東京六大学野球春季リーグ戦の最後を飾った伝統の早慶戦。早稲田大学が慶應義塾大学に2連勝し、明治大学との優勝決定戦へ望みをつないだ。この激闘の中で、両校のエースとして1年時から投げ合ってきた早大・伊藤樹投手(4年=仙台育英)と慶大・外丸東眞投手(4年=前橋育英)のライバル関係にも一つの節目が訪れた。伊藤投手が現役単独トップとなる通算19勝目を挙げリードする一方、外丸投手は今季苦しいマウンドが続き、チームも5位に終わった。二人の軌跡と現在地を追う。
1年時からの軌跡:切磋琢磨し、リーグを沸かせた両エース
伊藤樹投手と外丸東眞投手。世代を代表する両右腕は、1年春から神宮のマウンドに立ち、しのぎを削ってきた。
外丸東眞投手は、1年春から先発として起用され1勝を挙げると、2年春には3勝2敗、防御率1.37という成績でチームのリーグ優勝に大きく貢献。続く2年秋には6勝を挙げ、防御率1.54と安定した力を見せつけ、慶應義塾大学のリーグ制覇の原動力となった。この時点で通算11勝。世代の筆頭投手としてその名を轟かせていた。
一方の伊藤樹投手は、1年春・秋はリリーフが中心で勝ち星こそなかったものの、着実に経験を積んだ。2年春に初勝利を挙げると、2年秋には4勝をマークし頭角を現す。そして3年時は春に3勝、秋には6勝1敗、防御率1.80とエースとしての地位を確立し、特に昨秋は、明治大との優勝決定戦でチームを優勝に導く完封勝利を挙げるなど、大舞台での強さも見せつけた。早稲田大の春秋連覇に貢献し、この時点で通算13勝となり、外丸投手の14勝に迫っていた。
今季2025年春、伊藤投手は今季開幕から破竹の勢いで勝ち星を積み重ね、5月19日の明治大学戦ではノーヒットノーランを達成。そして迎えた早慶戦1回戦で、外丸投手との直接対決を制し今季6勝0敗の成績を挙げる。一方、外丸投手も奮闘をしたものの4勝3敗、通算勝利数で伊藤投手が19勝となり、18勝の外丸投手を超えて現役最多勝利投手となった。
運命の早慶戦、そして現在地:躍動する伊藤投手、苦悩する外丸投手
早慶戦でも伊藤投手が現時点での力の差を見せた。1回戦では雨中の悪コンディションにも負けず8回2失点の力投で19勝目。「外丸と並んでいるところで絶対に勝ちたいなと思っていた。昨秋の7回5失点の借りも返せた」と雪辱を果たした。続く2回戦では、1点リードの9回2死一、三塁という緊迫した場面でリリーフ登板。「エースとして抑えなければいけない場面」と、最後はスプリットで一飛に打ち取り試合を締め、チームを優勝決定戦へと導いた。
一方、外丸投手にとっては苦しいシーズンとなった。早慶戦1回戦では伊藤投手に投げ負け、今季は4勝3敗、防御率4.13でシーズンを終えた。2回戦では登板機会がなく、チームも連敗で5位が確定。試合後、外丸投手は「勝負どころの接戦を落とし、自分たちの弱さが出てしまった。チームを勝利に導けるようなピッチングをしなければいけなかったのに、期待に応えられなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、主将として、エースとしての責任を痛感していた。慶應義塾大学の堀井哲也監督も「勝ち切れなかったということに尽きます。これからしっかり振り返って、秋に向かって頑張りたい」と悔しさを滲ませた。
それぞれの道へ:3連覇目指す伊藤投手、再起を誓う外丸投手
明暗が分かれた春となったが、二人の物語はまだ終わらない。伊藤樹投手は、3日の明治大学との優勝決定戦でチームを3季連続の栄光へ導けるか。「勝てるゲームをつくって終わらせるのが自分の仕事」と、大一番へ向けて静かに闘志を燃やす。一方、外丸東眞投手は悔しさを胸に、秋のリーグ戦での再起を誓う。
ともに高校の時から注目され、慶応大と早稲田大という大きなものを背負う存在になった。大学ラストシーズンとなる秋、二人のエースが神宮のマウンドで火花を散らす日を待ち望んでいる。
伊藤樹投手 プロフィール
- 氏名:伊藤 樹(いとう たつき)
- 生年月日:2003年8月24日
