第77回春季高校野球関東大会準々決勝が21日、ノーブルホーム水戸で行われ、今春センバツ優勝の横浜高(神奈川)が浦和学院(埼玉)との接戦を3-2で制し、準決勝に駒を進めた。この試合では怪物2年生の織田翔希投手が今大会初登板初先発で、最速150キロの速球と変化球を巧みに織り交ぜ、強打の浦和学院打線を7回まで無失点に抑えた。
エースが先発
今大会、主将で全国屈指のスラッガー・阿部葉太選手と、エースで4番の奥村頼人選手が故障等によりスタメンから外れる中で、この日の準々決勝は埼玉大会から強打が注目されていた浦和学院との対戦に、2年生エース、最速152キロ右腕の織田翔希投手をぶつけてきた。織田投手は初回、この日最速の150キロの速球を記録するとスタンドがざわめく。ただしストレート一辺倒ではなく、チェンジアップ、カーブなどで巧みにカウントを整え、最後のストレートでつまらせた。
それでもさすがの浦和学院打線だった。これだけの球威と緩急をつけられても、7回まで2安打無失点だったものの、織田投手が奪った三振は1つのみだった。そして8回に織田投手を攻略し始める。1-0で迎えた8回2死二塁、代打の川原晴斗選手が初球のストレートを振り抜いて適時三塁打で同点に追いつかれた。さらに強打の玉木敬章選手の打席でカウント1-1とした場面で、村田監督は織田投手をライトに回し、最速146キロ左腕の片山大輔投手(3年)を投入した。片山投手は「カウント途中から登板する練習をしている」と語るように、このピンチをスライダーで空振り三振に仕留め、見事に脱出した。
8回裏に相手のミスから2点を奪った横浜高校は、3-1とリードして迎えた9回、再び織田投手が再びマウンドに戻るが、こちらも強打の垣内凌選手がライトの芝生席に痛烈な本塁打を放つと、プロ注目の藤井健翔選手にも中越え二塁打を浴びた。ここで村田監督は再び動いた。次の打者をカウント0-2とした場面で、織田投手を降板させ、チェンジアップが得意な山脇悠陽投手(3年)へスイッチ。山脇投手は1球で見逃し三振に仕留めると、さらに次の打者のカウント1-1で、今度は遊撃のポジションからマウンドに駆け上がった最速152キロ右腕の池田聖摩投手(2年)にバトンを託した。池田投手は140キロ台中盤の速球とフォークで右飛に抑え、浦和学院の反撃を封じた。
カウント途中での投手交代を続けたことについて村田監督は、「浦和学院さんの打線はすごい。あの対応力はさすがだった。やっぱり嫌なことをやっていかないとダメかなという試合だった」と采配の意図を説明した。そして、3年のエース・奥村投手が投げられない中で、「2番手以降の選手たちが凄くいい準備をしてくれているので全員野球が少しずつ形になってきている」と語り、チームの成長に手応えを感じていた。
多才な経験積む織田翔希、故郷で躍動した片山大輔
先発の織田翔希投手は、16歳ながらこの日、マウンドで関東屈指の強豪を相手に抑えただけでなく、5回に四球で出塁すると高校初の二盗を成功させ、そして高校で初めて右翼の守備に就く場面もあった。再登板後にはソロ本塁打を浴びるなどしたが、「外野からの切り替えが難しいものだと、あらためて感じた。頼人さんがどれだけすごいかを、あらためて実感した」と話し、チームの4番を打ち、外野手としてプレーしながらマウンドにも登る3年生エースの凄さを実感した。村田監督は「どのチームも織田をめがけて練習してくる。体の成長があってこそ、さらに織田は怪物になる」と大きな期待を寄せた。
また、8回にピンチを断ち切った片山大輔投手は、茨城県日立市出身で、故郷での凱旋登板となった。センバツでも大事な場面でショートリリーフで抑えて成功させた左腕だが、「左打者に自分のスライダーは打たれないという自信がある」と語る必殺スライダーで空振り三振を奪った。村田監督も「打者を上回る投球が彼の魅力。初見からすると嫌ですよね」と絶賛した。片山投手は「夏、またあの舞台に戻って、先発できるような投手になりたい」と、先発への思いも口にした。
横浜は24日の準決勝で、千葉の強豪・専大松戸と対戦する。日本一3連覇を目指す夏に向けて、一戦ごとに進化を続ける横浜の「全員野球」は、さらに磨きがかかっていた。






コメント