2023年に注目された大学生野手の、今年1年間の評価の変遷と、ドラフト指名予想をしてみます。
大学生野手のドラフト上位候補
進藤勇也捕手は筑陽学園時代にセンバツ大会で正確なスローイングとリードやキャッチングのうまさなどが注目され、上武大に進学すると、2020年に北海道日本ハムにドラフト3位で指名された古川裕大捕手がいた中で、1年生だった進藤捕手がマスクを被って、古川選手が別のポジションで出場するなど捕手として評価が高く、昨年も4年生に小山忍捕手という打撃と肩の強さでプロが注目する捕手がいたが、進藤選手が出てくると試合の流れを変え、また強烈なスローイングを見せて圧倒していた印象を受ける。
昨年秋からは3年生ながら上武大の主将となり、チームを明治神宮大会に導いた。昨年12月の侍ジャパン大学代表候補合宿でも鋭い送球を見せていた。しかし、送球は圧倒的に速いものの、同じ候補だった日本大の友田佑卓捕手と二塁への送球タイムは同じくらいで、まだモーションの改善などで速くなる余地もある。
そして、打撃に関しては2年春に打率.365、3本塁打を記録し、3年秋も打率.364、4本塁打を放った。関東大学選手権でも日体大戦でホームランを放っている。しっかりと結果を残しているが、昨年12月の合宿や今年6月の全日本合宿、日米大学野球、そして秋季リーグ戦を見ると、良いところも見られるもののプロでは打撃は他の捕手同様に打率.220くらいで落ち着くのではないかと思う。
上田希由翔選手は愛産大三河時に高校通算46本塁打を放って注目されていたが、大学では1年秋から頭角を現すと、2年からはレギュラーとして3年春、4年春は打率3割5分以上、疲れのある秋も3割前後にまとまった打撃を見せ、ホームランはリーグ通算10本、二塁打は20本と長打もコンスタントに打つなど安定感ある打撃で評価がどんどん挙がっていった。基本的には外野手の頭を越す当たりが特徴だが、神宮や東京ドームでのは狙ってホームランを打つ打撃も見せる。左の牧という表現が非常に近い印象で、1位か2位で獲得した球団は打率3割、そして狭い球場が本拠地ならば20本塁打を期待できる。来年に上田選手で勝つ試合も少なくないだろう。
その他にドラフト会議で指名が予想される大学生野手
選手名 | 学校 | 投打 | 特徴 | 評価 | 1月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
内 | 広瀬隆太 | 慶応大 | 右右 | 182/91 | B | B |
内 | 松浦佑星 | 日本体育大 | 右左 | 171/64 | B | B |
内 | 辻本倫太郎 | 仙台大 | 右右 | 168/68 | B | C+ |
外 | 宮崎一樹 | 山梨学院大 | 右右 | 181/75 | B | B |
捕 | 萩原義輝 | 流通経済大 | 右左 | 180/85 | B- | B- |
捕 | 友田佑卓 | 日本大 | 右左 | 173/73 | B- | B- |
捕 | 有馬諒 | 関西大 | 右右 | 181/77 | B- | B- |
内 | 熊田任洋 | 早稲田大 | 右左 | 174/72 | B- | |
内 | 石上泰輝 | 東洋大 | 右左 | 172/70 | B- | |
内 | 佐藤啓介 | 静岡大 | 右左 | 181/92 | B- | |
内 | 村田怜音 | 皇學館大 | 右右 | 195/107 | B- | |
投 | 田中大聖 | 太成学院大 | 右左 | 178/92 | B- | B |
外 | 大久保翔太 | 新潟医療福祉大 | 右左 | 172/68 | B- | |
外 | 福島圭音 | 白鴎大 | 右左 | 171/69 | B- | |
