2013年ドラフト総決算~目標~

大瀬良大地, 吉田一将, 石川歩, 森友哉, 松井裕樹, 杉浦稔大, 柿田裕太

 2013年ドラフト総決算・第13章、2013年のドラフト会議が始まる。名前を呼ばれて安堵の顔を見せる選手、名前が呼ばれずに悔しい気持ちを抑え、期待していた周りの人に申し訳ないなと思う選手などがいる。「運命の一日」という言葉は希望球団にいけるかどうかというドラフト1位指名で「抽選」の場面がクローズアップされるが、これまで憧れで目標にしてきたプロ野球に入れるか入れないか、それを決める「運命の一日」という事の方がより大きいのだとおもう。

いざ会場へ

 ドラフト会議当日は独特の緊張感に包まれる。松井裕樹、大瀬良大地、森友哉、吉田一将、ドラフトの指名の可能性が高い選手のいる学校や寮、会社などに報道陣が詰め掛け、指名の瞬間を捕らえようと指名を今か今かと待っている。また、グランドプリンスホテル新高輪の国際館パミールにも、ドラフト指名会場には1000人のファンや報道陣が詰め掛け、会場の近くの部屋に12球団の部屋が用意される。その部屋で最後の指名の確認が行われ、いざドラフト会場へと向かう。

 東北楽天は星野監督の激を受けて松井裕樹投手の指名を決めて腹をくくる。星野監督と立花社長のやり取りが行われ、立花社長がクジを引く事を決める。福岡ソフトバンクも昨年のドラフト会議で大谷翔平投手を回避し、北海道日本ハムが単独指名して説得の末に獲得した事に孫オーナーを始め球団関係者は悔しさを感じていた。そして今年は松井裕樹投手を指名することを決める。ただしくじ引きについては、王貞治氏が役目を譲りたいとしたものの、秋山監督やフロントが頑なに断り、王さんが承諾する。昨年、東浜巨投手を獲得した王さんだが、なんとなく嫌な予感がしていたのかもしれない。

 その中で、千葉ロッテは伊東監督が右投手のマネをして報道陣にヒントを出す。直前まで指名を決めていた松井裕樹投手から、石川歩投手に指名を変更していた。巨人は最後まで決めていなかったものの、即戦力投手として最も成長した石川歩投手をNO1と評価した。隠密ドラフトの埼玉西武はこれまで多くのスカウトが何度も視察を繰り返した森友哉捕手の1位指名を決めた。

 最後まで悩んでいたのは阪神だった。ニッカンスポーツの報道で、埼玉西武が森友哉の1位指名をする可能性があると情報を得て、森友哉の指名を推す動きもあった。しかし、先発投手を指名すると言う方針は既に決めており、大勢は大瀬良大地投手の指名に決していた。

 12球団はそれぞれの戦略を抱え、監督、球団社長、スカウトなどがドラフト会議会場へと向かう。

 

1位指名

 1位指名が始まり、大瀬良大地、吉田一将、松井裕樹と名前が呼ばれていく。やはりこの3人かと思われたが、その後は松井裕樹の名前が続き、千葉ロッテ・石川歩、埼玉西武・森友哉、読売・石川歩の指名で会場から大きな声が挙がった。そして12球団がの1位指名発表が終わった後すぐに、吉田が1球団しか指名していないことに気付く。今年のドラフトの目玉の一角をオリックスが単独で交渉権を獲得し、オリックスのテーブルでは、監督やスカウト部長が、またスカウトが控える部屋では担当スカウトに握手が求められた。ここ数年悔しい思いが続いていたオリックスのドラフト1位だったが、今年は会心の指名となった。他球団のスカウトはこの結果に、何でこうなったのかなと思うものの、まずは抽選に注目をする。

 

 松井裕樹投手には5球団が指名した。栗山監督から順番に指名が進む。「お開けください」の後にガッツポーズをしたのは、残りクジの東北楽天・立花球団社長だった。松井裕樹投手はこの瞬間を驚く様子も見せずに少し笑顔を浮かべたが落ち着いてみていた。これからは東北で投げる事になる。この日、記者会見後にも報道陣は松井投手への質問や様子を撮ろうと校門の前で待っていたが、松井投手は会見が終わると裏門から下校し、夜は千葉県市川市の自宅で家族で食事をした。

 

 続いて、大瀬良大地投手の指名となる。東京ヤクルト・小川監督と阪神・和田監督といった顔を見れば分かる二人の間に挟まれ、小柄な田村スカウトが立っていた。テレビをみた一般の人は、名前をすぐに言える人は少なかっただろう。両監督に大きな声援がかかる中、田村スカウトは小さなかっつポーズをした後に、両隣の監督に頭を下げていた。インタビューではホッとした表情を浮かべていた。

 大瀬良大地投手は田村スカウトが引くだろうと思っていた。長崎日大の3年生の時から大瀬良投手の元に訪れていた田村スカウトを、大瀬良投手も見ていた。あまり長い間会話をするのは、プロアマのルールあって避けていたが、短い挨拶などを通して、お互いに信頼し合っていた。

 

 石川歩投手の抽選には伊東監督と原監督が臨み、伊東監督が交渉権確定のクジを引き当てる。インタビューではほかの抽選者同様に緊張していた事を明かす。野球の試合でスクイズのサインを出して黙っている時の緊張感よりも、それ以上の緊張感なのだろう。

