今春の選抜大会で16強入りした九州国際大付(福岡)での部内暴力や、日大三(東京)でのわいせつ動画拡散事件など、プロ注目選手のいるチームで不祥事が相次いだ。これについて、プロ野球のスカウトからも厳しい声が聞かれている。
「指名はゼロでしょう」、プロが求める「社会人の常識」
九州国際大付の加害者はプロ注目選手だったが、プロ側の反応も厳しい。あるセ・リーグ球団のスカウトは、たとえプロ志望届が提出されたとしても、指名の可能性は限りなく低いと断言する。
セ・リーグ球団スカウト:「出したところで指名はゼロでしょう。今はどの球団も、選手には社会人としての常識を強く求めている。社会貢献活動を行い、負けた試合でも腐らずにファンサービスをしてお客さんを喜ばせることが大事。プロはあくまでビジネスですからね。その意味では、野球が上手ければそれでいいが通用するのは、実はアマチュアだけ。ヤンチャな性格だからプロ向きなんて言われていたのは、もはや過去の話です。それを理解していない高校野球の指導者がまだまだ多い」(日刊ゲンダイ)
昭和の時代ではチーム内で暴力も当たり前のようにあった。朝から晩まで野球漬けというチームもあったが、プロ側は野球の能力や成績は評価するものの、一般常識を欠いた選手を獲得することのリスクを何よりも恐れている。野球も人気スポーツ、ファンに愛され、スポンサー企業のイメージを損なわないことが、今のプロ野球には求められている。
「楽天・安楽事件」が変えた調査基準。10年に1人の逸材でも素行不良なら即NG
その姿勢を決定づけた出来事がある。それまでもチーム内で後輩に威圧的な態度をした主力選手が移籍に出されるなどはあったが、2023年に発覚した元楽天・安楽智大による後輩へのいじめ問題が決定的となった。安楽選手は契約を解除され、現在もプロ野球復帰には至っていない。12球団のフロントは現場のスカウトに対し、能力査定と同等、あるいはそれ以上に徹底した素行調査を命じているという。
パ・リーグ球団スカウト:「いまだに高校野球の監督から、この選手は勉強が嫌いだからプロに行かせてくれと言われることがある。近年はコンプライアンスが厳しくなり、2023年に発覚した元楽天・安楽のいじめ問題で、より厳格になった。あの一件以降、12球団はそれまで以上にドラフト候補の素行を調査し、獲得後の新人教育にも、より力を入れるようになった。それでも素行が怪しい選手がいれば、即クビです。10年20年に1人というドラフト候補でも、素行が悪ければフロントがゴーサインを出さないし、現場のスカウトにも、この選手は能力が高いけど、素行面で問題ありなど、性格面も含めた報告が求められる時代です」
チームの主力として活躍しても、ベンチ裏や私生活で問題を起こせば、球団全体のブランドが失墜する。スカウトは試合でもプレーや、ベンチでの態度などプレー以外の態度の他に、家族構成、交友関係、学校での授業態度にまで調査をしている。
日大三の不祥事とドラフト指名の可能性
一方で、連帯責任ですべての選手の道が閉ざされるわけではない。日大三の動画拡散事件についても、個人の関与の度合いが厳密に精査されることになるという。
セ・リーグ球団スカウト:「(日大三の候補については)彼が動画拡散に関わっているかどうか次第。無関係なら指名はあるでしょう。プロ志望届を出せばの話ですが」
しかし、一度でも「不祥事の当事者」となった選手のプロ入りは、極めて険しい道のりだ。かつてのように野球で更生させるという事は、今の球界には存在しない。
パ・リーグ球団スカウト:「高卒プロの道が絶たれても大学や社会人を経由し、本当に更生したことがわかれば、可能性はゼロではない。もっとも、そうした選手を指名すると、なんでアイツを獲得したんだと球団に苦情が殺到する。球団のイメージを損なうリスクと天秤にかけると、よほど突出したものがなければ指名は難しい。これが昭和の時代ならば、行き場のないワルを救ってやろうと指名に踏み切る球団もありましたが……」
たとえ数年を経て更生したとしても、不祥事で名前が挙がった選手の指名には、世間の批判も多く寄せられ、球団にとって無視できないリスクとなる。不祥事に揺れる名門校の選手が背負った代償はあまりにも重い。野球選手として評価されていても指名候補からは外さねばならない。
【不祥事が発生したとされる主なチーム(2025-2026年)】
- 九州国際大付(福岡): 3年生部員による同級生への暴力事件。顔面をスパイクで蹴られた被害者が学校と楠城監督を提訴。
- 日大三(東京): 部内でのわいせつ動画拡散事件。男子部員2人が書類送検。5月までの対外試合禁止処分。
- 広陵(広島): 2025年、寮内での暴力を伴ういじめが発覚。







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