都市対抗野球本戦出場を目指す各地の2次予選では熱い戦いが繰り広げられているが、社会人野球でもベテラン投手がその力を見せている。
力はプロ級
社会人野球では、NPBのドラフト会議で指名される選手は多くは20代前半、2年目から4年目で指名されるため、5年以上プレーをしていると、年齢は20代でもベテランというイメージがついてしまう。
やはりドラフト会議で指名されそうな選手が注目されるが、ベテラン選手も指名されなかったというだけで実力はプロ級と認められる選手は多く、何かのきっかけさえあれば、プロで見てみたいという選手も少なくない。
この日、都市対抗野球九州地区二次予選では、Honda熊本が8年連続となる都市対抗本戦出場を決めた。この代表決定戦で先発をしたのは、社会人6年目の柳沢一輝投手で、最速149キロのストレートで5回2安打5奪三振無失点の好投で勝利に貢献した。4回まですべて3人で片付けると、5回に1アウト1,2塁のピンチとなるも、149キロのストレートで空振り三振を奪い、二塁ゴロで無失点に抑えた。
柳沢選手は広陵高で強肩捕手としてプレーするも、リリーフ投手として登板し150キロを記録、早稲田大では大きな活躍はできなかったが、152キロを記録すると、Honda鈴鹿に進んで2年間プレーした。そして、Honda熊本に移籍する。「徹底したウエートトレと、フォームの見直しと改造で球速を上げた」と体作りの努力と、リリーフで結果を出し続けて4年目となった今年、都市対抗出場の試合で先発を任された。「相手打線が直球に合っていなかったので力で押した」とパワーピッチャーの本領を発揮して、力で相手を抑えきった。
ベテラン投手
南関東2次予選では、6月1日の準決勝で日本通運の7年目左腕・相馬和磨投手が、日本製鉄かずさマジックを9回1安打7奪三振で完封し、代表決定戦出場を決めた。
また、同じ日の東京地区2次予選でも、JR東日本の西居建陽投手が、左のサイドハンドから149キロの威力あるストレートを投げると、同じく7年目の西田光汰投手も3回無失点で、NTT東日本を完封リレーで破り、14年連続の本戦出場を決めた。
学生野球は高校は3年、大学は4年間で入れ替わるが、社会人野球はプレーが認められれば、10年戦士もいる。懐の深さと奥深さがある。それでもやはり、ドラフト指名の可能性が低くなる3年目、4年目で野球を辞める決断をする選手は多い。企業も人数に限りがある、やめざるを得ないということもある。社会人までやってやりきったという思いを持つ選手もいるし、不完全燃焼という思いを持つ選手もいるだろう。
プロ野球でも遅咲きの選手というのはいるが、社会人野球でも5年以上経ってから開花する選手もいる。プレーを続ける事を勝ち取った選手に与えられる時間的な報奨を有効に使って輝く選手たちのプレーも、しっかりと見てゆきたい。
そして、できれば社会人野球側もプロ野球との関係の考え方を少し柔らかくし、育成ドラフトでの指名を受け入れたり、またはレンタル的(人事交流的)な新しい制度を導入したりして、プロの場でプレーできるような環境を整えても良いと思う。プロ野球が野球のすべてというわけではないが、プロに挑戦できずに辞めるのではなく、プロに挑戦して辞めたとなれば、やりきったと思って辞められる選手は多くなるのではないかと思う。

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