 

抽選は続く

 ドラフト1位の指名の抽選は、果てしなく続いた。こうなる事は予想もされていた。巨人が小林誠司、中日が鈴木翔太を指名し一抜けする。柿田裕太には3球団、杉浦稔大には2球団が指名重複し、横浜DeNAが柿田裕太を、東京ヤクルトが杉浦稔大を獲得して抜ける。福岡ソフトバンクは地元九州の加治屋蓮を指名して抜けたが、阪神と北海道日本ハムが岩貞祐太を指名し、この日6度目の抽選となる。栗山監督は一番最初にくじを引くのだが3度目も手にする事ができなかった。責任感を感じやすい栗山監督は1年間負い続けてきたスカウトの事を思い、申し訳無いという顔でテーブルに座っていた。阪神の和田監督が抽選の度に会場から大きな声援を送られていた。昨年は藤浪晋太郎を獲得したが、今年はなかなか掴み取れなかった。最後に岩貞祐太を獲得し、何とか会場からの声援にこたえた形になった。

 

抽選は淡々と進む

 ドラフト2位以降は淡々と進んで行った。北海道日本ハムは2位指名順1番目の権利を活かして、浦野博司投手を指名、一位の渡辺諒選手と合わせて、栗山監督の顔も段々を緩み始めた。その後は各球団の課題を補強する指名が続く。遊撃手を狙っていた東京ヤクルトは、有力な投手がいる中で法大の西浦直亨を指名する。投手に課題のあるオリックス、横浜DeNA、福岡ソフトバンクは即戦力投手を指名していく。中日は独立リーグ出身の最高指名順位となる2位で香川オリーブガイナーズの又吉克樹投手を指名する。新しい時代の幕開けを感じさせる指名となった。阪神は捕手よりも優先し横田慎太郎選手を指名すると、東北楽天は内田靖人、巨人は和田恋と将来性を見越した指名をした。

 一番不安を感じていたのは梅野隆太郎かもしれない。全日本の4番を打ち、捕手ということもあってドラフト1位指名という予想がされていた。そのため、報道陣も集まっていた。しかし、ドラフト1位での指名は無く、ドラフト2位でも捕手の指名がよそうされていた球団からの指名はなかった。3位になると、桂依央利や嶺井博希など大学生のライバルと見ていた捕手が次々と指名されていく。梅野選手の不安は想像できない。しかしドラフト4位で阪神が指名した。

 また慶大の白村明弘投手も指名は難しいかもと思っていたが、報道陣も集まり始め、その中で指名を待っていた。しかし1位指名が終わると合宿所へと戻り、3位指名まで終わった段階で合宿所で一緒にみていた江藤監督が食事に向かうと、自分の部屋に戻ってベットに寝転んだ。今後の事を考えていたが、他の選手の指名も気になるため再びテレビの前に戻ると、ドラフト6位で北海道日本ハムが指名をした。

 

 2013年ドラフト会議は高校生24人、大学生21人、社会人31人の合計76人が指名されて終了した。青学大の斎藤英輔投手や、18Uメンバーにもなった延岡学園の岩重章仁選手、センバツで活躍を見せた敦賀気比の喜多亮太選手も指名を待ったものの名前を呼ばれる事はなかった。

 

目標に向かって

 ドラフト会議という運命の一日は終わった。しかし、その前にも後にも長い道のりがある。

 2007年から2013年までの6年間という月日は、高校生でバッテリーを組み、決勝で悔しい思いをしたバッテリーを立派な野球選手に成長させ、小学生でエース番号を女子選手に奪われ背番号10を背負った野球少年を、プロ野球で背番号1を背負う投手へと成長させる。共にクリーンナップを打ったチームメイトは、対戦相手となり、再びチームメイトとなり、そしてプロでは再び対戦相手となる。

 いろいろな出会いがと別れがあった。

 それでも、これまでもこれからもライバルであり親友としてつながっていく。

 いろいろな分かれ道があった。

 それでもプロ野球という大きな目標を遠くに見ながら、それに向かって進んでいった。

 そして、これからも。

 プロ入りした選手は、今度は新たに目標を設定し、日本一レベルの高い場所で野球をしていく。

 ドラフト会議という分かれ道でプロ入りしなかった選手は、再びプロ野球という目標を見つめなおし、分かれ道を自分の判断で進んでいく。

 

終わりに

 指名された76人全員が入団して2013年ドラフト会議が終わりました。この76人はドラフト候補としては卒業となり、名前に挙がる事はありません。今度はプロ野球選手として、何度も名前を耳にする選手になってくれるでしょう。そして指名されなかった選手は、これからもドラフト候補としてできるだけ紹介して行きたいと思います。

 ドラフト会議は、来年、差来年と続いてゆき、多くの選手が候補となり、その中からわずかの選手がプロ野球選手となって卒業して行きます。これからどんな選手が現れ、どんな選手が再び注目されていくのか、楽しみに追いかけ続けたいと思います。

 

 ドラフト会議ホームページ、並びにドラフト候補のみんなの評価と動画のページで、本当に多くの皆様にご覧いただき、そして多くの選手の情報をお寄せいただきまして、本当にありがとうございました。

 来年はドラフト会議ホームページが始まってから19回目のドラフト会議を迎えます。また、来年もどうぞよろしくお願いいたします。そして、またいろいろな企画にご期待ください!

 ありがとうございました!!


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