東京六大学野球春季リーグ戦は5月31日、伝統の早慶戦1回戦が神宮球場で行われ、早稲田大学が11-2で慶應義塾大学に大勝した。負ければ明治大学の優勝が決まるという状況で、今秋ドラフト上位候補の早大エース・伊藤樹投手(4年=仙台育英)が先発。雨が降りしきる悪コンディションの中、8回を7安打2失点9奪三振と力投し、リーグトップタイの今季6勝目を挙げた。これで伊藤投手は現役単独最多となる通算19勝目となった。早大は6月1日の2回戦にも勝利すれば、3日に明治大学との優勝決定戦に臨むことになる。
エース伊藤樹投手が8回2失点の力投!「僕が勝てるように投げれば、優勝がついてくる」
「僕が勝てるように投げれば、おのずと優勝がついてくる」。試合後、早大のエース・伊藤樹投手は力強く語った。この日は開始直後から横殴りの雨に見舞われ、マウンドがぬかるむ中でも、「バッターに向かって集中して投げていれば何とかなる」と焦ることなく、最速147キロの直球と得意のスプリットをコーナーに丁寧に集めた。
慶大のエース右腕・外丸東眞投手(4年=前橋育英)との現役最多18勝同士の投げ合いとなったが、これを制して通算19勝目をマーク。早大OBで、この日始球式を務めた和田毅氏(ソフトバンク球団統括本部付アドバイザー)の姿に「早稲田の先輩として追いかけていくべき姿」と刺激を受け、気迫のピッチングを見せた。前カードの明治大学戦ではノーヒットノーランを達成し、その翌日には救援登板するなど、体力的には厳しい状態だったが、「1週空いて万全で臨めました」と話す。「外丸と並んでいるところで絶対に勝ちたいなと思っていた。昨秋の7回5失点の借りも返せた」と話し、昨年の早慶戦は7回5失点で負けたリベンジも果たした。
早稲田大学の小宮山悟監督は、エースの力投に「期待以上の試合内容。明日につながる勝利ですから、良かったと思います。樹はしっかりとしたピッチングをしてくれました」と話した。伊藤投手は今日の2回戦も「救援で待機する」と語し、小宮山監督も「できれば明日は温存して、明治戦に備えたいというのが本音。でも勝たないとその次はない。全員の力で明日、もぎ取りに行きます」と、2回戦でも伊藤投手が連投する可能性を示唆した。
打線も爆発、4番・寺尾選手が4安打4打点
早稲田打線もエースの力投に応えた。初回に渋谷泰生内野手(4年=静岡)、小澤周平内野手(4年=健大高崎)、そして4番の寺尾拳聖外野手(3年=佐久長聖)の3連打で2点を先制すると、その後も攻撃の手を緩めず11安打11得点。寺尾選手はこの日4安打4打点と大暴れし、打率を4割2分9厘まで上げて逆転首位打者も可能性も出てきた。「先制したいところで小沢さんが先制打を打ってくれたので自分も波に乗れました」と語り、リーグ戦中盤の不振から完全に復調した姿を見せた。また、左足の捻挫で離脱していた渋谷選手もこの日7試合ぶりに復帰し、早速ヒットを放つなど打線に厚みが増した。
小宮山監督、エースの奮投を称賛「期待以上の内容」2戦目フル回転も示唆
連盟創設100周年という節目の早慶戦、小宮山監督は「諸先輩方が積み上げてきたものがありますので、恥ずかしくない試合をしないといけない。早慶戦というのはそういうもんだという教育を受けて、入学してから4年間挑んでましたので。早稲田のアイデンティティだと思ってます。慶応がなければ、早稲田はこれだけの存在になっていませんから。気を抜かずに失礼のないように、そういう試合をしないといけない」と、伝統の一戦への特別な思いを語った。そして、「監督に就任してから、何度も痛い目に遭わされています。逆に、蛭間の逆転のホームランの時もそうですし、忘れられない春の最多失点、最大得点差での敗戦があったり、そういったものも含めて宿敵をいかにギャフンと言わせるかという思いでやってきましたので、今日も9回、もうそれ以上、取らなくていいよというぐらい打線がつながりました」と話し、早慶戦への強い気持ちについて話した。
そしてリーグ3連覇にも一歩ずつ近づいている。小宮山監督は「優勝の可能性が出てきて、この1週間は選手のやる気ががぜん、みなぎっているグラウンドだった。いい形で試合ができると期待はしていたが期待以上の内容。あしたにつながる勝利」と、投打がかみ合った快勝に手応えを感じていた。そして、「さあ、楽しくなってきた」と声を張り上げた。
伊藤樹投手 プロフィール
- 氏名:伊藤 樹(いとう たつき)
- 生年月日:2003年8月24日
- 出身地:秋田県
- 経歴:仙台育英高校 – 早稲田大学(4年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:177cm・84kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速152キロのストレートと切れ味鋭いスプリットが武器の右腕。2025年東京六大学野球春季リーグの早慶戦1回戦で先発し、8回2失点で今季6勝目、現役単独最多の通算19勝目を挙げる。5月19日の明治大学戦では史上25人目のノーヒットノーランを達成。仙台育英高校時代には1年夏、3年春に甲子園出場。早稲田大学では1年春からリーグ戦デビューし、3年夏には大学日本代表にも選出。リーグ通算19勝3敗、防御率1.88(2025年5月31日時点)。今秋ドラフト上位候補。






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