パナソニックホールディングス(HD)は、社会人野球の強豪・パナソニック野球部(大阪府門真市)を2026年シーズン終了をもって休部すると発表した。1950年の創部以来、都市対抗野球に57回、日本選手権に43回出場し、日本選手権では2度の優勝を誇る名門が、グループの経営改革と近年の成績不振を理由に、その長い歴史に幕を下ろすことになった。
経営改革と成績不振、名門を襲った「電撃休部」
あまりにも突然の決定だった。発表によると、今回の休部は2025年2月に発表したグループ経営改革の一環。同HDは2026年度までに1500億円以上の収益改善を目指し、国内外で約1万人の人員削減を進めている。加えて、「近年は都市対抗野球・社会人野球日本選手権の本大会出場を逃すなど結果を出せていない」というチーム状況も重い判断材料となった。
今年は都市対抗で初戦敗退、日本選手権では予選敗退と振るわなかった。プロ化が進むサッカー(ガンバ大阪)やラグビー、バレーボールとは異なり、企業スポーツとしての位置付けが難しくなっていた側面もあるようだ。
「世界の盗塁王」福本豊氏ら、数々のレジェンドを輩出
パナソニック野球部(旧・松下電器)は、プロ野球界に数多くの名選手を送り出してきた。阪急ブレーブスで活躍した「世界の盗塁王」こと福本豊氏や、剛速球で鳴らした山口高志氏、2000本安打達成者の加藤秀司氏ら、往年のレジェンドたちが在籍。近年でも建山義紀氏(元日本ハムなど)や近藤大亮投手(巨人)らを輩出しており、球界への貢献度は計り知れない。
福本豊氏は「松下電器の松下幸之助会長が生前、野球部、バレー部、バスケット部の3つは絶対になくさないと言っていたから、まさか休部はないと安心していた。ニュースで知って、えっ、ウソやろと驚いた。都市対抗の試合を毎年楽しみにしていたので寂しい限り。阪急ブレーブスがなくなり、パナソニックまで。ショックが大きい」
OBで元監督の鍛治舎巧氏(前県岐阜商監督)は「残念ではあるが、頑張ってやり切ってほしい」とエールを送り、加藤秀司氏も「大阪で昔からあるチームの中で、パナソニックが欠けるのは寂しい」と名門の消滅を惜しんだ。
2026年日本選手権がラストゲーム、有終の美を
活動は2026年の社会人野球日本選手権が最後となる。現所属選手については、2027年以降も社員としての雇用継続が予定されているが、野球継続の意思などを確認しながらコミュニケーションを取っていくという。
今年は山本ダンテ武蔵選手や久保田拓真捕手、154キロ右腕の定本拓真投手、坂下翔馬選手、伊藤岳斗投手、浦和博選手など、高校、大学で注目された社会人でも屈指の選手がドラフト候補としても注目されており、来年は151キロ右腕の柿本晟弥投手(東洋大)が注目されていた。
また、亜細亜大の本田峻也投手、大阪商業大の福島孔聖投手などがパナソニックに入部することが決まっている。これらの選手については来年で休部となるために、特例措置として社会人1年目の来年にドラフト指名候補となる。
同社は「お世話になった皆さまへの恩返しの気持ちも込めて、全力を尽くして戦い抜く」とコメント。残されたシーズンに伝統の青と白のユニホームを纏った選手たちが、名門の誇りを胸に最後の戦いに挑む。
パナソニック野球部 チーム概要
- 創部: 1950年(昭和25年)※軟式野球部として発足、1952年に硬式化
- 本拠地: 大阪府門真市
- 主な戦績:
- 都市対抗野球大会:出場57回(準優勝1回)
- 社会人野球日本選手権:出場43回(優勝2回:2000年、2005年)
- 主な出身プロ野球選手:
- 福本 豊(元阪急)
- 加藤 秀司(元阪急ほか)
- 山口 高志(元阪急)
- 潮崎 哲也(元西武)
- 建山 義紀(元日本ハムほか)
- 久保 康友(元ロッテほか)
- 近藤 大亮(巨人)









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