全国高校野球選手権の甲子園大会3日目では、津田学園(三重)が叡明(埼玉)に延長12回タイブレークの末、5-4でサヨナラ勝ちし、6年ぶりの初戦突破を果たした。エース左腕・桑山晄太朗投手(3年)が延長12回までを一人で投げぬき、138球で4失点完投、チームに勝利をもたらした。
両エースの意地が激突、延長12回の死闘
素晴らしい試合だった。試合は津田学園が初回に先制するも、叡明も粘りを見せ5回に同点。その後は津田学園のエース・桑山晄太朗投手は、自慢のスライダーを軸に要所を締め、叡明の背番号6・田口遼平投手も投打にわたる活躍で一歩も引かない。試合は延長タイブレークに突入した。
10回、表の守りで併殺などにより無失点に抑えた桑山投手は雄叫びを挙げながらベンチに戻ったが、その裏に津田学園もバントを決めることができずに併殺で無失点に抑えられる。11回、叡明が田口投手のタイムリーで1点を勝ち越すが、その裏、津田学園も2つの併殺崩れの間に泥臭く同点に追いついた。桑山投手がランナーで出塁し、何度もスタートを切るなど走者としてエネルギーを使っていた。
そして12回、ベンチは落ち着いていた。イニングの始まる前に、桑山投手が足が攣りそうということで時間を取ってから登板をする。以前はなかなか無いことだったが、今は熱中症予防のために、治療の時間が度々設けられることから、素晴らしい判断だった。
ノーアウト一、二塁から、ピッチャーフライで1アウトを奪うと、併殺で切り抜け、わずか5球でこの回を無失点に抑えた。その裏は、無死一、二塁から伊藤璃空内野手(3年)が試みた送りバントが相手投手の悪送球を誘い、2時間47分に及んだ激闘に終止符が打たれた。
「自由人」エース・桑山、138球の熱投「最後は気持ちで」
この日の投球は三重大会に比べると球の強さも球速も無く、状態は良くなかった。「気力しかない。最後は気持ちで抑え込んだ」。試合後、椅子に座って取材に応じた桑山投手の体は、満身創痍だった。足をつりながらも投げ抜いた138球。「苦しいイニングが続いた中、粘って勝ちきれて良かった。甲子園に来て良かったと思える試合できました」と、その表情は充実感に満ちていた。
女房役の犬飼悠之介捕手が「あいつは自由人なので」と語るように、桑山投手は三重大会では、試合後から次の試合の前日までグラウンドに姿を見せず、実家で自ら考えたメニューをこなすという異例のスタイルを取る。しかし、その結果は誰もが認めるところだ。三重大会では全5試合に登板し、31回2/3を投げわずか1失点。「その分、やってくれるからみんな何も言わない。あいつが投げた時は野手はみんな絶対負けさせられないと思う」と、犬飼捕手は絶対的な信頼を口にする。
厳しい戦いの夏
この日の戦いも死闘だったが、三重大会の準決勝、決勝から厳しい戦いが続いている。準決勝では昨夏の甲子園出場校・菰野との対戦で、昨夏に甲子園で好投を見せた栄田人逢投手との厳しい投げ合いとなり、桑山投手は132球を投げて、9回5安打14奪三振1失点で勝利した。
中一日で行われた決勝戦の津商戦は、相手の3投手の継投に味方は1点しか奪えなかったが、桑山投手が一人で投げきり9回3安打6奪三振で完封、1−0で勝利して甲子園出場を決めていた。準決勝でパワーを使い切り、この決勝戦からやや出力を抑えてという投球になっており、この夏の体力的にもかなり限界に所にいるのがわかる。
甲子園1勝を手にしたエースは、次の2回戦までにどのような調整をするのか。もしかすると宿泊施設には戻らずに、いつものように実家でメニューをこなすのかもしれない。大学進学が有力な投手だが、注目をしたくなる投手であることは間違いない。
桑山晄太朗投手 プロフィール
- 氏名:桑山 晄太朗(くわやま こうたろう)
- 生年月日:2007年6月29日
- 出身地:愛知県稲沢市
- 経歴:大里西クラブ(小1) – 藤華クラブ(大里中) – 津田学園高校(3年)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:181cm・81kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速149キロの本格派左腕。2025年夏の甲子園1回戦で延長12回を138球で投げ抜き、4失点完投勝利。三重大会では31回2/3を1失点と圧巻の投球を見せた。独特の調整法を持つ“孤高のエース”。





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