2016年ドラフト総決算~その5:戦闘開始~

高校1年生となった選手たち、その中から早くも花開く選手が出てくる。大学野球は各チームのエースが花盛りの活躍で、2016年のドラフトは大豊作の予感を漂わせていく。田中正義投手、寺島成輝投手、柳裕也投手などがどのようにしてドラフト1位指名にたどり着いたのか、2016年のドラフトストーリー。

戦闘開始

2014年の東東京大会の決勝、いつものように二松学舎大付が勝ち上がってきた。しかしファンからは、「また来たのか」との声も聞かれた。二松学舎大付はこれまで10度も決勝に進出をしているがすべて負けていた。相手は帝京、何度も跳ね返された相手の一つだった。

しかしその壁を1年生が打ち砕いた。小柄な左腕・大江竜聖はとにかく強気に、怖いもの知らずで帝京の打者のインコースを攻める。捕手の今村大輝は向かっていくような性格ではなかったが、相手チームがにらんで来ても動じない性格で、大江の強気の攻めを淡々と受け続けつづけた。そしてセカンドの三口英斗も躍動感あふれるプレーを見せ、延長の末、帝京を下した。11度目の挑戦で夏の甲子園に初出場したのは、1年生の活躍によるものだった。

大阪でも新たな戦力が加わる。寺島成輝は、選抜で準優勝した選手層の厚い履正社にあっても、1年目から安定感と能力の高さを見せる。夏の大阪大会でもリリーフとして接戦となった4回戦の八尾戦などで先発の先輩エースを早い回からリリーフし抑えていった。そして準決勝、相手はライバル・大阪桐蔭、岡田監督は187cmで140キロ後半を投げる永谷暢章に先発を託した。しかし永谷は初回にいきなり6失点し、2回から寺島が登板する。寺島はこの回1点を失ったものの、3回以降は大阪桐蔭を抑え、9回までに8イニングで8安打を許すも1失点という好投を見せた。試合は初回の5失点が響き2-6で敗れたが、寺島が先発していたらという思いは、この後、大阪桐蔭が全国制覇をすることでさらに大きくなる。それとともに寺島の実力に大阪の高校野球関係者が驚いた。

甲子園、二松学舎大付は1年生の活躍で、2回戦を突破したものの3回戦で快進撃は止まった。そして現れたのが同じ1年生のスター候補だった。2日目第1試合の東邦vs日南学園戦、東邦は1年生の藤嶋健人をマウンドに送る。すると藤嶋は打ち取っては雄たけびをあげ、一気に甲子園の観客を引き込んだ。8回を投げて9安打を許すも3失点に抑え、1年生の中で最初の甲子園1勝を挙げた。藤嶋は2回戦の日本文理戦でも6回途中まで3失点と好投したものの、2-3で敗れた。しかしこの甲子園は藤嶋にとって戦闘開始、Show timeの始まりだった。

甲子園は大阪桐蔭の優勝で幕を閉じる。その勝利によって全国のチームから3年生が引退し、1年生からも主力メンバーが続々登場していく。

社会人でもルーキーが

高校の舞台で1年生が甲子園で活躍すれば、社会人でもルーキーが東京ドームで活躍を見せた。しかしその中でも高校卒の1年目の選手の活躍は異例だった。

東京ガスに進んだ山岡泰輔は、リリーフエースとして信頼を勝ち得ていた。都市対抗本選でも1回戦の七十七銀行戦で9回のマウンドに上ると、150キロクラスの球を連発して1回1奪三振パーフェクトに抑えると、2回戦のバイタルネット戦では1-0の接戦が続く中で、6回から山岡が登板する。すると4回を2安打6奪三振で無失点に抑え、高卒新人には見えない堂々たる投球を見せた。

しかし山岡も3回戦で1失点と疲れを見せ、準々決勝の西濃運輸戦では8回に登板するも2/3回で3安打2失点し、試合も1-7で敗れる。西濃運輸はそのまま都市対抗を制した。

