第96回都市対抗野球は決勝戦が行われ、王子(春日井市)が三菱自動車岡崎(岡崎市)を2-1で下し、21年ぶり2度目の優勝を飾った。この歴史的勝利の立役者となったのが、移籍1年目の九谷瑠投手。矢場とんブースターズから加入した右腕が、準々決勝からの3連投で3連勝を飾る大車輪の活躍で、大会MVPにあたる橋戸賞に輝いた。
決勝で4回無失点の快投、逆転劇を呼び込む
1点を追う6回からマウンドに上がった九谷瑠投手は、気迫のこもったピッチングで三菱自動車岡崎打線を封じ込める。味方が8回に逆転した直後には、圧巻の3者連続三振を奪い、相手に流れを渡さなかった。最後までリードを守り抜き、4イニングを1安打無失点。21年ぶりの歓喜の輪の中心で、胴上げ投手となった。
準々決勝、準決勝、決勝と3日連続でのリリーフ登板で、全て勝利投手となる鉄腕ぶりを発揮。「予想していなかったことが起きている。頭がゴチャゴチャになっています」と興奮を隠せない様子だった。
「矢場とん」のホール係から頂点へ
九谷投手の経歴は異色だ。大阪大谷大学卒業後、「まだ実力がなくて企業チームに入れなかった」と企業チームには入れず、名古屋のみそかつ店「矢場とん」の硬式野球部「矢場とんブースターズ」に入社。平日は午前中に練習し、午後は店のホール係として働く日々を送った。「お客さんがたくさん来て大変だった。隙間の時間を使ってフィジカル面を鍛えた」という。
転機となったのは、まかないで食べたトンカツ。60kg台だった体重は80kgまで増え、「トンカツで体が出来上がった」と語る。そして今年、「野球に集中できる環境をいただいている」と王子から誘われて移籍すると才能が開花。今大会では自己最速の153キロを記録すると、5試合中4試合、369球を投げ、最後は東海2次予選で敗れた相手に本大会で雪辱を果たし、最高の形で恩返しをしてみせた。
最高の栄誉・橋戸賞を受賞
大会を通じて4試合に登板し防御率0.00、3勝を挙げる圧巻の成績で、大会最優秀選手賞にあたる橋戸賞を受賞。「うれしいです。最高の舞台だった」と笑顔を見せた。「味噌カツ王子」が、最高のサクセスストーリーを完結させた。
九谷 瑠 プロフィール
- 所属:王子
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 経歴:大阪大谷大 – 矢場とんブースターズ
- 主な特徴や実績:25歳。移籍1年目。クラブチーム「矢場とんブースターズ」出身。都市対抗野球で準々決勝から3連投3連勝の活躍で、チームを21年ぶりの優勝に導き、橋戸賞(MVP)を受賞した。












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