2019年のドラフト指名を振り返る。同じポジションで指名順位に差の出た選手を見てみます。まずは高校生遊撃手編。
注目された高校生遊撃手
今年はU18代表でも6人の遊撃手がセンバツされるなど、高校生遊撃手が注目された。今回のドラフト会議で指名された高校生内野手の中で、遊撃手としての可能性を期待されて指名されたと考える選手は次の通り。
NO.1:森敬斗(桐蔭学園) 50m5.8秒、遠投120m
昨年秋の関東大会で3本塁打。センバツ初戦に3番ショートで出場し4打数3安打1打点。U18では1番バッターとして25打数8安打、打率.320、2盗塁。高校通算9本塁打。
NO.2:紅林弘太郎(駿河総合) 50m6.2秒、遠投100m
186cm82kgの体があり高校通算40本塁打。3年夏は静岡大会決勝まで勝ち上がり、4回戦から決勝までの4試合で14打数2安打1打点。スカウトはグラブさばきや肩の強さなど守備面でも高く評価をしている。
NO.3:上野響平(京都国際) 50m6.1秒、遠投110m
3年春に京都大会優勝、夏に京都大会準優勝で24打数11安打10打点1本塁打。不動の1番バッターで50m6.1秒の足と遠投と守備に定評。高校通算11本塁打は全て3年春から記録したもの。
NO.4:韮澤雄也(花咲徳栄) 50m6.5秒、遠投110m
1年夏の甲子園ベンチ入り、2年夏の甲子園で正遊撃手、2試合で5打数2安打2打点に4つのし四球、横浜の及川投手などと対戦、3年夏の甲子園は1試合3打数1安打1四球。U18では一塁で出場し不動の3番として29打数10安打4打点、打率.345、高校通算16本塁打。
NO.5:遠藤成 (東海大相模) 50m6.3秒、遠投115m
3年夏の甲子園に出場し2試合で8打数2安打、U18では外野を守り、5番などを任され16打数3安打3打点。高校通算45本塁打。
NO.6:川野涼多(九州学院) 50m5.9秒、遠投105m
甲子園出場は無し。3年夏は熊本大会決勝まで勝ち進み、6試合23打数8安打1打点1本塁打。50m5.9秒の足があり1番ショートで出場を続けた。高校通算21本塁打。
NO.7:田部隼人(開星) 50m6.6秒、遠投100m
185cmで高校通算20本塁打。3年夏の島根大会は1番ショートで出場して決勝進出、5試合22打数7安打4打点1本塁打の成績を残す。公式戦打率は.494を誇り、体の強さを生かした守備が光る。
NO.8:長岡秀樹(八千代松陰) 50m6.1秒、遠投100m
高校通算19本塁打、3年夏は千葉大会決勝に進出し、7試合で28打数7安打8打点1本塁打を記録した。守備に抜群の安定感で送球は決して狂わない。
NO.9:武岡龍世(八戸学院光星) 50m5.9秒、遠投110m
高校通算23本塁打、2年夏の甲子園で遊撃手として出場し2試合7打数2安打2打点、3年春のセンバツは1試合4打数1安打、3年夏はベスト8まで進出し、4試合で21打数6安打3打点1本塁打の結果を残す。足と肩が強く鋭く奪取して捕球してスローイングを見せる。
指名されたチームと順位
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位以下 | |
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ヤク ルト |
◎奥川恭伸 投 星稜高 |
吉田大喜 投 日本体育大 |
杉山晃基 投 創価大 |
大西広樹 投 大阪商業大 |
長岡秀樹 内 八千代松陰 |
武岡龍世 内 八戸学院光星 |
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オリッ クス |
×石川昂弥 ×河野竜生 宮城大弥 投 興南高 |
紅林弘太郎 内 駿河総合 |
村西良太 投 近畿大 |
前佑囲斗 投 津田学園 |
勝俣翔貴 内 国際武道大 |
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中日 | ◎石川昂弥 内 東邦高 |
橋本侑樹 投 大阪商業大 |
岡野祐一郎 投 東芝 |
郡司裕也 捕 慶応大 |
岡林勇希 投 菰野 |
竹内龍臣 投 札幌創成 |
