全体の守備を押し上げる。

またセカンドは、カバーリングやどのベースに向かうのかなど、いろいろな動きをしなければいけない難しいポジションで、代表のように短期間で連携をしなければいけない時に、普段守っていない選手を起用するのは難しいと思う。

そしてショート、高校野球ならばショートは能力の高さでカバーできるところがあるかもしれないが、今大会では他国のチームを見ているとショートの守備力は非常に高く、正面のゴロに正しく正面に入って、左→右のステップから送球へ繋げる、基本に忠実なプレーだった。

日本ではかつて、ゴロは正面に入って捕るということを言いすぎて、最近では鋭く前に出てシングルハンドで捕球し、素早く送球という動きがカッコいいとされる。しかし、プロ野球でショートを守っている選手がカッコいいと思うのは、強い打球も正面で柔らかく処理するプレーだという。プロ野球の内野の守備練習を見ていると、正面の緩いゴロを両手でしっかりと捕球してからスローイングに繋げるところを徹底的に繰り返しやっている。

日本の代表は、投手力は毎年高いレベルのあるのだから、とにかく打ち取ったゴロはしっかりとアウトにしてほしい。代表では能力の高い選手よりも、基本のプレーができ、体に近いゴロをしっかりとアウトにするショートを選んだほうが良いのではないかと思う。

外野手

外野手は今回は本職は2人のみ、しかも横山選手も鵜沼選手もフル出場ではなく、森選手と西選手、宮城選手などが入り、まずまず守ったし、強肩で素晴らしいプレーも見せていた。しかし、これはたまたまかもしれない。相手バッターの特徴が分からないとはいえ、打つ前の打球判断、打球に対しての入り方や追い方は難しいし、長い距離をグラブを抱えながら走っていくというのも、慣れていないとなかなか難しい。

投手中心の守りのチームにするのであれば、外野手も本職でフルで出場できる選手は必要だったのではないか。今年の3年生でそういう外野手は一人もいなかったのか。

首脳陣

高校野球の監督は、選手と長い時間を凄し、選手の能力を引き出して成長させる面で非常に素晴らしい所がある。そのために、選手とはかなりウェットな関係となり、その中で選手の力を把握して戦いをする。しかし代表戦は、短期間に知らない選手や首脳陣同士がチームを作って戦う。そうなると短期間で選手を掌握し、モチベーションを上げる、そしてベンチでどっしりと構えて選手に安心感を与えながらも、柔軟に対応できる監督、コーチ陣が必要になる。

そうなると首脳陣は高校野球監督経験者にこだわる必要があるのだろうか。特に投手の運用は、高校野球にこだわるなら、監督よりもむしろチームで投手コーチとして携わっている人の方が良いのではないか。できれば投手の運用については、プロ野球や大学など広い視点から人選をしてほしいと思う。

また、作戦・分析についても、分析は今回は高知高校の前監督だった島田達二氏が担当していたが、そこにも高校野球の指導者にこだわる必要があるのか。作戦面についても、初めて対戦する外国人選手の動きや心境を読むのに、国内で戦う高校野球の指導者にこだわる必要があるのか。U18だけでなく他のカテゴリーで侍ジャパンを経験している人に優秀な人はいないのだろうか。

もちろん首脳陣同士が一つにならないとよいチームは難しく、高校野球監督同士の方が繋がりもあり良いのかもしれないが。U18代表は高野連が全てを行っており、あまりに閉鎖的ではないか。これは侍ジャパンの他のカテゴリーも同様に、各世代の野球組織が担当をしており、本当に一体となっていないのが大きな原因だと思う。

チーム作りのポイントまとめ

・首脳陣には他カテゴリーの人も加える。特に分析、作戦、投手運用については専門の人を入れる。

・内野はファースト、セカンドはその世代の一番守備のうまい選手を入れる。

・ショートは肩の強さなど能力ではなく、基本のプレーを見せられる選手を入れる

それでも20人で、投手制限もありながら短期間に9試合を戦わなくてはいけない。しかも、以前は一次ラウンドで対戦する相手は力の差があったが、今はそれほど差が無く、楽に勝つ試合は少なくなった。投手の数は9人では足りなくなる可能性も高いし、野手も2つのポジション以上を守る必要はあるだろう。

WBSCに働きかけて、ベンチ入りの人数を20人から22人に増やすように働きかける事も必要かもしれない。その方が代表を経験する選手の増えるし、戦い方だって、よりダイナミックになるのではないかと思う。

この記事を書いた人
yuki

 1996年よりドラフト会議ホームページを解説し、30年間に渡ってドラフト候補選手の分析や12球団のドラフト会議の指名を分析してきました。
 雑誌「野球太郎(http://makyu.yakyutaro.jp/)」にも執筆。
 2008年からはドラフト会議に関する情報を毎日投稿しており、2024年時点で23,000以上の記事書いています。
 また、ドラフト候補の動画とみんなの評価サイト(player.draft-kaigi.jp)では、みなさまがおすすめするドラフト候補選手が、これまでに3万5千人以上登録されておりその評価も行っています。

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