全国高校野球選手権大会は19日、準々決勝が行われ、今春センバツ王者の横浜(神奈川)が県岐阜商業(岐阜)に延長11回タイブレークの末、7-8でサヨナラ負けを喫した。1998年の松坂大輔を擁して以来となる春夏連覇の夢は、ベスト8で終わった。試合後、エースで4番の奥村頼人投手(3年)は「プロ一本」を、主将の阿部葉太外野手(3年)は大学進学をそれぞれ表明し、次のステージへと旅立つ。
エース奥村頼人投手、涙の敗戦も「プロ一本で」
延長11回、サヨナラの打球がレフト前に落ちると、マウンド上の奥村頼人投手は天を仰いだ。先発として奮闘してきた2年生エース・織田翔希投手がこの日は早い回に降板すると、奥村投手が5回途中から3番手としてリリーフし、6回から9回までを無失点に抑えて味方の同点劇につなげた。
9回はヒットと味方のエラーで1アウト2,3塁のピンチとなったが、「内野5人シフト」でスクイズを阻止すると、タイブレークの延長10回には3点をリードしたものの、岐阜商打線の強打で3点を奪いかいされたが、サヨナラの失点はしなかった。しかし11回、味方の攻撃が無得点に終わると、最後はストレート勝負を選択し力尽きた。6回1/3で76球を投げて7安打6奪三振4失点も自責点は1だった。
最後にストレートを続けた事について、「3年間の思いを込めた一球だったので悔いはありません」と話した。しかし、春夏連覇の強豪に対して甲子園は「アウェーのような感じだった。その中で力を出せないと。全員が一体となっているのが、実力以上に怖かった部分かなと思います」と話し、県岐阜商や甲子園の気迫に押されたことを認めた。
準決勝では2打席連続本塁打を放つなど、投打でチームを牽引してきた大黒柱。「自分一人じゃこんな経験は出来ない。ここまで来ることができたのもみんなのおかげ。感謝しかありません」と涙を流したが、その視線はすでに次を見据えている。「この大会でさらにレベルアップしてプロの道に行くと決めていたことなので、これからはプロ一本でそれを目指して頑張りたい」。二刀流の可能性についても「可能性がある限りは両方やりたい」と意欲を見せた。
主将・阿部選手が号泣「自分たちに力がなかった」大学で再起誓う
ゲームセットの瞬間、阿部葉太選手はセンターの守備位置で膝から崩れ落ち、号泣した。2年生から名門の主将を任され、常に冷静なプレーでチームを引っ張ってきた。「春夏連覇を目指していた中で、できなかった悔しさがこみ上げてきた。3年生全員で頂点に立ちたかったですけど、それができなくて、本当に悔しかったです」。
この日も延長10回に2点タイムリーを放つなど2安打2打点、守備でも7回にダイビングキャッチを見せるなど攻守でチームを鼓舞し続けた。しかし、あと一歩及ばなかった。「自分たちに力がなかった。その一言です」。甲子園の土は持ち帰らず、「思い出をつくりに来たわけではなく、春夏連覇目指してここまでやってきた。甲子園に“ありがとうございました”と感謝を伝えました」と語った。
今後の進路については、「進学してさらに上を目指していきたいと思います」と大学進学を明言。「この悔しさを忘れずにこれからもやっていきたい」と、4年後のプロ入りを目指す。
間違いなくこの2年間は阿部選手の作り出したものだった。一時期はやや低迷していた横浜高校が、再び「強いチーム」と呼べる存在になった。そして、織田投手や池田聖摩選手、小野舜友選手、1年の川上慧選手や小林鉄三郎投手へとバトンは受け継がれた。
阿部選手は横浜高校に何の心配もせず、今度は大学で日本一の連覇を目指す。現時点でもプロ志望をすればドラフト2位までに指名されたと思うが、4年後、 バリバリのドラフト1位候補として帰ってきて欲しい。奥村投手は思い切りの良い打撃も、左腕としてもまだ素材の投手であり、持っている内面の輝きもありそうな選手で、プロで輝きを見せて欲しい。
奥村頼人投手 プロフィール
- 氏名:奥村 頼人(おくむら らいと)
- 生年月日:2007年9月8日
- 出身地:滋賀県彦根市
- 経歴:高宮スポーツ少年団(小1) – 滋賀野洲ボーイズ(彦根中) – 横浜高校(3年)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:179cm・84kg
- ポジション:投手、外野手
- 主な特徴や実績:最速146キロを誇るプロ注目のエース左腕。2025年夏の甲子園準々決勝で敗退後、プロ志望を表明。今春のセンバツ優勝投手。神奈川大会準決勝では2打席連続本塁打を放つなど打撃も非凡。
阿部葉太選手 プロフィール
- 氏名:阿部 葉太(あべ ようた)
- 生年月日:2007年8月6日
- 出身地:愛知県田原市
- 経歴:田原東部スポーツ少年団(小2) – 愛知豊橋ボーイズ(中1~) – 横浜高校(3年)
- 投打:右投左打
- 身長・体重:179cm・85kg
- ポジション:中堅手
- 主な特徴や実績:プロ注目の強打者。横浜高校で主将を務める。2025年夏の甲子園準々決勝で敗退後、大学進学を表明。神奈川大会準々決勝では逆転サヨナラ打を放つなど、勝負強い打撃でチームを牽引。












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