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日本 ハム |
×佐々木朗希 ◎河野竜生 投 NTT西日本 |
立野和明 投 東海理化 |
上野響平 内 京都国際 |
鈴木健矢 投 JX-ENEOS |
望月大希 投 創価大 |
梅林優貴 捕 広島文化学園大 |
片岡奨人 外 東日本国際大 |
広島 東洋 |
森下暢仁 投 明治大 |
宇草孔基 外 法政大 |
鈴木寛人 投 霞ヶ浦高 |
韮澤雄也 内 花咲徳栄 |
石原貴規 捕 天理大 |
玉村昇悟 投 丹生 |
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千葉 ロッテ |
◎佐々木朗希 投 大船渡高 |
佐藤都志也 捕 東洋大 |
高部瑛斗 外 国士舘大 |
横山陸人 投 専大松戸 |
福田光輝 内 法政大 |
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阪神 | ×奥川恭伸 西純矢 投 創志学園 |
井上広大 外 履正社 |
及川雅貴 投 横浜高 |
遠藤成 内 東海大相模 |
藤田健斗 捕 中京学院大中京 |
小川一平 投 東海大九州 |
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東北 楽天 |
×佐々木朗希 小深田大翔 内 大阪ガス |
黒川史陽 内 智弁和歌山 |
津留崎大成 投 慶応大 |
武藤敦貴 投 都城東 |
福森耀真 投 九州産業大 |
瀧中瞭太 投 Honda鈴鹿 |
水上桂 捕 明石商 |
DeNA | 森敬斗 内 桐蔭学園 |
坂本裕哉 投 立命館大 |
伊勢大夢 投 明治大 |
東妻純平 捕 智弁和歌山 |
田部隼人 内 開星 |
蝦名達夫 外 青森大 |
浅田将汰 投 有明 |
ソフト バンク |
×石川昂弥 佐藤直樹 外 JR西日本 |
海野隆司 捕 東海大 |
津森宥紀 投 東北福祉大 |
小林珠維 内 東海大札幌 |
柳町達 内 慶応大 |
選択終了 | |
読売 | ×奥川恭伸 ×宮川哲 堀田賢慎 投 青森山田 |
太田龍 投 JR東日本 |
菊田拡和 外 常総学院 |
井上温大 投 前橋商 |
山瀬慎之助 捕 星稜 |
伊藤海斗 外 酒田南 |
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西武 | ×佐々木朗希 ◎宮川哲 投 東芝 |
浜屋将太 投 三菱日立PS |
松岡洸希 投 BC武蔵 |
川野涼多 内 九州学院 |
柘植世那 捕 Honda鈴鹿 |
井上広輝 投 日大三 |
上間永遠 投 四国徳島 岸潤一郎 外 四国徳島 |
解説
森敬斗選手は横浜DeNAが単独1位指名をした。昨年秋に爆発力を見せたがホームランは通算9本。守備でも悪送球を見せるなど安定感を指摘する声も聞かれ、U18ではセンターとして足と肩を見せ、外野手の方が良いという声も聞かれた。
それでも、足と肩の評価は非常に高く、スカウトからは高く評価する声が春先より聞かれており、上位指名を口にする球団もあった。夏はチームが早めに敗退してしまったが、U18代表に選ばれると1番バッターとして木製バットを使った思い切りの良い打撃を見せた。ドラフト会議では東北楽天なども外れ1位指名候補に入れていたと予想されており、春から秋まで高い評価の選手だった。おそらく練習や練習試合では足や肩で甲子園やU18では見られないようなプレーも見せていたのだろう。
将来的にショートを守っているかどうかについては、打撃の良さが光ってくれば、足と肩を生かしてセンターでという見方も出てくるのかもしれない。ただし、ドラフト1位で取った選手なので、石井琢朗選手のように、守って走って打てる遊撃手としての成長を期待したい。
次に評価されたのが紅林弘太郎選手。186cmの大型遊撃手で高校通算40本の打力があるが、スカウトは守備面で評価をしての指名となった。打撃についてはなかなか勝負されない試合もあり、中田翔選手のような所もある。ただしこちらも、オリックスは昨年のドラフト1位でショートで右のスラッガー・太田選手を指名しており、ポジションもタイプも重なるところがある。守備では太田選手の方が上と見られ、紅林選手はサードなどでのプレーという事になっていくのではないかとみられる。
