全国高校野球選手権の甲子園大会は7日目、山梨学院が聖光学院(福島)に6-2で勝利し、9年ぶりの夏1勝、そして同校初の3回戦進出を決めた。この試合では、2年生で194cmから最速152キロの速球を投げる来秋のドラフトの目玉・菰田陽生投手が甲子園初先発し、6回まで無安打に抑える快投で勝利に貢献した。ネット裏に集結したプロ球団のスカウトもそのポテンシャルの高さを高く評価している。
「8割くらいの出力」で147キロ&6回ノーノー
センバツで152キロを記録した菰田陽生投手だったが、この日は甲子園初先発ということで、「少しでも長いイニングを投げるために、8割くらいの出力でした」と話した。194cmの長身から投げ下ろすストレートは最速147キロだったが、6回まで聖光学院打線を1四球と味方の2失策のみに抑える完璧なノーヒットピッチングを披露した。
7回に先頭打者に初安打を許し、同点タイムリーを浴びたところで降板となったが、自己最長となる6回1/3を投げて2安打1失点。「ここまで投げられたのは、ひとつの成長だと思います」と、確かな手応えを掴んだ。相手の5番打者も「高めの真っすぐの威力が想像以上で、とらえたと思ってもファウルになりました」と、その球威に脱帽した。
山梨大会ではリリーフで4イニングを投げたのみ。聖光学院の斎藤智也監督は「山梨学院の先発は檜垣くんを予想していた。菰田くんがきたというのは想定外だった。うちの選手はスピードボールには対応できるが、菰田投手の角度と球筋が独特で最後までストレートを打つことができなかった」と話すと、山梨学院の吉田洸二監督も、「聖光学院は投手を分析して攻略するのが得意なので、相手にマークされていないであろう菰田をジョーカーとして起用した」と話し、見事に狙いが的中した。
中日「来年の上位候補」巨人「一段階レベルが上がっている」
この日の投球には、視察したプロのスカウトも賛辞を惜しまなかった。
中日・松永スカウティングディレクター:「前でボールを離せるので、スピード以上にバッターがさされている。力がある球には、バッターも力で押し負けて内野ゴロになり、きちんと捉えきれていなかった。来年のドラフト上位候補になると思う。体が大きく、ボールに角度があっていい。まだまだ伸びしろもある」
巨人・榑松スカウトディレクター:「強弱を付けながら打たせて取るピッチングができていた。春と比べて一段階レベルが上がっている感じがして、このまま順調に成長すれば、来秋のドラフト候補になると思う」
北海道日本ハム・坂本スカウト:「来年のドラフトの目玉になるでしょう。二刀流をやりきってほしい」
二刀流の進化は続く「もう一つ成長した姿を」
今春のセンバツで152キロをマークし、一躍全国にその名を知らしめた山梨の怪物。山梨大会中にセットポジションからノーワインドアップにフォームを変更したことで、「体重が乗り、勢いがついた」と、この夏中も進化を遂げた。
球速147キロというのはもちろんすごいのだが、近年は高校生の打者も球速に対応した打撃ができるようになっており、以前のように球速だけで抑えられる投手はほとんどいなくなっている。その中で、決め球となる変化球を持つことで、相手を抑えることができるのだが、この日の菰田投手は変化球や制球力では、同じく2年生で、ここの甲子園で完封勝利を挙げている横浜・織田翔希投手や沖縄尚学・末吉良丞投手のレベルには届いていない。しかし、それでも147キロのストレートでも抑えることができるのは球速とは別の何かで、リリースの近さだろう。
もちろん、今後は常時150キロ超の球を投げ、制球された球、そして変化球を磨くことでどんどん上がっていく投手だが、このリリースの特徴を持って行ければ、唯一無二の投手として活躍して行けるだろう。
二刀流として打撃のほうでは、この日は「7番・投手」として出場し、打撃では3打数無安打に終わったが、「まだこの舞台に立てるので、もう一つ成長した姿を見せられたら。打席でも打てるように頑張ります」と、次戦での打での活躍も誓った。憧れの大谷翔平選手のように、投打で聖地を沸かせる。
菰田陽生投手 プロフィール
- 氏名:菰田 陽生(こもだ はるき)
- 生年月日:2008年12月21日
- 出身地:千葉県御宿町
- 経歴:御宿少年野球クラブ(小1) – 千葉西リトルシニア(御宿中) – 山梨学院高校(2年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:194cm・100kg
- ポジション:投手、一塁手
- 主な特徴や実績:来秋ドラフトの目玉候補とされる最速152キロ二刀流。2025年夏の甲子園2回戦で公式戦初先発し、6回まで無安打、6回1/3を1失点と好投。中日、巨人など複数球団のスカウトから高い評価を受ける。高校通算25本塁打。兄は上武大学の菰田朝陽選手。憧れの選手はドジャース・大谷翔平。














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