2020年の広島カープのドラフト戦略を分析します。
広島のドラフト指名の特徴と傾向
〇タイプ:育成型
〇監督:投手出身、方針はまだ不明
〇決定者:松田オーナー、苑田スカウト部長などフロント中心も
〇補強ポイント:主軸打者(左・右)、先発投手、内野手・外野手
広島の指名の特徴
広島カープは以前より育成型のチームとして知られ、特に野手は高校生を育ててチームの戦力にする。基本的には単独1位指名が理想とオーナーも話すが、近年は大瀬良大地投手、有原航平投手、田中正義投手、中村奨成選手、小園海斗選手、森下暢仁と目玉クラスの指名に参戦することが多い。ただし、小園選手は結果的に4球団の重複となったものの根尾選手、藤原選手を避けての指名、また森下投手も佐々木投手、奥川投手を避けて単独指名の可能性の高い選手を指名している。
育成のカープと言われるが、ドラフト会議で高校生ばかりを指名していくという事は無く、将来性と即戦力をバランスよく指名する。確かに鈴木選手、丸選手といった高校生を育てたが、基本的には金本選手、新井選手、菊池選手など即戦力の選手をハードな練習でさらに鍛えていくという印象がある。ソフトバンクやオリックスのように育成の選手を多く指名をする事もない。
また、ドラフト1位指名も投手に偏ることもなく内野手、外野手なども1位指名をする他、1年毎の指名選手でもポジション別にまんべんなく指名をしている。松田オーナーもチームの世代別構成表などを手に指名する選手を見ており、全体的にバランスを考えた指名となっている。
スタメンで活躍している選手も、野手は鈴木誠也選手や會澤捕手、安部選手の高校卒選手と菊地、田中、松山、野間など大学卒の選手も半々となっている。ただし投手については大瀬良、野村、九里、床田と大学卒の割合が多く、高校生投手の育成力がやや課題と言える。それでもアドゥワ誠投手はリリーフとして活躍を見せてきている。
チームはFA移籍やメジャー移籍で選手が流出するチームで、これまでも金本選手、黒田投手、大竹投手、前田投手、丸選手などが抜けていった。さらに今オフは菊池選手もメジャー挑戦を表明し、主砲・鈴木誠也選手もメジャーへの思いを伝えている。菊池選手はポスティングでの入札が無く、チーム残留が決定したが、毎年、気が抜けない状況が続く。
補強はドラフトと外国人が中心だが、それほど資金を使わないため、ドラフトで補強ポイントを補う事になる。そのため、主力が抜けた補強ポイントは素早く指名する事が多く、昨年も丸選手が抜け、さらに鈴木選手のメジャー移籍がありそうな外野手に、ドラフト2位で宇草孔基選手を指名した。抜けそうな穴を長期的な視野で見ているとは思うが、主力の抜けるペースが早いため、補強的な即戦力の指名をしないと追いつかないという事情もありそうだ。
若い選手がそろって主力が抜けない時期は、一昨年まで3連覇をしたように強さを見せるが、主力が相次いで抜ける時期に入ってくると、昨年のようにやはりBクラスに沈んでしまう。ドラフト会議での指名する選手の精度は高く、成功する選手が多いと感じる。しかし、指名→育成→活躍を早いサイクルで行わなければならない。
フロント・監督のビジョン
昨年に緒方監督が退任し、佐々岡監督が就任した。まだどのようなチームを目指すのかははっきりとしていないが、投手出身の監督として、投手陣の強化は視野に入っていると思う。
あとで戦力分析はするが、一昨年に15勝を挙げて優勝に貢献したエース大瀬良投手が11勝、九里投手が8勝、床田投手が7勝、野村投手が6勝と先発陣が勝ち星を挙げたが、大瀬良投手は貯金が3つ、床田、九里、野村投手は貯金が1つしかできなかった。また、2017年に15勝を挙げた薮田投手や、2018年に8勝を挙げた岡田投手も結果を残せなかった。
若く脂ののった世代の投手が多く、実績も残している投手を復活させ、まずは投手力でチームを支え、若い野手が育っていくのを待つ事になる。
