早稲田実業の清宮幸太郎選手は、甲子園デビューとなった今治西戦は4打数1安打1打点だった。プロのスカウトも課題がある事は認識しながらも、高い期待を示した。
打撃の課題
清宮選手の打撃は、まだ一辺倒という感じがする。上体の力があり、スイングスピードはものすごく速い。しかしバットを長く使いしならせるような形ではなく、腰の回転が使えていないため短くコンパクトに回転して上からたたいている感じ。
インコースに来た球を一二塁間に引っ張るというスタイルで、打球は大体同じ方向に飛ぶ。甘い球だと打球のスピードが速く、一二塁間を痛烈に抜ける。ただし、春の東京大会、関東第一戦でのホームランや上越市招待親善高校野球大会でのホームランを見ても、もう少しセンター方向への意識があるようにも見える。
練習でも130m弾を放つなど、余裕がある時には打球が上がるが、試合になるとチーム優先を意識しすぎるのか、伸びやかな打撃はできていない。
入学して5カ月、チームも100周年の今年は特別だったと事もあり、監督も大きなプレッシャーを感じていたように清宮選手にも「絶対に甲子園」というプレッシャーがかかりながらの戦いだったのだろう。その雰囲気の中でいろいろと試す余裕は無く、まずは打点というスタイルになっている。しかし今大会はそれで仕方無いだろう。
この夏が終わり100周年のプレッシャーから解放され、夏ほどは注目されない秋の大会になれば、またいろいろと考えて試しながら余裕を持ったバッティングが見られそうだ。当然相手も清宮選手を分析し、変化球や外角の球をうまく使うようになるだろう。そこでホームランバッターとしての進化が見られるかもしれない。
プロのスカウトの評価
プロのスカウトは清宮選手について、次のようなコメントをしている。
◎巨人・山下スカウト部長:「打球が速い。コンパクトなスイングでリストが強い。久しぶりに清原、松井に続くホームラン打者になりうる素材。」
◎東京ヤクルト・小川SD:「初の甲子園で力みがあり、上体だけで打っていたけど、タイムリーが出た事で持っているものがいい方向に出ると思う。1年から騒がれ過ぎて打球が崩れないかだけが心配です」
◎東京ヤクルト・鳥原チーフスカウト:「やっぱり持っている。大観衆の前でもひるまないで自分の力を出している。どれだけの選手になるか怖くなります。」
◎横浜DeNA・吉田スカウト部長:「思ったより体が柔らかい。1年生の夏の甲子園で活躍した清原や中田にもバットスイングは引けを取らない。球の捉え方がうまくヘッドスピードが生きている。」
◎千葉ロッテ・松本編成統括:「打席での雰囲気がある。誰しも成功している打者はそれをもっている。ぐっと観客の目を掴むのは松井見たい。思ったよりも足が速い。これはお父さんの血筋でしょう。」
◎阪神・佐野スカウト統括:「初めて生で見たが、打席で雰囲気がある。体も大きい」
◎中日・中田スカウト部長:「あそこで1本打てるのは持って生まれたもの」
いずれにしても2年後のドラフトが楽しみな選手なのは間違いない。
「まあ、1本くらい打たないと示しがつかないです。チャンスをことごとくつぶしたし、全然ダメ。しょうもないですね」
PL学園・清原、星稜・松井ら「怪物」も果たせなかった1年夏のデビュー戦、初安打初打点。それでも「20点っすね」と自己採点したのは、誰よりも己に厳しい「新怪物」らしさだった。
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