外 | 中島大輔 | 青山学院大 | 右左 | 180/78 | B- | B- |
外 | 西村進之介 | 専修大 | 右左 | 181/83 | B- | B- |
広瀬隆太選手は東京六大学リーグで1年の秋からコンスタントにホームランを打ち続け、昨年は春4本、秋3本を放つなど、今年も春に5本を放ち、リーグ通算で18本塁打とした。高橋由伸選手の23本塁打にあと5本だが、現時点で秋は1本にとどまっている。打率は.250くらいの選手だが、春は1割台と苦しんだ。それでも、昨冬の侍ジャパン大学代表候補合宿で冨士隼斗投手の150キロのかなり高い球を、広い坊っちゃんスタジアムのレフトスタンドに叩き込み、日米大学野球でも頭付近の球をホームランにするなど、この球は打てないだろうという球を軽く放り込むような天才的な感覚と腕の力がある。マン振りではなく、スイングしたのかどうかという当たりでも外野フェンスにぶつけるなど、計り知れない。ただ、プロでは大学同様にコンタクトの所で苦しむ事は予想され、打率2割前半だが20本というようなスタイルがハマる球団が、2位や3位で指名するのではないかと思う。
松浦佑星選手は富島高時から50m5秒台の圧倒的な俊足が注目され、日体大でも1年時から足を生かした打撃と盗塁で注目されていた。3年秋には14盗塁を記録し、ショートとしても俊敏な動きでドラフト1位遊撃手も期待していたが、セカンドに転向してしまう。この秋も打率3割台で5盗塁も決めており、俊足の二遊間が欲しいチームはあると思うが、進路との兼ね合いで指名が回避される可能性もある。
そうした中で仙台大の辻本倫太郎選手がショートで暴れている。北海高校から仙台大に進み、ショートとして素早い動きのプレーで躍動感が見て取れる。打撃に関しては打率が2割5分台で課題だったが、今春は四球を選ぶようになって打率が3割台になり、思い切りの良い打撃で長打を飛ばすなど、打撃にも何をしてくるかわからないような華が咲いてきた。2022年に日本ハムのドラフト5位で指名された奈良間大己選手も似た感じで、今年ルーキーながらショートとして出場し結果も残している。辻本選手も3位から5位の間で指名されるのではないかと予想する。
宮崎一樹選手は昨年12月と今年6月の合宿で、50m走で共にトップとなった俊足がある。体も181cmと小さくなく、肩が自慢のアスリート選手。試合でもホームランをかっ飛ばしたり、打率3割を越えたりする中で、代表の紅白戦でトップクラスの投手にはまだ苦労をしていたが、12月に比べて6月のほうが対応し、外野の深くに打球を飛ばしていた。外野手の候補が少ないこともあり、3位から5位で指名されるのではないかと予想する。
B-ランクの捕手では友田佑卓選手がモーションの速さと安定したスローイングで、進藤捕手と同じくらいの二塁送球タイムを記録しており、秋の東都リーグ1部でもチームを優勝争いに導いた。打率が2割台前半と課題だが貴重な捕手の人財としてドラフト下位で指名されると予想する。関西大の有馬諒選手は近江高校時代から注目されていた捕手で、大学代表候補の常連でもある。打撃では3割以上を残す安定さが光り、ホームランはまだリーグ戦で0本だが、盗塁が多い選手でもある。捕手としてチームを引っ張るセンスがあり、課題はあるもののプロのチームの中でも存在感を見せられる存在になっていくかもしれないと期待する。ドラフト会議では3位くらいで指名されるのではないかと思う。流通経済大の萩原義輝選手も二塁送球1.7秒台という肩の強さがあり、あとは攻撃面でどのくらい貢献できそうかがポイントとなる。ドラフト会議では育成での指名と予想する。
