明治神宮野球大会の準決勝が11月18日に行われ、初の決勝進出を目指した八戸学院大学(北東北大学野球連盟)は、青山学院大学に2-8で敗れた。しかし、6点を追う5回から2番手としてマウンドに上がった阿部流音投手(3年・本荘)が、大学日本一の強力打線を相手に5回無失点、7奪三振の快投を披露。敗戦の中にも強烈な光を放ち、来年のドラフトに向けて大きな自信をつかんだ。
「諦めたら終わり」大学王者相手に圧巻の奪三振ショー
6点ビハインドという苦しい場面での登板だったが、阿部流音投手の心は燃えていた。「1イニングずつゼロで抑えたら、絶対逆転してくれると思っていました」。味方の援護を信じ、神宮のマウンドに立った。
登板直後の5回、いきなり3者連続空振り三振を奪う最高のスタートを切る。「(普段の会場は)整備されたグラウンドでやることがあまりないので、いいマウンドで投げられてよかったです」と水を得た魚のように躍動。最速150キロの伸びのある直球に、スライダー、フォークを織り交ぜ、青学大打線を翻弄した。
DeNAドラ1・小田から奪った「自信の三振」
ハイライトは8回2死の場面だ。打席には横浜DeNAからドラフト1位指名を受けた強打者・小田康一郎選手(4年・中京)。阿部投手は臆することなく勝負を挑み、最後はフォークボールで空振り三振に仕留めた。思わずマウンドでガッツポーズが飛び出す会心の投球だった。
結局、9回までの5イニングを被安打2、無失点に抑え、奪った三振は7つ。「青学大打線をゼロで抑えられたのは将来につながってくると思います」。大舞台での好投は、確かな自信へと変わった。
雪かきで鍛えた足腰、無名からの成り上がり
秋田・本荘高校時代は、3年夏の大会で背番号「8」をつけた控え投手で、3回戦敗退の無名選手だった。「一番最初に声をかけてくださったのが八戸学院大学さん。見つけてくれてありがとうという意味も込めて、ここで頑張って4年後絶対にプロに行こうと思いました」と当時を振り返る。
進学した八戸の冬は厳しい。「雪かきをしないと寮から室内練習場までたどり着けない」という過酷な環境下で、地道にトレーニングを重ねてきた。入学時は細身だった体も、今では177センチ、74キロながら最速150キロをマークするまでに成長。新沼舘貴志監督も「キレのあるボールはストレートでも変化球でもしっかりと低めに投げられる。ようやくここまで来た」と目を細める。
「来春、戻ってきます」夢のプロ入りへ決意
チームは敗れたが、阿部投手の視線はすでに次を見据えている。「コントロールが武器だと思うので、球速にはそんなにこだわらない。アベレージ140中盤投げられる技巧派の投手になれれば」。自らのスタイルを確立し、さらなるレベルアップを誓った。
「春、秋と結果を出して、来年のドラフトに臨めれば」。厳しい北国の冬を越え、来春、ひと回り大きくなった姿で再び神宮のマウンドに帰ってくる。
阿部流音 プロフィール
- 氏名: 阿部 流音(あべ・りゅうと)
- 所属: 八戸学院大学(3年)
- 出身: 本荘高等学校(秋田)
- ポジション: 投手
- 投打: 右投右打
- 身長・体重: 177cm、74kg
- 主な特徴や実績: 最速150キロの直球とキレのある変化球を操る本格派右腕。高校時代は無名だったが、大学で才能が開花。神宮大会では青学大を相手に5回7奪三振無失点の好投を見せた。雪国で鍛え上げられた精神力も武器。






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