前橋育英が夏制覇、高橋光成投手が5完投、防御率0.36で立役者

高橋光成, 前橋育英, 土谷恵介

 前橋育英が甲子園初出場で初優勝を飾った。

 先発した2年生・高橋光成投手は連戦の疲れを見せながらもこの日も9回を完投し6安打5奪三振3失点、今大会で初の自責点を記録したものの、要所で抑えてチームの逆転優勝に大きく貢献した。9回にはこの日最速の141km/hを記録し最後はフォークボールで空振り三振を奪った。

 今大会は6試合中5試合に先発して完投、50回を投げて自責点2(失点5)で防御率は0.36と抜群の安定感を見せた。また群馬大会決勝では148km/hを記録しており、188cmの長身でキレイなフォームから投げ下ろす質の高いストレートに、コントロールの良いスライダー、フォークも抜群で、来年のドラフトの目玉として注目されるだろう。

対戦 球数 被安打 奪三振 与四死球 失点 自責点 備考
岩国商 9 133 5 13 2 0 0 1-0で完封勝利
樟南 9 118 5 6 1 0 0 2試合連続1-0で完封
横浜 9 126 8 5 2 1 0 高濱祐仁、浅間大基をノーヒットに抑える
常総学院 5 72 3 10 2 0 0 6回からリリーフし10奪三振
日大山形 9 104 7 7 3 1 0 スライダー、フォークで104球完投
延岡学園 9 134 6 5 5 3 2 5四死球も要所を締めて優勝
合計 50 687 34 46 15 5 2 防御率は0.36

 打線では目立った選手がいるチームではなかったが、繋ぐバッティングが特徴でこの日も10安打を記録した。3番ショートの土谷恵介選手がこの日は3安打、チャンスメイクをして決勝のホームを踏んだ。また二遊間の堅い守備など守備力に自信を持っており、守り勝つ野球が全国を制覇した。

 体の限界を、魂が超えた。9回2死一、二塁。高橋光が、この日最速の141キロを叩き出し、カウント1―2と追い込んだ。「最後は三振で切ろう」。気力を込めて、重たい右腕を振った。133キロフォークにバットが空を切った。優勝だ。日本一だ。「実感がなくて。ここまで来たのが奇跡のような気がして…」。今大会687球を投じた細身の体を、歓喜の輪に委ねた。

 極限状態のマウンドだった。21日の日大山形戦。気温32・5度の真夏日に1失点で完投した体を異変が襲った。腹痛を感じ、下痢をした。微熱が出て、目も腫れた。熱中症だった。朝になっても下痢は治まらない。背番号1のプライドで気温34度のしゃく熱のマウンドに上がったが、体は正直だった。

 「体が本当に重くて…。最初は全然動かなかった」。直球は130キロ台前半。4回に連打と四球で2死満塁とすると、7番・薄田凌に三塁への適時内野安打を浴びた。今大会45イニング、608球目で初めての自責がついた。計3失点。「自分は何をしてるんだろう」と弱気になった自分を責めた。

 大切な仲間が救った。直後の5回、味方が3点を取り返した。「疲れで自分に負けていた。追いついてもらい、絶対抑えたかった。そこからは気力だけで投げた」。闘志だけは衰えなかった。魂の134球は、初出場Vに結実した。

 最後は自信のある直球、ではなくフォークを選んだ。今大会通算687球目。狙い通りに空振り三振を奪った高橋光は、駆け寄るナインの抱擁を一身に受け止めた。

 「本当にうれしい。4強くらいから優勝を意識していました。奇跡みたいです。まだ信じられない。一球一球思いを込めて投げました」

 疲れは感じていたが、頭の中は冷静だった。4―3の9回2死一、二塁。一打同点のピンチ。「直球は球威が落ちている。スライダーも打たれるかもしれない。フォークしかない」。カウント1ボール2ストライク。直前の3球目に、この日唯一の140キロ超えとなる141キロをマークしたが、直球を2球続けるほどの自信はなかった。捕手のサインに首を振って、フォークを投げた。ファウル。続く5球目。再度フォークを投げ込み、初優勝を手にした。

 全6試合で5試合完投。準決勝までの5試合41イニングを投げ自責点は0だった。しかし4回に4安打を集中され、今大会45イニング目にして初めて自責点2を記録した。「0で抑えたい気持ちはあった」。39年・海草中(和歌山)の嶋清一と48年・小倉(福岡)の福嶋一雄に並ぶ防御率0・00での優勝はかなわなかった。それでも同0・36は、昨年春夏連覇を達成した大阪桐蔭・藤浪晋太郎の0・50さえも上回る堂々の好成績だ。


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