2025年11月18日、明治神宮野球大会の準決勝が神宮球場で行われ、史上6校目の連覇を狙う青山学院大学(東都大学野球連盟)が八戸学院大学を8-2で下し、3年連続の決勝進出を決めた。この試合で先発のマウンドを託されたのは、来秋のドラフト1位候補として注目を集める最速154キロ右腕、鈴木泰成投手(3年・東海大菅生)。立ち上がりに失点しながらも、先輩からの助言を力に変えて8回2失点と試合を作り、次期エースとしての真価を証明した。
試練の立ち上がりと、エース中西からの“金言”
全国大会初先発という重圧からか、立ち上がりの鈴木泰成は本来の姿ではなかった。「気合が入りすぎて、強く腕を振りすぎていた」。初回、八戸学院大打線に捕まり、2番・加納史也に本塁打を浴びるなどいきなり2点を失う苦しいスタートとなった。
しかし、ベンチに戻った鈴木を待っていたのは、この秋ドラフト1位で中日ドラゴンズから指名された絶対的エース・中西聖輝(4年・智弁和歌山)の言葉だった。
「頑張りすぎなくていいよ。良い力感で」
この言葉で我に返った鈴木投手は、即座に修正を図る。「体が突っ込んで腕が振り遅れていた」フォームを見直し、2回以降は脱力してカーブを交える投球にシフト。140キロ台中盤の直球と変化球を低めに集め、8回までスコアボードに「0」を並べ続けた。終わってみれば8回被安打5、7奪三振、2失点の好投。チームを決勝へと導いた。
スカウトも唸る「世代No.1」の修正能力
立ち上がりの乱調から試合中に立て直したその修正能力の高さに、ネット裏に詰めかけたプロのスカウト陣も熱視線を送った。
日本ハム・山田正雄スカウト顧問「フォームも腕の振りも柔らかく球筋も伸びる。来年の12人に入ってくる選手ですよ」
DeNA・稲嶺茂夫スカウト「1回は力みすぎていたが、2回以降はカーブを交えることで力を抜く感覚を取り戻した。修正能力の高さは評価できる」
すでに来年のドラフト戦線を見据えるスカウトたちに対し、鈴木投手自身も「圧倒できる投手、世代ナンバーワンを目指したい」と高い志を持つ。この日の投球は、そのポテンシャルを十分に感じさせるものだった。
「何が何でも4年生を日本一に」 宿命のライバル対決へ
19日に行われる決勝戦の相手は、準決勝で快進撃を見せた立命館大学。そこには、今夏の大学日本代表でチームメートだった同学年の左腕・有馬伽久(3年・愛工大名電)がいる。大会新記録となる10者連続奪三振をマークしたライバルに対し、鈴木投手は闘志を燃やす。
「ライバルとして意識しますし、負けたくない。先発の経験では有馬が上ですが、ストレートでは負けていない」
そして何より、鈴木投手を突き動かすのは先輩たちへの思いだ。「ここまで来たからには、何が何でも4年生、監督を日本一にしたい」。エース中西の右肘炎症離脱時には完封勝利でチームを救い、優勝に貢献してきた次期エース。連投も辞さない覚悟で、青学大の黄金時代を築いた偉大な先輩たちへの恩返しを誓う。
鈴木泰成 プロフィール
- 氏名: 鈴木 泰成(すずき・たいせい)
- 所属: 青山学院大学(3年)
- 出身: 茨城県ひたちなか市(東海大菅生高卒)
- ポジション: 投手
- 投打: 右投右打
- 身長・体重: 187cm、85kg
- 主な特徴や実績: 来秋ドラフト1位候補に挙がる最速154キロの大型右腕。長いリーチから繰り出す角度のある直球が武器。東海大菅生高時代にはセンバツ出場。青学大ではリリーフエースとして活躍し、3年秋から先発の一角へ。大学日本代表選出。50m走6秒0、遠投105mの高い身体能力も誇る。










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