全国で3396校が参加した今年の夏の高校野球大会も、残っているのは甲子園に出場する49校のみとなりました。各地の大会で敗れ、甲子園で惜しくも見られなかった注目選手を各地方大会大会一人に絞って紹介します。今回は中国・四国地方編。
北海道・東北編/関東編/北信越・東海編/近畿編
岡山・玉野光南:石井稜馬投手 B-評価
左からの角度のあるストレートはだいたい140キロを記録していて、左からの角度もある投手で隠れた逸材だと見ていた。2回戦と3回戦は4イニング、4回戦は4イニングを無失点に押さえて勝ち上がった。
4試合目となるおかやま山陽戦は、先発の梶原投手が3回で2失点し、4回からのロングリリーフとなる。4回、5回は無失点に抑えるも6回に4安打を許して2失点、8回は四球や暴投などで追い込まれ、最後は満塁からバントの内野安打、捕手の悪送球により2失点しコールド負けとなった。
トータルで見ると、左腕投手として評価を得た夏だった。野球人生を拓くものになったのではないだろうか。
広島・英数学館:藤本勇太投手 B評価
春の広陵戦で1失点完投勝利を挙げた147キロ右腕は、プロに非常に注目をされており、この夏までに2桁の球団スカウトが視察に訪れるなど、かなり注目をされている投手だった。
広島大会では初戦で9回6安打9奪三振無四球で完封、変化球もうまく使うピッチングを見せていたが、3回戦で広島商と対戦し、8回8安打4失点で敗れた。下半身が安定しており、飄々と投げてくるなど面白い一面もあった。しかし、良い投手であることは間違いないと思うが、もう一つインパクトが欲しいとも感じた。
フォームに物足りなさはあるのだが、山本由伸投手や今井達也投手のように、内の筋肉を強くすることで、びっくりするような球を投げられるようになるのかもしれない。また、フィールディングもよく、今永投手のようなクレバーさもある感じで、いろいろと伸びる要素を持っている感じもする。実際に何度も見たスカウトは、そういう所に注目しているのかもしれない。
鳥取・岩美:平田槙太郎投手 C+評価
183cm102kgという大型のサウスポー投手で、春も2回戦の米子東戦で2回3失点で降板するなど、それほど評価をしていなかったが、この夏の2回戦・鳥取中央育英戦で良い投球を見せた。
大型だが、フォームは大きくなく、捕手のミットを見ながらコントロールよく投げる。それで打て腕も大きく振らないが鋭さがあり、この試合では6回を投げて3安打10奪三振2失点と良い投球を見せた。
次の米子西戦では2回で7失点して降板した。力を入れた真っ直ぐをしっかりと投手の方に弾き返された。それでも体はあるので、次に見た時にはすごい球を投げている可能性もあるかもしれないと思った。
島根・浜田:山田玲投手 B評価
1年生の頃から名前が聞かれていた投手で、2年で140キロ中盤を記録するも、秋は初戦で開星に敗れ、春も2試合目に開星に敗れており、なかなか見る機会が無い投手だった。しかし、今年5月待つには150キロを突破し、中国・四国担当のスカウトが地域でナンバーワンと評価するなど、その実力は認められていた。
この夏、初戦(2回戦)の松江農林戦は登板せず、3回戦の大社戦で初登板初先発する。相手は昨夏の代表校で甲子園で旋風を巻き起こしベスト8まで勝ち上がったチームだが、5回まで2安打9奪三振と全力で抑える。しかし7回に2つのエラーから犠飛とタイムリーで2失点をしてしまった。
8回に見方が同点に追いつき、徐々に球の力に衰えてきたものの8回はなんとか粘ると、9回は再び力を入れ直して2者連続三振など3人で抑える。しかしこれが最後の力だった。タイブレークの10回表で、大社が昨年の甲子園のような粘りで無失点に抑えると、その裏に暴投と内野安打で1失点しサヨナラ負けとなった。
この夏の登板はこの試合だけ、9回4安打13奪三振3失点で自責点は0点、快心の当たりはほとんどなかった。大学進学を表明しており、次は大舞台でその投球を見たい。大学1年生の来年にも、チームの主戦として大学野球選手権などに出てくるかもしれない。そのくらい実力はすでに高い。
山口・南陽工:阿部和希投手 C+評価
昨年夏の山口大会でも、準決勝の高川学園戦で2年生の阿部和希投手が1回の2アウトからロングリリーフをして8回1/3を4安打1失点に抑えて勝利すると、決勝の下関国際戦も先発した9回6安打3失点(自責点1)で完投し、2年生エースとしてチームを甲子園に導いた。甲子園では菰野の栄田人逢投手と2年生対決となり6失点(自責点3)で初戦敗退したが、9回を投げぬき甲子園の経験を持ち帰った。
そして春、山口大会の初戦はいきなり高川学園との対戦だったが、ここでも阿部投手が先発して完投4−3で勝利し、チームはそのまま山口大会で優勝すると、中国大会の初戦・創志学園戦でも阿部投手が5失点ながら完投し、腕を磨いた。
143キロ右腕として山口ナンバーワンと評価されて迎える夏、2回戦はリリーフ、3回戦の周防大島戦で1失点完投、4回戦は再びリリーフとフル回転をする。準決勝の宇部商では先発し、9回まで2失点に抑える。試合はタイブレークの末に勝利し、2年連続の甲子園まであと一歩となった。しかし、決勝では初回に5失点、春に勝った相手に一気に流れを持っていかれる。そして5回を投げて9安打9失点で完敗した。
低めへの伸びのあるストレート、そして非常にクレバーさを感じさせる投球で、次のステージでもチームを背負うような投手になるのだろうと思う。2年間、エースという存在を見せ続けた、そんな投手だった。