3番目に評価されたのが京都国際の上野響平選手。守備については、森選手も含めて今年NO.1の呼び声が高かった。打撃はまだ非力に見えたが、今年に入ってホームランを量産している所をみるとはっきりと成長が見えたのだろう。
4番目は韮澤雄也選手。肩や足では武岡選手より劣ると評価されたが、どの大会でもコンスタントに打撃の成績を残し、特に甲子園やU18でも見せた選球眼の良さと、しっかりとコンタクトされた打球が外野に抜けていくクリーンヒットは唸る人も多かったのではないかと思う。守備では甲子園でもエラーをするなどミスは少なくない。ただし、ゴロに正面で入って捕球するなど基本に忠実な所は評価され、特に土のグラウンドでは能力を発揮できる。したがってマツダスタジアム、甲子園、楽天生命パーク宮城を使う、広島、阪神、楽天のいずれかが指名すると予想していた。
ただし広島も昨年のドラフト1位で遊撃手・小園選手を指名した中での指名で、将来的にショートを守っていくというのは定かではない。やや守備でミスの多い小園選手をサードにする可能性もあれば、韮澤選手がポスト菊池としてセカンドに入っていく可能性もある。
5番目は遠藤成選手。強い肩と通算45発の強打といった長打タイプの遊撃手は北條選手や大山選手に近いスタイルだろう。鳥谷選手のようにショートでずっと守っていけるかというそうではないようにも感じる。サードで強打を見せるか、またはセカンドが守れればという感じだろう。ちなみに、阪神は4位では最初におそらく韮澤選手を狙っていたのではないかと思う。
6番目は川野涼多選手。特に足が注目される選手だが、長打もあるという事。ショートの守備については映像でも見られた機会が少ないため細かい説明ができないが、源田選手がフルに出場をするが将来のFAの移籍なども考慮すると、次世代の遊撃手として期待されたものだろう。U18組の韮澤・遠藤と同じ4位という評価での指名となった。
7番目は開星の田部隼人選手。こちらは右の大砲という期待もあり、また守備についても肩の強さがある。DeNAは大河選手も肩の強い選手だったが、ショートで肩の強さを重視しているのかもしれない。8番目は長岡秀樹選手。守備を生で見ると足が吸い付く感じの動きを見せ、緩いグラウンドでもしっかりと踏ん張って投げていた。1番バッターとして足もあるがパンチ力に惹かれた。
そして高校生遊撃手候補で最後の指名となったのはU18に出場し、最後にはショートを守っていた武岡龍世選手となった。韮澤選手とはやや順位に差が開いた形となったが、足や肩では韮澤選手より上だったものの、守備でやや気になるところがある。
人工芝が多くなる中で、ゴロの捕球も土や芝に比べて簡単になっている。また、打球が強くなっているため、遊撃手もなるべく後に守り、肩の強さを生かしての遠投や、足の強さを生かして前の打球に猛ダッシュをしてアウトにするプレーが目立つ。そのために外野手の捕球と同じように、ワンハンドで捕球してからの送球というのが多くなっている。武岡選手は正面よりサード寄りの打球も回り込んでワンハンドでのキャッチをし、やや無理な体制だが足と肩の強さでカバーをしていたが、プロの目からは、特に土のグラウンドでは危ういという印象を受けていたのだと思う。
人工芝の神宮球場を本拠地とする東京ヤクルトが指名をしたが、「ユーティリティープレーヤーとしての可能性」を評価したという。長岡選手も指名をした中で武岡選手はサード、または外野手として足と肩を生かした選手になるのではないかと予想する。
また、ここに挙げた9人の選手の内、森選手を除く8人が3年夏の大会で地区大会の決勝以上までプレーをしている。また森選手はU18代表に選ばれている。スカウトにとってドラフト前に目に留まる機会の多い選手、またはショートとしてチームをそこまで引っ張った実績も指名に反映されたのだろうか。
プロ入りを目指す遊撃手は、最後の夏の大会は最低でも決勝まで勝ち上がりたい。
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