全国高校野球選手権は甲子園5日目で、春夏通じて初出場の聖隷クリストファー(静岡)が明秀学園日立(茨城)に5-1で勝利し、甲子園初白星を挙げた。来秋のドラフト候補として早くも注目される、2年生エース左腕の高部陸投手が4安打1失点(自責0)で完投した。
カブス・今永級の回転数、しっぺ投法で107球1失点完投
「初めての甲子園のマウンドで緊張もあったけど、楽しい試合でした。景色を覚えておこうと思いました」と試合後に話した16歳の147キロサウスポー・高部陸投手は、堂々としながらも初々しい笑顔で甲子園での投球を振り返った。
初回にいきなり先頭打者に死球を与えたが、「逆にあれで落ち着いたんじゃないか」と上村敏正監督が話すように、その後は安定した投球を披露。低めにも高めにも伸びのあるストレートは145キロを記録した。3回に味方のエラーで1点を失い、後半は球威を欠くようにもなったが、要所を締めるピッチングで9回を投げ抜いた。
その快投を支えたのは、プロの平均を上回る毎分2500回転を誇るというストレート。球速以上のキレを生み出すのは、父・佳さんと二人三脚で磨き上げた「しっぺ投法」だ。人さし指と中指でボールを強く弾く独特の感覚で、カブス・今永昇太投手級とも言われる伸びのあるボールを投げ込む。
相手の金沢成奉(かなざわ せいほう)監督も「すごいと聞いていて、本当にすごかった。ストレートが一級品。甲子園に出てくる左ピッチャーのトップクラス」と脱帽すると、元横浜DeNAのスカウト部長だった吉田孝司氏も「スカウト部長時代にドラフト1位で指名した今永昇太や東克樹になり得る素材」と評価した。
天国の恩師へ「楽しんでこい」
高部投手には、このマウンドで果たしたいもう一つの約束があった。中学時代に所属した武蔵嵐山ボーイズの監督・飯野靖典さんが、静岡大会決勝の4日後に57歳の若さで亡くなった。「『甲子園を楽しんでこい』と言葉をかけてもらった」。天国の恩師に捧げる、魂の107球だった。
今大会、2年生投手の活躍が目立つ中、同じ2年生左腕の沖縄尚学・末吉良丞投手が完封勝利を挙げた快投にも、「自分も打者を圧倒できれば」と刺激を受けた。聖隷クリストファーの新たな歴史を切り開く左腕は、来年、プロ入りという道を切り開く可能性は非常に高い。
高部陸投手 プロフィール
- 氏名:高部 陸(たかべ りく)
- 生年月日:2009年1月5日
- 出身地:埼玉県深谷市
- 経歴:根住少年野球(根住小1年) – 武蔵嵐山ボーイズ(深谷南中) – 聖隷クリストファー高校(2年)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:174cm・68kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速147キロを誇る2年生左腕。2025年夏の甲子園1回戦で4安打1失点完投勝利を挙げ、チームに甲子園初白星をもたらす。プロの平均を上回る毎分2500回転のストレートが武器。中学時代にジャイアンツカップ出場。好きな言葉は「笑顔」。












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