第74回全日本大学野球選手権大会では、北海学園大学(札幌学生)が上武大学(関甲新学生)を5-4で破り、1979年以来46年ぶりとなる歴史的白星を挙げた。この試合で、今秋ドラフト候補で大学日本代表候補にも選出されている最速159キロ右腕・工藤泰己投手(4年・北海)が先発したものの、4回途中4失点と苦い全国デビューとなったが、そのポテンシャルには視察したプロ球団のスカウトから高い評価が寄せられた。
“北の快腕”工藤泰己投手、全国デビューは155キロも制球に課題
全国の舞台で、その剛腕の片鱗を見せた。先発マウンドに上がった工藤泰己投手は150キロを超すストレートを次々と繰り出し、最速は155キロをマーク。しかし、「ブルペンの調子もよくて、球速も出ていてボールの質も良かったが制球に課題があった」と振り返る通り、初回、2回と先頭打者に四球を与えて失点。リズムに乗れないまま4回先頭にソロ本塁打を浴び、3回0/3をで4安打4失点でマウンドを降りた。「序盤で一気に取られたのが反省点。制球力をもっと磨かないと」と悔しさを滲ませた。
高校時代は木村大成投手(現ソフトバンク)と同期で、主に捕手や外野手だった工藤投手。大学入学後に本格的に投手に転向し、「野手投げ」だったフォームを改造。今春のリーグ戦で自己最速となる159キロを叩き出すまでに成長した。島崎圭介監督は「初めての全国大会で力も入っていた」とエースを思いやっていた。
千葉ロッテ、広島などスカウト陣は高評価「どの変化球も低めに投げきれる」
結果は厳しいものとなったが、バックネット裏に集結したスカウト陣の評価は揺るがなかった。特に千葉ロッテと広島のスカウトは、その能力を高く評価している。
千葉ロッテ・榎アマスカウトディレクター:「きょうは良くなかったが、真っすぐが強くて、どの変化球も低めに投げきれる。レベルが高い投手」
広島・苑田聡彦スカウト:「担当の評価は高い。スピードだけじゃなく、球のキレがある。スライダーも良かった」
159キロだけでなく、スライダーの変化も将来性を感じさせた。ストレートが動く点については評価は様々で、快速球で空振りを奪うというタイプではなく、右打者のインコースに155キロの食い込む球を投げてつまらせるという感じ。こういう投手は制球の状態が良くなかったり、調子によって球威が出ていないとこの日のようになる可能性があるが、好き嫌いはあるかもしれないが、評価は高い所になるのは間違いないだろう。
盟友・高谷舟投手も好救援!「2人でプロに」
エース降板のピンチを救ったのは、もう一人のドラフト候補、高谷舟投手(4年=札幌日大)だった。7回2死満塁の場面でマウンドに上がると、空振り三振でピンチを脱出。その後も2イニングを無失点に抑える完璧なリリーフを見せた。「絶対に抑えてやろうと思った。あの場面で投げさせてもらえたのはうれしかった」と振り返った。
この日、視察したスカウトからも高く評価されている。
阪神・葛西スカウト:「空振りが取れているし、内容も良かった。この投球を続ければ評価も上がる」
カージナルス・大慈彌功アジア統括スカウト:「春先に体調を崩していたので、やっと見ることができた。昨年から実績がある投手で、各球団注目していますよ」
中学時代の同級生でもある工藤投手と高谷投手。「2人でプロに行きたいと話している」と語る二人のライバル関係が、チームをさらに高いレベルへと引き上げる。
歴史的な勝利となったことに島崎監督は「OB含めて勝利を届けたいな、と思っていた。自分がリリーフして逆転負けしたことを覚えていますが、後輩たちが借りを返してくれた」と話し、34年前の自身の経験と重ね合わせ、歴史的1勝の喜びを噛み締めた。
工藤泰己投手 プロフィール
- 氏名:工藤 泰己(くどう たいき)
- 所属:北海学園大学(4年)
- 出身高校:北海高校
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 主な特徴や実績:最速159キロを誇るプロ注目右腕。2025年全日本大学野球選手権1回戦の上武大戦で全国デビューし、3回0/3を投げ4失点。ロッテ、広島など複数球団のスカウトから高い評価を受ける。大学から本格的に投手に転向。多彩な変化球を操り、ダルビッシュ有投手を目標とする。大学日本代表候補。
高谷舟投手 プロフィール
- 氏名:高谷 舟(たかや しゅう)
- 所属:北海学園大学(4年)
- 出身高校:札幌日本大学高校
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 主な特徴や実績:最速153キロのプロ注目右腕。2025年全日本大学野球選手権1回戦の上武大戦で7回2死満塁のピンチからリリーフ登板し、2回1/3を無失点に抑える好投。カージナルスの大慈彌アジア統括スカウトからも注目される。工藤泰己投手とは中学の同級生。






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