香川・高松商:チーム全体
なぜこのチームが大成しなかったのかと思うくらい、今年も高松商は能力の高い注目の選手がそろっていた。登板機会は少ないものの秋に152キロを記録した高橋友春投手、大型の体から147キロの速球を投げた行梅直哉選手、安定感抜群のエース・末包旬希投手、秋の四国大会で2打席連続ホームランを放った橘朋宏選手など、センバツ前からその選手たちが注目された。
センバツでは高橋投手が148キロ、行梅投手が145キロを記録したものの、早稲田実との初戦で2−8で敗退、シードで出場した春の四国大会でも明徳義塾に敗れると、夏の香川大会では2回戦、3回戦で大勝するも、準々決勝の尽誠学園戦では、相手のエース・広瀬賢汰投手に9安打を浴びせながらも得点が奪えず、末包投手も9回1失点の好投も0−1で敗れた。
選手が故障などで欠場していたわけではない。行梅投手も高橋投手も坂出工戦でそれぞれ1回、1/3回を投げている。橘選手も1番を打ち、この試合では3打数2安打3打点の成績を残している他、山田圭介選手、高藤快渡選手のつながりも良かった。しかし、これだけの戦力を持ち、今年の高校野球の中心にもなれると評価されたチームだったが、高校野球は難しいものだ。
それでもこれからバラバラになって進んでいく選手たちは、その先で注目される選手になるだろう。その時に改めて2025高松商が注目されるのではないかと思う。
徳島・徳島北:赤澤悠哉投手 B-評価
公立のエースらしくないがっしりとした体型、赤澤悠哉投手は180cm96kgという体で、マウンドでも横幅がしっかりとあり、対戦相手の生光学園や鳴門渦潮といった名門のエースのような感じに見えた。最速146キロのストレートは低めに伸びがあり、力強い球だった。
徳島大会は初戦の海部戦で9回を失点に抑えると、タイブレークも無失点に抑えて延長10回まで5安打8奪三振で完投する。2回戦は強豪の生光学園戦だったが、ここで9回3安打10奪三振、6つの四死球を与えるも1失点に抑える完投勝利を挙げた。準々決勝でチームはかけに出た。川島戦で赤澤投手を温存しするも、チームは5−4で勝利し、準決勝の鳴門渦潮戦に向かう。
その準決勝で先発した赤澤投手は、やはり素晴らしいピッチングを見せた。9回を投げて6安打6奪三振1失点、残念ながら打線が完封されて敗れたが、0−1と行き詰まる投手戦を見せた。3試合に完投して3失点、徳島を代表する投手だった。進路が注目される。
愛媛・西条:宇佐美球児投手 B-評価
182cm86kgの大型左腕投手で、球速は143キロも回転数の多い質の良い球が特徴、昨年からずっと高い評価が続いており、この夏前も大勢のスカウトが視察に訪れ、高く評価されたいた投手だ。
評価を見ずにフラットな状態でこの夏の投球を見ると、初戦の川之石戦で7回に1イニングを投げて2安打1奪三振1四球、状態は良くなかったと思うが球速はそれほど速くないし、球質は良いもののドラフト上位でという評価はできなかった。しかし、これだけ注目されているのにはなにかあるのだろうと追いかけ、3回戦の八幡浜工戦でも7回に登板する、9球で三者三振という離れ業を見せた。
そして準々決勝の小松戦、結論としては9回161球を投げて4安打12奪三振も5つの四死球を与えて4失点、それでも自責点は1という内容で敗れる。しかし、見れば見るほどよい部分を見つけられる選手で、四死球は多かったが制球は悪くなかったし、小さな変化球も効き目がある。何より大きな体で球速こそ130キロ中盤を続けたが、まだまだポテンシャルを感じさせるものがあった。
下の力をもっと使えるようになったり、全体的に瞬発力を高めたりと課題はたくさんあるが、見れば見るほど良さがわかる投手で、将来が非常に楽しみな投手だと思う。まずは進路についての情報を待ちたい。
高知・明徳義塾:池崎安侍朗投手 B-評価
センバツでは1回戦で健大高崎と対戦し、下重投手との投げ合いに1−3で敗れたものの、侍ジャパンU18代表候補にも入り、春の四国大会決勝では英明を5安打完封。170cm65kgという大きくない投手だが、誰もが明徳義塾のエースと認める存在で、この夏の甲子園でもその姿を見せることを疑う人は少なかったかもしれない。そのくらいの投手だった。
夏の高知大会では初戦は登板せず、3回戦の土佐戦では、先発が3回までに3失点をしており、3回途中からリリーフをすると、4回1/3をノーヒットに抑えこむ。打線もエースの投球に勢いづき、4回に5点を奪って逆転すると、7回の3点を奪ってコールドを決めた。準決勝の中村戦でも9回2安打11奪三振2四死球で完封し、決勝を迎える。
決勝戦、相手の高知中央はほとんど見たことのない2年生・堅田徠可投手が先発すると、序盤に146キロを記録する球を投げ、予想外の圧倒的な投手の登場にチームは動揺したのか、5つのエラーをしてしまう。そして池崎投手も8つの四死球を与えた。それでも、コントロールできていたなかったのではなく、厳しい所に投げた結果の死球が4つあり、攻めの投球をした結果の8四死球だった。それもやはり、堅田投手の投球に影響されたのではないかと思う。
いずれにしても、池崎投手は最後の夏に甲子園に姿を見せることはできなかった。しかし、U18代表には高い確率で選ばれると思うし、その先、どのように進化を遂げていくのかが楽しみな投手だ。







コメント