フロントは松田オーナー、苑田統括スカウト部長の体制は変わらず、尾形、田村、鞘師スカウトなども経験を積んでいる。
チーム状況
2019年の戦力と将来予想(投手)
2019年 | 5年後予想 | |
---|---|---|
先発 | 大瀬良大地(28)11勝8敗 床田寛樹 (25)7勝6敗 九里亜蓮 (28)8勝7敗 野村祐輔 (30)6勝5敗 アドゥワ誠(21)3勝5敗 山口 翔 (20)1勝3敗 | 森下暢仁 (27) 床田寛樹 (30) 岡田明丈 (31) 九里亜蓮 (33) アドゥワ誠(26) 山口 翔 (25) 遠藤淳志 (25) |
中継ぎ | 菊池保則(30)58試合16HP 一岡竜司(28)33試合16HP 中村恭平(31)43試合12HP 今村 猛(28)27試合 7HP | 一岡竜司(33) 島内颯太郎(28) 平岡敬人(29) 中崎翔太(33) |
抑え | 中崎翔太(27)36試合9S | 矢崎拓也(30) |
2軍 (3年目まで) | ケムナ誠 (24)80.2回 遠藤淳志 (20)58.2回 矢崎拓也 (25)35.1回 平岡敬人 (24)34.2回 島内颯太郎(23)21.0回 | ー |
エース・大瀬良投手は一昨年からは成績を落としたものの、リーフを代表するエース投手でチームの軸であることは間違いない。ただし黒田、前田に続いてメジャーに挑戦したいという気持ちはありそうで、FA権を取得する2021年に向けて、次世代のエースの確立は考える必要があった。
しかし昨年のドラフトで森下暢仁投手を獲得出来た事で、次期エースの心配はほぼなくなったといってもいい。他にも、床田、九里投手が成績を残し、やや足踏みをしている薮田、岡田投手も力がある。そして山口、遠藤と若い投手も力を見せ、リリーフで活躍しているアドゥワ投手も先発タイプと言える。先発投手陣は持っている力を発揮できれば、かなりの戦力があるといえる。
リリーフ陣も、3連覇中は抑えの中崎選手や今村投手などが力を見せていたが、昨年は中崎投手がやや疲れを見せて結果を残せなかった。一岡投手、中村投手、菊池投手などが踏ん張りを見せたものの、リリーフ陣の出来は成績に直結する所があり、矢崎投手、平岡投手など戦力はいるが、レベルアップ、戦力の充実が必要だ。
2019年の戦力と将来予想(野手)
守備 | 2019年 | 5年後予想 |
---|---|---|
捕手 | 會澤翼(32)117試合、打率.273 | 坂倉将吾(26) 中村奨成(25) |
一塁手 | バティスタ 103試合、打率.269、26本 | 林 晃汰(24) |
二塁手 | 菊池涼介(30)129試合、打率.267 | 菊池涼介(35) |
三塁手 | 安部友裕(30)109試合、打率.258、8本 | 羽月隆太郎(24) |
遊撃手 | 田中広輔(30) 97試合、打率.193 | 小園海斗(24) |
外野手 | 鈴木誠也(25)131試合、打率.334、26本 西川龍馬(25)129試合、打率.302、16本 野間峻祥(27)118試合、打率.248 | 西川龍馬(30) 宇草孔基(27) 高橋大樹(30) 正随優弥(28) |
2軍・捕手 | 坂倉将吾(21) 32試合、打率.327 中村奨成(20) 39試合、打率.279 | 【予想打順】 1小園 2宇草 3林 4坂倉 5西川 6菊池 7正随 8羽月 |
2軍・内野手 | 小園海斗 (19) 53試合、打率.210 林 晃汰 (19)102試合、打率.225、7本 羽月隆太郎(19) 89試合、打率.300 中神拓都 (19) 87試合、打率.219 桑原 樹 (23) 80試合、打率.224 | |
2軍・外野手 | 正随優弥(23)105試合、打率.208、6本 大盛 穂(23)109試合、打率.248 永井敦士(20) 85試合、打率.250 高橋大樹(25) 43試合、打率.283、3本 |
