広島カープは2025年5月30日、マツダスタジアム内の球団事務所にて、今秋のドラフト会議に向けた今年2回目となるスカウト会議を開催した。会議では、現時点でのドラフト候補選手を135名に絞り込み、そのうち上位候補と目される約15名の選手の映像をチェック、複数球団が注目する創価大学の立石正広内野手や、高校生離れした速球を投じる健大高崎の石垣元気投手らがリストアップされた。
135名リストアップの概要
今回のスカウト会議は、6月から大学野球選手権や夏の高校野球地方大会などが行なわれる前に、各地区のスカウトから推薦された選手たちの情報を集約し、現時点でのドラフト候補の情報を把握する機会となる。この日、リストアップされたのは135名で、田村恵スカウト部長は、「順列とかは付けずに、全体的なレベルを確認したという感じです。当然、まだ故障とかしていて見ていない選手がいる。あくまで現時点で上位候補になるであろう選手をビデオで確認しました」とコメントし、現時点での評価は固定的なものではなく、今後の成長や状況変化を見極めていく方針を示唆した。
その内訳について田村スカウト部長は、「投手が8割、野手が2割ぐらい」と話し、投手が非常に多くリストアップされていることを明らかにした。今年は、野手の目玉選手がいるものの、高校・大学で全体としては数があまり多くなく、特に遊撃手や捕手といったポジションでドラフト指名候補として評価される選手が少ない。また、広島は昨年にドラフト1位で佐々木泰選手を指名しており、また、佐藤柳之介投手、岡本駿投手といった即戦力の左右腕を2位3位で氏名していることから、今年は将来エースになるような高校生投手の指名が有力と見られる。
上位候補15名を映像で徹底チェック
そして今回のスカウト会議では、リストアップされた135名の中から、特に上位候補と目される約15名の選手の映像をスカウト全員で確認した。その中で名前が挙げられたのは立石正広内野手と石垣元気投手だった。
創価大学・立石正広内野手(高川学園)
右のスラッガーとして高い評価を受ける立石選手は、先日行われた阪神のスカウト会議でも名前が挙がるなど、複数球団が熱視線を送る今年のドラフトの目玉の内野手。特に長打力が魅力で、カープにとっても将来のクリーンアップ候補として注目される。ただし、右の強打者で内野手としては、昨年のドラフト1位で佐々木泰選手選手を指名していることから、タイプやポジションが重なる所もある。それでも立石選手は抜群の強肩と、ショートやセカンドも守れるため、強力クリンナップを形成していくのであれば、ドラフト1位指名が有力となる。そして立石選手は山口県防府市出身で、中国地方ということで地元の選手とも言える。
健大高崎高校・石垣元気投手
最速158キロを誇る本格派右腕の石垣投手は、高校生ナンバーワン投手との呼び声も高い。昨年は即戦力投手が上位指名となったことから、今年は将来のエース候補の指名ということになれば、最有力に挙がってくるだろう。ただし、その圧倒的な球威に加え、変化球の精度や制球力、マウンドの経験値といった投手として総合的な能力が高く、高校生投手というよりは即戦力投手として分類されそうなタイプで、例えば2022年にドラフト1位で指名した斉藤優汰投手のように、上背があったり、将来的な成長度ということでは、すでに完成に近い投手とも言える。
この二人以外にも約13名を上位候補として映像で確認したとしており、まだ名前は出していないが、今後の大会で評価を急上昇させる選手が出てくる可能性が十分にある。その13人はおそらく中西聖輝投手(青学大)、島田舜也投手(東洋大)、伊藤樹投手(早稲田大)、齊藤汰直投手(亜細亜大)、高木快大投手(中京大)といった右腕投手や、毛利海大投手(明治大)、山城京平投手(亜細亜大)といった左腕など大学生投手が多く含まれていると見られるが、田村スカウト部長は、「今日のところで言うと、即戦力でいこうとか、高校生でいこうとか、そこまで話を突き詰めることはなかった」と述べており、現時点では選手のタイプを限定せず、幅広く情報を収集している段階で、今後はチームの獲得の方針が固まってくれば、その選手の評価が高くなっていくことになりそうだ。
広島カープのドラフト戦略と育成の伝統は?
広島カープは、以前は各地に散らばる高校生を獲得し、激しい練習を伴った育成力で若い選手を育て、それによって、他球団が1位指名で競合しそうな選手を避け、選手獲得のコストとリスクを下げてきた伝統がある。しかし近年は他球団と同じく、森下暢仁投手や隅田知一郎投手(抽選で外す)、常広羽也斗投手や宗山塁選手(抽選で外す)といった、その年のドラフトの目玉選手の指名や獲得も多く、他球団と同様に即戦力・高校生、投手と野手のバランスを重視した指名となっている。
しかしその中でも2020年にドラフト5位で指名した矢野雅哉選手や、2021年にドラフト6位で指名した末包昇大選手のように、ドラフト下位で指名した選手が主力として活躍をしており、そこはスカウトの目利きと獲得を決めた首脳の判断力の賜物と言える。一方で、高校生で指名した選手の主力はとなっているのが2018年のドラフト1位・小園海斗選手と2019年のドラフト5位・玉村昇悟投手、2020年の育成ドラフト1位・二俣翔一選手となっており、他にも田村俊介選手や内田湘大選手、仲田侑仁選手や菊地ハルン投手などが育って出てくるようになると、選手層の厚さで常に優勝を争えるチームになってくる。
8月の次回スカウト会議に向けて
次回のスカウト会議は8月に予定されており、2023年は8月21日、2024年は8月25日と、夏の全国高校野球選手権大会の終了後に行なわれる。その時には高校生、大学生、社会人といった各カテゴリの選手の評価がある程度固まっていると思うが、今年は社会人野球の都市対抗野球本戦が8月28日から9月8日と例年より1ヶ月以上遅く、それに合わせてスカウト会議も都市対抗本戦以降となる可能性もある。
広島は昨年に岡本駿投手をドラフト3位で指名し、ルーキーとして春から1軍で投げるなど即戦力として活躍しているが、昨年は腰痛のために秋に投げられるようになった選手で、その圧倒的な投球に注目して3位指名となった。田村スカウト部長の「まだ故障とかしていて見ていない選手がいる」というのも、岡本投手のような選手がいることを示唆しており、例えば明治大の久野悠斗投手だったり、日体大の関戸康介投手や北海学園大の高谷舟投手、またはトミー・ジョン手術から復活を目指す健大高崎の佐藤龍月投手や肘の故障から復活を目指す東海大相模の福田拓翔投手などに注目している可能性もある。






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