2022年のドラフト会議を振り返る「ドラフト総決算」、第2回目は12球団の上位指名について振り返ります。
12球団のドラフト上位戦略
12球団の過去5年間のドラフト1位指名選手とタイプ
過去5年間のドラフト1位指名選手を、高校or即戦力、ポジション別に示す。
○太字は現時点で1軍で実績を残していると見られる選手
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |
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日本 ハム |
×根尾昂 吉田輝星 高校生右投手 |
×佐々木朗希 ②河野竜生 即戦力左投手 |
伊藤大海 即戦力右投手 |
達孝太 高校生右投手 |
矢澤宏太 大学生外野手 |
中日 | ◎根尾昂 高校生内野手 |
③石川昂弥 高校生内野手 |
高橋宏斗 高校生右投手 |
ブライト健太 即戦力外野手 |
仲地礼亜 即戦力右投手 |
ロッテ | ◎藤原恭大 高校生外野手 |
④佐々木朗希 高校生右投手 |
×早川隆久 ②鈴木昭汰 即戦力左投手 |
松川虎生 高校生捕手 |
✕荘司康誠 菊地吏玖 即戦力右投手 |
広島 | ◎小園海斗 高校生内野手 |
森下暢仁 即戦力右投手 |
栗林良吏 即戦力右投手 |
×隅田知一郎 ×山下輝 黒原拓未 即戦力左投手 |
斉藤優汰 高校生右投手 |
楽天 | ×藤原恭大 ◎辰己涼介 即戦力外野手 |
×佐々木朗希 小深田大翔 即戦力内野手 |
④早川隆久 即戦力左投手 |
吉野創士 高校生外野手 |
◯荘司康誠 即戦力右投手 |
読売 | ×根尾昂 ×辰己涼介 高橋優貴 即戦力左投手 |
×奥川恭伸 ×宮川哲 堀田賢慎 高校生右投手 |
×佐藤輝明 平内龍太 即戦力右投手 |
×隅田知一郎 翁田大勢 即戦力右投手 |
浅野翔吾 高校生外野手 |
西武 | 松本航 即戦力右投手 |
×佐々木朗希 ②宮川哲 即戦力右投手 |
×早川隆久 渡部健人 即戦力内野手 |
◎隅田知一郎 即戦力左投手 |
蛭間拓哉 即戦力外野手 |
阪神 | ×藤原恭大 ×辰己涼介 近本光司 即戦力外野手 |
×奥川恭伸 西純矢 高校生右投手 |
④佐藤輝明 即戦力外野手 |
×小園健太 森木大智 高校生右投手 |
×浅野翔吾 森下翔太 即戦力外野手 |
ソフト バンク |
×小園海斗 ×辰己涼介 甲斐野央 即戦力右投手 |
×石川昂弥 佐藤直樹 即戦力外野手 |
×佐藤輝明 井上朋也 高校生内野手 |
風間球打 高校生右投手 |
イヒネイツア 高校生内野手 |
De NA |
×小園海斗 ◎上茶谷大河 即戦力右投手 |
森敬斗 高校生内野手 |
入江大生 即戦力右投手 |
◎小園健太 高校生右投手 |
松尾汐恩 高校生捕手 |
オリッ クス |
×小園海斗 太田椋 高校生内野手 |
×石川昂弥 ×河野竜生 宮城大弥 高校生左投手 |
×佐藤輝明 山下舜平大 高校生右投手 |
椋木蓮 即戦力右投手 |
曽谷龍平 即戦力左投手 |
ヤク ルト |
×根尾昂 ×上茶谷大河 清水昇 即戦力右投手 |
③奥川恭伸 高校生右投手 |
×早川隆久 ×鈴木昭汰 木澤尚文 即戦力右投手 |
×隅田知一郎 ◎山下輝 即戦力左投手 |
吉村貢司郎 即戦力右投手 |
北海道日本ハム
矢澤宏太選手は即戦力左腕投手でもあるが、フロントも新庄監督もメインは外野手と想定している。投手の指名が4年間続いていたが、新庄監督の意向も含めて外野手の1位指名となった。
また、昨年に西川選手、大田選手などを戦力外とし、近藤選手もFAの可能性があり、外野手の獲得は必須だったと見られる。ちなみに、以前も主力の糸井選手を放出するなど、割りと思い切って選手の入れ替えを行う傾向がある。
しかし新庄監督は、1位で矢澤選手を取れなかった場合は、高校生捕手の松尾汐恩選手の指名を予定していたと話した。浅野選手、蛭間選手は巨人、西武が1位指名を公表していたため、そのような選択を用意していたと思うが、阪神が1位指名した外野手の森下翔太選手ではなく、高校生捕手が外れ1位候補だったことは驚きもある。
無事、矢澤投手を獲得すると、2位では一番最初の指名で多くの候補が残る中、金村尚真投手を指名した。即戦力投手を指名すると決めていた感じもあり、即戦力投手の多くが1位指名で消えていく中で、公表のなかった菊地吏玖投手か金村投手と決めていたのではないかと思う。
中日
10月6日のスカウト会議で、中大・森下翔太外野手、東芝・吉村貢司郎投手、白鷗大・曽谷龍平投手、苫小牧中央の斉藤優汰投手、誉高・イヒネイツア内野手を1位候補としていたが、そこから他球団の1位指名公表が相次ぎ、次々と名前が挙がっていった。