実りの秋

秋の大学リーグ戦は、すでに話題になりつつあった創価大の田中正義に注目が集まったものの、田中は調子を崩していた。大学野球選手権の連投の後、ハーレムベースボールウィークの代表メンバーに選出され、大会で2試合を投げて17イニングで1失点と好投し最優秀投手賞を獲得する活躍を見せていたが、その疲労がたまり、リーグ戦では1試合に登板したのみだった。

明治神宮大会出場を決める横浜市長杯でも田中投手は2試合に短いイニングでの登板となった。しかしその中で、同じ2年生に怪物が登場した。白鴎大の中塚駿太だった。中塚は上武大戦の後半にリリーフで登板すると、191cmの大きな体から153キロの速球を投げ込んだ。1回2/3の投球で2つの四球を許したものの無失点に抑え、ドラフト候補をチェックしに来ていたスカウトを驚かせた。

そして行わえた明治神宮大会、出場した創価大は田中がリリーフで登板すると153キロを連発しスタンドを沸かせた。1回戦の富士大戦、翌年ドラフト1位指名される多和田真三郎がノックアウトされると、小野泰己投手が打者一人に登板し抑える。これが全国デビューであり145キロの速球を投げ込んだ。

ベスト4に勝ち進んだ創価大だったが、準決勝では東京六大学を制した明治大と対戦する。明治大も翌年のドラフトで1位指名される上原健太投手が先発したが、柳裕也投手が5回から登板し、5イニングを3安打6奪三振で無失点に抑える好投を見せる。リリーフで登板した田中や池田隆英との投げ合ったが、東京六大学のエースの貫禄をすでに見せていた。

大会は駒澤大がこちらも翌年のドラフト1位投手・今永昇太のいる駒澤大が優勝した。

高校生も

高校でも選手たちが実りを見せる。

関東大会では東海大甲府の1年生・菊地大輝が千葉黎明戦で5回参考ながらノーヒットノーランを達成すると、常総学院の鈴木昭汰が佐野日大を9回1失点に抑えて勝利、平塚学園の高田孝一が2013年の夏の甲子園覇者・前橋育英を9回2失点で完投し勝利を納めた。すると準々決勝では木更津総合の早川隆久が川越東を完封する。1年生投手の競演は新たな時代を予感させた。

東京では大江の好投が続く。東京大会では1回戦から決勝までの6試合を一人で投げぬく。3回戦の早大学院戦は延長15回を一人で投げ0点に抑え、準決勝でも関東一を相手に11回を投げて5失点も完投、決勝では東海大菅生の勝俣を投げ合い2-3で惜しくも敗れるが、東京を代表する投手となっていた。

北信越では敦賀気比の188cm右腕がデビューする。山崎颯一郎はエース平沼翔太がいる中でリリーフで登板し、140キロを超す速球は大器の予感をさせた。近畿では報徳学園に期待される投手が登場する。主島大虎は179cmの左腕投手で中学時代は近畿で名をはせていた。しかし寺島の存在が大きく、高校で打倒寺島に燃えていた。寺島より一足早く近畿大会に出場した主島は初戦の天理戦で7回まで4失点と好投したものの、8回に崩れて敗れた。しかしこの年の天理は、最強チームと呼び声高いチームで、近畿大会でも夏覇者の大阪桐蔭や龍谷大平安、立命館宇治を破り優勝をし、主島の好投は評価された。

明治神宮大会、敦賀気比は準々決勝の九州学院戦に1年生の山崎を先発マウンドに送る。6回まで5安打で自責点3と粘りの投球を見せた。この大会で注目されたのは1年生の1番バッターだった。静岡の鈴木将平は東海大菅生の勝俣に5打数4安打とヒットを浴びせた。この試合で敗退したものの、50m6.1秒の俊足外野手として、ここから脚光を浴びていく。

横浜高に進んだ藤平は、神奈川大会3回戦の慶応戦に先発を任された。大きな体から投げられる速球を評価されての登板だったが、結果は3回1/3で5安打5失点、期待に応えることはできなかった。藤平の苦労は続くことになるが、それはまた次の話。

高校生、大学生、社会人のそれぞれのステージで、いよいよ2016年のドラフト候補たちが出そろい、舞台の場面は「デビュー」から「評価」へと移っていく。

つづく


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