捕手は侍ジャパン代表の會澤選手が打撃でも頼りとなり、チームを支えている。ややベテランになりつつあるが、若い坂倉選手、中村選手の切磋琢磨も続いており、さらに石原貴規選手、持丸泰輝選手の2枚を加えた。坂倉選手、中村選手は打撃もある選手で、他のポジションで起用する事も考えられ、捕手の補強の手はまだ緩めない。
内野手は要の菊池選手が残留をし、一息ついた形になった。ただしショートの田中選手が昨年は大きく成績を落としたの気がかりで、安部選手も良くやっているが、若い小園選手や林晃汰選手の台頭が待たれる。その中で2018年ドラフト7位の羽月隆太郎選手が、高卒1年目ながらファームで打率.300を記録しており、期待される。さらに韮澤雄也選手を指名した。左打ちの選手は若い層が充実し始めたが、今後は右の選手、さらに22歳前後の選手を指名してくることが予想される。
外野手は丸選手の穴は大きかった。松山選手もベテランで頑張っており、西川選手が大きく成長をしたが、鈴木選手の移籍も視野に入れると、選手層は心もとない。昨年ドラフト2位で宇草孔基選手を獲得したが、即戦力、そして次の世代の若手と補強が必要となりそうだ。宇草選手が左で足が使える選手なので、ポスト鈴木、右のスラッガータイプの選手の指名はありそうだ。
2020年のドラフト指名候補は?
2020年の補強ポイント
投手 | 捕手 | 内野手 | 外野手 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | ||
チーム・監督の方針から | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2020年戦力から | △ | ◎ | △ | ◎ | ○ | ○ | ◎ |
将来のチームから | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
2019年指名選手から | △ | ○ | △ | ◎ | ○ | ◎ | △ |
佐々岡監督という事で投手中心のチーム作りになると思うが、右投げ投手は充実をしている。ただし、リリーフ陣の補強は必要と考え、即戦力の球の速い投手の指名がありそう。また左は若い選手を取っているが、能力は高いもののなかなか出てこない感じがある。指名するなら床田投手のような即戦力を指名しそうだ。
野手は流動的でやることが多い。特に外野手は鈴木、松山の後釜を考え、2,3枚は指名をしたいところ、長打の打てる即戦力を指名したい。また内野手は小園、林、羽月、韮澤などと競争していく、大学、社会人の22歳前後の選手を指名しそうだ。捕手もさらに1名程度は指名がありそう。
1位、2位指名予想
1位 | 2位 | |
パターン1 | 来田涼斗 明石商 | 早川隆久 早稲田大 |
パターン2 | 佐藤輝明 近畿大 | 佐藤宏樹 慶応大 木澤尚文 慶応大 |
パターン3 | 井上朋也 花咲徳栄 西川僚祐 東海大相模 | 森井絃斗 セガサミー |
パターン1は外野手の指名の中から、一番人気になりそうな佐藤輝明選手を避け、左打ちだが来田選手を指名したもの。2位では苑田氏が強い東京六大学の左のエース・早川投手を指名する。
パターン2は強豪覚悟で左ではあるが佐藤輝明選手を指名、サードまたは外野手で補強ポイントに合致、ポスト鈴木誠也の期待の応えられそう。2位では慶応大の左腕・佐藤選手、またはリリーフで矢崎投手と球威を争えそうな木澤投手を指名する。
パターン3はポイントの右の外野手で4番候補の指名、共に体も強い選手、ポスト鈴木、松山として期待できる。2位では即戦力内野手、大学生のリリーフ投手などもいる中で、高校時代も見ていた森井投手を指名する。
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