その後、鷺宮製作所の小孫竜二投手、天理大の友杉篤輝選手、明治大の村松開人選手が上位候補として名前が挙がり、ドラフト前々日には東芝の吉村貢司郎投手、金村尚真投手(富士大)、仲地礼亜投手(沖縄大)の名前が挙がり、吉村投手が1番人気と話していたが、19日に仲地投手の1位指名を公表した。同じ日に東京ヤクルトが吉村投手の1位指名を公表している。
ポジションについては二遊間と投手を補強ポイントとして挙げており、最終的には即戦力投手を1位に選択、他球団の動向も踏まえて仲地投手を選択した。二遊間については候補選手が比較的多く、2位でも狙った取れると判断したのだろう。仲地投手の1位指名重複の可能性は低かったとみられるが、もし外した場合も金村尚真投手投手や小孫竜二投手など即戦力右腕の指名だったと見られる。
2番めに指名となった2位では守備の友杉篤輝選手、足の田中幹也選手などがいる中で、打撃のある村松開人選手を選んだ。打撃も求める立浪監督らしい選択となった。ちなみに、田中選手も6位で指名をしている。中日としては2位の候補として高く評価していたものの、6位でも残っていたので指名したという流れだろう。
千葉ロッテ
ドラフト1位指名は非公表も、中日と同じく二遊間と投手陣強化を課題としていたが、他球団が1位指名を公表していく中で、二遊間の選手は指名順の早い2位で取れると判断し、1位指名は即戦力投手の指名となった。
誰を指名するのかは情報が無く、事前の予想がバラけたが、立教大の荘司康誠投手を選択した。外しても菊地吏玖投手が残っている可能性は非常に高かったため、一番に評価した即戦力投手を指名したと見られる。154キロのストレートと沈む球で抑える将来性型の荘司投手と、変化球を織り交ぜた投球をする即戦力型の菊地投手ではタイプがかなり違うが、ともに実力のある大学生投手だった。
そして2位では、中日の指名を待った後に友杉選手を選択した。内野手の中で最も評価していた選手だろう。大学生NO.1の守備で来年から1軍でプレーできる選手を選んだ。
広島
鈴木選手の抜けた外野手や投手だけでなく、全体的に補強ポイントとなる中で、他球団が主に内野手、外野手の1位指名を公表し始めた事により、10月13日に高校生投手の斉藤優汰投手の1位指名を公表した。その時点でまだ曽谷龍平投手や吉村貢司郎投手などが公表されていなかったが、将来のエースを選択した。
2位でも即戦力投手の益田武尚投手や外野手の萩尾匡也選手、古川雄大選手、そして内野手でも内藤鵬選手などが残っている中で、内田湘大選手を選択した。強肩とパンチ力のある選手で、3拍子揃った内野手を選択したことで、将来を見据えたチーム作りで、喫緊の補強ポイントと見えた外野手ではなく、内野手を指名したことも面白い。
結果として3位で益田武尚投手を指名でき、外野手は7位で久保修選手を指名したが、外野手は優先順位は高くなかった。
東北楽天
今年は投手の補強に絞った東北楽天は、1位で荘司康誠投手の1位指名を公表し、競合となったものの見事に獲得した。そして2位でも金村尚真投手を高く評価しており残っていれば指名したと思うが、2位の一番最初に北海道日本ハムが指名したため、益田武尚投手や吉野光樹投手が残っている中から小孫竜二投手を指名した。3位も渡辺翔太投手など6人中5人が大学、社会人の即戦力投手とかなり偏った指名をしている。
ただし、東北楽天はこのように狙ったポジションを集中的に指名する傾向がある。また、昨年が高校生外野手の1位指名から始まり、素材型の野手を指名していたことを考えると2年トータルで見る必要もある。
ちなみに、東京ガスの益田投手は3位でも指名をしておらず、即戦力投手の中では順位付けは高くなかった。どの点でそのような順位付けになったのか聞いてみたい。
読売
2018年の辰己選手、2020年の佐藤輝明選手の指名や、梶谷選手のFAでの獲得など、外野手の補強と即戦力の先発投手の補強が最優先だったが、高校生ながら即戦力としても見ていそうな浅野翔吾選手を1位指名公表し、阪神と競合になったものの見事に獲得した。仮に抽選で外しても、中央大の森下翔太選手の指名が有力だったのではないかと思うが、金村尚真投手や、狙っていたものの2位で残っている可能性が低かった友杉篤輝選手の指名もあったかもしれない。
2位ではその友杉選手や即戦力投手が一通り指名されており、1位と同じ外野手の萩尾匡也選手を指名した。外野手の1位2位指名は非常に珍しく、積極的な指名といえる。二人共外野陣を埋める実力があり、これで外野手の不安はかなり軽減したように思える。
埼玉西武
外野手が固定出来ずに苦しみ、地元出身で埼玉西武ライオンズジュニアでもプレーし、俊足で左打者とすべてに補強ポイントと合致していた蛭間拓哉選手を1位指名公表した。俊足の選手でもある。
