全国高校野球選手権兵庫大会では、秋・春の近畿王者の東洋大姫路が高砂に9-2で7回コールド勝ちし、14年ぶりの夏の甲子園へ向けて好発進した。この試合で、背番号1を背負う木下鷹大投手(3年)が7回2失点の完投勝利。そして、今春のセンバツで右肘じん帯を損傷したプロ注目右腕・阪下漣投手(3年)が、背番号10でベンチ入りを果たし、チーム自慢の“ダブルエース”が復活した。
背番号1・木下鷹大、恩返しの7回完投「チームを勝たせることが僕の役目」
「内容は良くなかったんですけど、結果的に抑えてチームは勝っているので良かった」。試合後、木下鷹大投手は安堵の表情を見せた。初戦の先発マウンドを託され、「ブルペンから緊張してしまって」と序盤は毎回のように走者を背負う苦しい投球で、高砂と接戦が続いた。それでも9安打を浴びながらも、要所を締めて7回を2失点にまとめると、徐々に力の差を見せ始め、最終的には7回コールドで勝利、木下投手が完投した。「夏は勝てばいい。全国優勝まで勢いづけてやっていければ」と、エースとしての責任を果たした。
盟友への熱い思いがあった。昨秋、自身が故障で投げられなかった時、エースだった阪下漣投手から「俺がセンバツに連れて行くから、一緒に投げよう」と励まされた。阪下投手はその言葉通り、絶対的エースとしてチームを牽引し、センバツ出場を実現させた。その阪下選手がセンバツ初戦で右肘靭帯を痛めて降板し、その後は苦しい状態が続いているが、今度は自分の番。「甲子園に連れて行くから、夏は一緒に投げよう」。今度は木下投手が、リハビリに励む阪下投手に同じ言葉を繰り返し送ってきた。その約束を果たすための、第一歩だった。
背番号10で復活!阪下漣、ベンチから仲間を鼓舞
春の大会はベンチを外れていた阪下投手。夏の大会にベンチ入りできるかどうかも不安視されていたが、この日、ついに背番号10でベンチに帰ってきた。登板機会はなかったものの、道具運びやベンチの掃除など、裏方に徹してチームを支えた。「勝利をもたらせたので良かった」と、仲間の勝利を笑顔で喜んだ。
リハビリは順調に進んでおり、すでにブルペンで捕手を座らせて9割以上の力で投球できるまで回復しているという。岡田龍生監督も「計画的にリハビリをしてきて、順調にいけそうという判断。」と話し、今大会での登板の可能性について、「もちろん。そうでないと入れない」と、大会中の復帰を示唆した。阪下投手本人も、「抑える技術は関係なく、まずは信頼を得ることから始めて、最終的には試合で投げられるようにしたい」と、完全復活へ向けて意欲を見せる。
合言葉は「甲子園で、2人で投げよう」
「阪下が入ることでチームが活気づく。チームに必要な存在だと思う」と木下投手が語れば、阪下投手も「今は木下に、頑張ってくれという気持ち。とにかく手助け、サポートしたい」と話した。チームは秋、春と近畿大会を連覇しているが、その中には決して順風満帆ではない、二人の苦しみと助け合いがあった。
兵庫史上初の秋春夏3連覇がかかる夏。「甲子園で、2人で投げよう」。その合言葉を胸に、東洋大姫路のダブルエースが、14年ぶりの夏の頂点を目指す。
木下鷹大投手 プロフィール
- 氏名:木下 鷹大(きのした ようた)
- 所属:東洋大姫路高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 主な特徴や実績:最速147キロ右腕。2025年夏の兵庫大会初戦で7回2失点完投勝利。春の近畿大会では、エースの阪下投手が不在の中、背番号1を背負いチームを優勝に導いた。U18日本代表候補。
阪下漣投手 プロフィール
- 氏名:阪下 漣(さかした れん)
- 所属:東洋大姫路高校(3年)
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 主な特徴や実績:プロ注目の最速147キロ右腕。今春のセンバツ1回戦で右肘じん帯を損傷したが、夏の兵庫大会初戦で背番号10としてベンチ入り復帰。昨秋はエースとしてチームを近畿大会優勝、センバツ出場に導いた。








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