内野手では早稲田大の熊田任洋選手は、昨年秋に3本塁打に3割台を打つと、今年も春・秋と3割台の記録した。二塁手としての動きも一定以上の評価ができる選手でプロ側も需要もありそうに見える。ただし何でもできる器用な選手だと、阪神の熊谷選手や糸原選手のような感じになってしまうので、プロでどれだけ上積みできるかがポイントか。下位で指名がなければ社会人でのプレーを見たい選手かもしれない。石上泰輝選手は打撃にやや粗さもあるが高い打率を残したシーズンもあり、遠投116m、50m5.9秒というアスリート型の内野手で、千葉ロッテの藤岡選手のようなタイプに近いかもしれない。プロで花開くのを確認したい選手。
静岡大の佐藤啓介選手は体がしっかりとしており、強いスイングで目の覚めるような一発を打てる。左のスラッガー候補。村田怜音選手は更に大きな体から更に大きな当たりを飛ばす右のスラッガーで、プロ側も需要も高そうドラフト会議ではポテンシャルを評価した球団が3位くらいで指名しそうな選手だ。投手の田中大聖選手は153キロを投げる投手だが、素晴らしいスイングの左の強打者でこちらも4位くらいから指名があってもおかしくない。
外野手では中島大輔選手、西村進之介選手の2人は東都リーグでプレーし、レベルの高い投手の中で揉まれている。中島選手も足は宮崎選手とトップを争い、肩の強さや守備の動きのシャープさが光る。3年春の東都リーグでは打率.298、1本塁打、4盗塁、秋は2本塁打を放ちベストナインに選ばれたものの打率.244、盗塁は0だった。今年は主将として春に打率.333、秋は.286も優勝を決める満塁ホームランを放ち、MVPに輝いた。何より主将として春、選手権、秋の3冠を獲得するなど、選手としての価値が非常に高いように感じる。西村進之介選手は昨秋の東都2部で打率.409、4本塁打を記録し一気にブレークした。今春は打率.327だったが、秋は.200と最後のアピールをしきれなかった所は悔いが残るかもしれない。
そして、やはり俊足の外野手はプロ側も獲得したいポイントであり、大久保翔太選手と福島圭音選手、また他にも俊足の選手は育成ドラフトなどで指名があるかもしれない。福島選手は春の関甲新リーグで20盗塁を記録しながらも、6月の合宿では足ではアピールできなかった。しかし打撃で強い打球をみせており、可能性を感じさせた。
指名順位予想
最後に2022年のドラフト指名と比較して、2023年の指名順位を予想してみる
順位 | 2022年 | 2023年予想 |
1~2位 | 矢澤宏太・外・日本体育大(1位) 蛭間拓哉・外・早稲田大(1位) 森下翔太・外・中央大(1位) 村松開人・内・明治大(2位) 友杉篤輝・内・天理大(2位) 萩尾匡也・外・慶応大(2位) |
上田希由翔・内・明治大(1位) 進藤勇也・捕・上武大(2位) |
3~4位 | 澤井廉・外・中京大(3位) 林琢真・内・駒澤大(3位) 甲斐生海・外・東北福祉大(3位) 門脇誠・内・創価大(4位) 杉澤龍・外・東北福祉大(4位) |
広瀬隆太・内・慶応大 辻本倫太郎・内・仙台大 宮崎一樹・外・山梨学院大 有馬諒・捕・関西大 田中大聖・投・太成学院大 村田怜音・内・皇学館大 |
5位以下 | 北村恵吾・内・中央大(5位) 奈良間大己・内・立正大(5位) 田中幹也・内・亜細亜大(6位) 吉田賢吾・捕・桐蔭横浜大(6位) 久保修・外・大阪観光大(7位) |
|
育成 | 名原典彦・外・青森大 辰見鴻之介・外・西南学院大 野口恭佑・外・九州産業大 橋本星哉・捕・中央学院大 中村貴浩・外・九州産業大 山口アタル・外・テキサス大タイラー校 是澤涼輔・捕・法政大 永田颯太郎・内・台湾体育運動大 村上喬一朗・捕・法政大 重松凱人・外・亜細亜大 西尾歩真・内・中京学院大 |
萩原義輝・捕・流通経済大 |
コメント