そして2位でも、まだ即戦力の投手や内野手の林琢真選手などがいる中で、古川雄大外野手を指名し、巨人と同じく外野手の1位2位指名となった。外野手の補強にこだわりを持っていたのと、古川選手の能力を評価したものだろう。
ちなみに3位でも高校生捕手を指名し、投手の指名は4位の青山美夏人投手と5位の山田陽翔選手のみ。6位で守備の良い児玉亮涼選手を確保しており、二遊間も補強ポイントだったようだが、来年と将来を見据えた指名となった。
阪神
阪神は前日に監督が1位指名候補選手を紹介され、前日か当日に1位指名を決めるのが慣例となっており、1位指名の公表はドラフト会議の直前に行われた。しかし浅野翔吾選手を指名したものの縁がなく、森下翔太選手を指名し、外野手の指名となった。
他球団が1位指名を次々と公表する中で、森下選手が残っていると予想出来たことからの競合だった。
また2位では左腕投手がここ数年の補強ポイントとなっていたものの、高校生の門別啓人投手を指名、外れ1位で消えるかもと予想していた。3位でも高校生外野手の井坪陽生選手と、巨人、西武と同じく外野手の補強にこだわった。
そして岡田監督が就任し、来年の優勝を目指している中で即戦力の多い指名になるかと見られたが、1位から5位まで高校生の各ポジションの選手を指名し、フロントが主動する育成のチームづくりの路線は変わらなかった。
福岡ソフトバンク
育成路線を貫く福岡ソフトバンク、今年も1位で素材型のイヒネイツア選手を獲得、かなり早い段階で公表をしており、1位候補にあげていた中日や、早くから狙っていたと見られる横浜DeNAをけん制した。公表していなければ競合になった可能性もある。
そして2位は社会人投手の大津亮介選手を指名、藤本監督が即戦力投手の獲得を要望する中でそれに応えた形だが、吉野光樹投手や益田武尚投手に比べるとまだ将来性の部分を残している投手で、自前で育成したいという球団の思いが見える。
横浜DeNA
1位指名候補を5人にして当日を迎える中で、大阪桐蔭の松尾汐恩捕手を選択した。捕手は補強ポイントでもあり、育成施設DOCKの完成もあり、昨年の小園投手からやや育成を意識した路線になっているが、その流れを組む。ただし、昨年に千葉ロッテが1位指名した高校生捕手の松川選手が1年目の早い段階で1軍の戦力となったことからも、松尾選手にもその期待は寄せているように見える。
ただし、他球団が1位指名を公表していたら、松尾選手を最初に指名したかは確定的ではなく、高く評価していたイヒネ選手や松尾選手、または俊足の左の外野手として矢澤選手や右の先発候補の吉村投手の指名も合ったかもしれない。
2位ではその即戦力右腕の吉野光樹投手を指名、3位で即戦力内野手の林選手を指名した。5位の橋本達弥投手も含めて、三嶋投手が病気となり、リリーフの山崎選手の動向に注視するなど、リリーフ陣を意識した形となった。
オリックス
今年のドラフト候補で唯一の即戦力左腕投手といえる曽谷龍平投手を公表し、記帳なポジションということで他球団も競合してもいくかどうかをかなり悩んだと思うが、単独1位指名をなったのは大成功だった。
2位ではこちらも高く評価していた内藤鵬選手を指名した。この指名の前にやや時間が空いたのは、内藤選手が残っているのを想定していなかったか、同じく高く評価していた西村瑠伊斗外野手、そして即戦力右腕の益田武尚投手と迷ったのか、それとも直前に指名された吉野光樹投手を狙っていたのか。3位で即戦力投手を指名しなかった事からも、西村選手と迷ったのかもしれない。
東京ヤクルト
昨年日本一で、今年もリーグ連覇したものの、先発投手で抜きん出て成績の良い投手がいなかったため、即戦力投手を補強ポイントとした。ドラフトの前日に、一度は公表しないとしながらすぐに吉村貢司郎投手の指名を公表するなど、まだ非公表だった千葉ロッテ、阪神、DeNAの動きを牽制した形で、それが功を奏したか単独1位指名に成功した。
2位は一番最後の指名ということで誰が残っているかわからない中、外野手の西村瑠伊斗選手が残っており指名をした。3位でも沢井廉選手を指名しており、青木選手がベテランとなる中で、塩見選手、山崎選手と外国人選手が守る外野陣に不安を感じていたのが見える。
昨年もドラフト2位で丸山選手を指名しており、その危機感はかなり高いものだったことを認識した。ちなみに、5位でもスラッガータイプの内野手・北村恵吾選手を指名しており、長期契約をしたものの成績を落とした山田選手と対抗するものでもあり、沢井選手と北村選手の指名で村上選手の前後を固めるだけでなく、村上選手のメジャー移籍がかなり早くなることも想定してということあるかもしれない。





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