全国高校野球選手権の甲子園大会3日目は、春夏通じて初出場の叡明(埼玉)が津田学園(三重)に延長12回タイブレークの末、4-5でサヨナラ負けを喫した。3回からリリーフ登板した背番号6の田口遼平投手(3年)が、一時勝ち越しとなるタイムリーを放つなど投打にわたる活躍を見せたが、最後は自らの悪送球で試合が決まってしまった。試合後、一度は「悔いなく終わった」と語った大黒柱も、仲間の涙を見てこらえきれず、その目に涙を浮かべた。
投打で奮闘も…延長12回、痛恨のサヨナラ悪送球
まさに死闘だった。「3番・遊撃」で先発した田口遼平選手は、1点を追う3回からマウンドへ。体重を低く落とす独特の構えから、高めに伸びてくるようなストレートと変化球で、9イニングを投げ6安打4失点と粘りの投球を見せると、バットでもチームを牽引した。1点を追う5回に同点の左犠飛を放つと、延長11回には勝ち越しとなるライト前タイムリー。その裏に追いつかれるも、何度もチームを鼓舞し続けた。
しかし、結末はあまりにも残酷だった。4-4で迎えた延長12回裏、無死一、二塁から始まるタイブレーク。相手の送りバントを処理した田口投手は、サヨナラを阻止しようと三塁へ送球しようとしたが間に合わないと判断し、慌てて一塁へ投げた送球が大きく逸れ、二塁走者が生還。3時間10分に及んだ激闘に、幕が下ろされた。
普通の投手ならば、迷うこと無くファーストに投げるプレーだったが、ショートでプレーをしていてフィールディングに自身があったこともあり、難しいタイミングでもサードで刺すこと目指したプレーが、結果的にエラーを招いてしまった。
試合後、整列してベンチ前で再び整列するまで、田口選手は涙を見せていなかったが、津田学園の校歌が終わり、スタンドへ挨拶をしたあとベンチで肩のケアをすることになると、 流した涙が号泣へと変わった。「最初は悔いなく終わったんですけど、みんなの涙を見て申し訳なくて」。試合後、気丈に振舞っていた田口投手の目からも、大粒の涙がこぼれた。
監督不在の“どん底”乗り越え掴んだ聖地
「スター選手がいない中で初出場できたことは、他のチームにも希望を与えられた」。その言葉には、チームで乗り越えてきた困難の日々があったからこその重みがある。埼玉では浦和学院や花咲徳栄との対戦はなかったが、初戦の庄和も野球の強い高校で、その後、狭山経済、細田学園、山村国際、聖望学園、山村学園、昌平、と埼玉でおなじみの野球の強い高校を次々と倒してきた。
「高校野球の本質は勝ち負けじゃない。自分たちにできることをしっかりやってきた結果、甲子園にたどり着けた」。中村監督の「物事の本質を捉えよ」というスローガンを胸に、最後まで戦い抜いた。
今年は初出場としてもてはやされたチームも、秋からは埼玉王者として県内の強豪校から目標とされる存在となる。浦和学院や花咲徳栄が全力で叩きに来る厳しい大会を闘うことで、更に叡明は強くなり、埼玉の強豪として地位を築いていくことになる。そのためにもこの日の涙は必要なものだった、数年後、そう思えるようになってほしい。
田口遼平選手 プロフィール
- 氏名:田口 遼平(たぐち りょうへい)
- 生年月日:2007年5月20日
- 出身地:埼玉県
- 経歴:千間台FBクラブ(小2) – 埼玉SPヤング(千間台中) – 叡明高校(3年)
- 投打:右投左打
- 身長・体重:171cm・78kg
- ポジション:投手、内野手
- 主な特徴や実績:2025年夏の甲子園1回戦・津田学園戦で3回からリリーフ登板し、9回を6安打4失点。打っても同点犠飛、勝ち越し打と活躍。埼玉大会決勝では11回158球の完投勝利でチームを初の甲子園に導いた。叡明では1年夏からベンチ入り。好きな言葉は「今を全力で」。







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