- 出身地:秋田県
- 経歴:仙台育英高校 – 早稲田大学(4年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:177cm・84kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速152キロのストレートと切れ味鋭いスプリットが武器の右腕。2025年東京六大学野球春季リーグで6勝0敗(6月1日時点)、通算19勝3敗、防御率1.89。5月19日の明治大学戦では史上25人目のノーヒットノーランを達成。仙台育英高校時代には1年夏、3年春に甲子園出場。早稲田大学では1年春からリーグ戦デビューし、3年夏には大学日本代表にも選出。今秋ドラフト上位候補。
シーズン | 試合 | 完投 | 勝利 | 敗戦 | 投球回 | 四死球 | 三振 | 失点 | 自責点 | 防御率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2022春 | 6 | 0 | 0 | 0 | 8 | 1 | 12 | 1 | 1 | 1.13 |
2022秋 | 8 | 0 | 0 | 1 | 12 | 8 | 12 | 8 | 3 | 2.25 |
2023春 | 8 | 0 | 0 | 0 | 15 | 5 | 10 | 3 | 3 | 1.80 |
2023秋 | 8 | 1 | 4 | 1 | 31 2/3 | 11 | 29 | 9 | 7 | 1.99 |
2024春 | 8 | 1 | 3 | 0 | 54 1/3 | 14 | 45 | 9 | 9 | 1.49 |
2024秋 | 8 | 1 | 6 | 1 | 60 | 17 | 60 | 12 | 12 | 1.80 |
2025春 | 9 | 1 | 6 | 0 | 48 | 23 | 45 | 14 | 13 | 2.44 |
合計 | 55 | 4 | 19 | 3 | 229 | 79 | 213 | 56 | 48 | 1.89 |
外丸東眞投手 プロフィール
- 氏名:外丸 東眞(そとまる あずま)
- 所属:慶應義塾大学(4年)
- 出身高校:前橋育英高校
- ポジション:投手
- 投打:右投右打
- 主な特徴や実績:2023年秋季リーグでも6勝を挙げリーグ制覇の原動力となる。2025年春季リーグは4勝3敗、防御率4.13。通算18勝13敗、防御率2.52。慶應義塾大学の主将を務める。
シーズン | 試合 | 完投 | 勝利 | 敗戦 | 投球回 | 四死球 | 三振 | 失点 | 自責点 | 防御率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2022春 | 6 | 0 | 1 | 1 | 22 | 7 | 13 | 7 | 6 | 2.45 |
2022秋 | 5 | 0 | 1 | 3 | 21 2/3 | 6 | 10 | 11 | 11 | 4.57 |
2023春 | 11 | 1 | 3 | 2 | 59 | 11 | 40 | 18 | 9 | 1.37 |
2023秋 | 8 | 2 | 6 | 0 | 64 1/3 | 11 | 27 | 11 | 11 | 1.54 |
2024春 | 9 | 2 | 3 | 3 | 54 | 17 | 29 | 17 | 13 | 2.17 |
2024秋 | 4 | 0 | 0 | 1 | 16 2/3 | 6 | 10 | 8 | 8 | 4.32 |
2025春 | 9 | 0 | 4 | 3 | 48 | 14 | 31 | 23 | 22 | 4.13 |
合計 | 52 | 5 | 18 | 13 | 285 2/3 | 72 | 160 | 95 | 80 | 2.52 |






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