全日本大学野球連盟はこの日、緊急理事会で、8月12日に延期をしていた全日本大学野球選手権の中止を決めた。大学4年生の選手については、秋も活動できるように各大学の配慮を求めるという。
初の中止
大学野球選手権が中止となった。内藤理事は「加盟校の選手や関係者の安全を最優先に考えた」と話し、全会一致で判断したことを明らかにした。
大学野球選手権は当初の6月8日開幕を、4月2日の理事会で8月12日へ大幅に延期して開催することを決めていたが、その後も新型コロナウイルスの影響により、国の緊急事態宣言が5月31日まで延期される事態となり、この日、大会の開催が話し合われた。
緊急事態宣言については、特定都道府県を除き、今日にも解除される地域も出てくるとみられ、大学の活動も徐々に再開をし始めるとみられるが、「ほとんどの加盟校の学生が構内にも入れず、課外活動も中止になっています。緊急事態宣言が解除されたとしても、必要な練習期間を考えれば、リーグ戦の開催は7月以降になることが確定的。代表校を決めるため、無理な大会運営が行われることも予想される」とし、準備期間が足りないことを最大の理由と挙げた。
各連盟の春季リーグ戦の判断
ただし、各大学連盟の春季リーグ戦については、「一律に中止を要請するわけではありません」と話し、各連盟の判断とした。
東京新リーグはリーグ戦の中止を決めており、選手権の中止により、健闘をしていた代表を決めるためのトーナメントなどの試合も中止となる。また東都リーグもリーグ戦は行わない方針で、健闘していた代表決定トーナメントなども行われなくなる。
また、南東北大学連盟はこの中止の発表を受け、春のリーグ戦の中止を決めた。今後、各連盟もリーグ戦の中止を決める事になるとみられる。
ただし、中国地区連盟などは一部の試合を既に行っており、また緊急事態宣言が今日13日にも解除される都道府県が主となるリーグでは、開催をする可能性もある。
大学生の場合、4年生は春のリーグ戦で引退し、就職や教員免許の取得に向けた活動、また卒業の論文を書くことになる選手が多い。この春のリーグ戦が中止となる事で、今年、何もできないまま卒業を迎える事になってしまう。福岡大の堀監督は「春で引退する4年生もいる。燃え尽きないまま大学野球を終わらせるのはしのびない」と話す。
これを考慮し大学野球連盟は、秋のリーグ戦にも4年生が活動できるように、各大学の配慮を求めたが、そうは言っても、就職活動などは進めなければならないため、引退をせざるを得ない選手も少なくないだろう。そのために、開催できる地域では春のリーグ戦を、大学野球選手権も中止になったことで、開幕をさらに遅らせて開催する所もありそうだ。
秋に影響も
大学野球選手権の中止で、選手の将来について大きな影響が生まれそうだ。プロ野球、社会人野球など、次のステージでのプレーを目指す選手にとっては、全国の舞台での対戦は、自分の力を見せる大きな舞台だった。阪神の畑山統括スカウトは「緊張感が違う。最終学年の結果は大学生も評価ポイントになってくる」と全国大会での選手の評価の重要性を話した。
近畿大の佐藤輝明選手は、「チームとして全日本大学野球選手権の優勝を目指していたので残念です。全国大会に出て、スカウトの方にアピールできれば良かったけど、こういう状況なので仕方ない。プロ一本という目標は変わりません」と話した。
佐藤選手ほど既に注目されていて、関西学生リーグという、全大学のレベルの高いリーグであれば、リーグ戦を見る事でその力がプロでやれるかを測ることもできる。しかし、リーグによっては1部リーグでも力に大きな差のあるリーグ戦も多く、プロのスカウトは、全国大会でどんなプレーをするのかを重視している。ドラフト会議前の全国大会はこれで無くなり、千葉ロッテの榎チーフスカウトは「非常に残念ですね。ただ、大学生は秋があるので見ていきたい」と話したが、地方リーグの選手の評価は非常に難しくなる。
そして大学野球連携は、夏休み中の宿泊や長距離移動を伴うキャンプ、遠征を慎むように求めた。これにより、例えば亜細亜大などが毎年北海道で合宿をし、たんちょうリーグなどで力をつけていたが、これの開催も難しく、地方の大学も遠征ができなくなることで、オープン戦でドラフト候補選手が力をアピールすることもできなくなる。
ドラフトのことを考えると、秋のリーグ戦、特に地方の大学では強豪校同士の対戦に注目が集まりそうで、スカウトは血眼にして選手をチェックすることになる。それでも、東京六大学や東都、関西学生リーグといったレベルが高いとされるリーグの選手が、ドラフトでの指名が優先される可能性がある。
コメント