侍ジャパンU18代表はこの日、第32回 WBSC U-18ベースボールワールドカップのスーパーラウンドでパナマと対戦し、先発した創成館の森下翔太投手が、8回途中まで1安打11奪三振、無四球という圧巻の投球を披露した。夏の甲子園から続く自身の連続無四死球記録を33回1/3まで伸ばす快投で、チームの劇的なサヨナラ勝ちと決勝進出へ導いた。
魂の90球、圧巻の1安打11奪三振
夏の甲子園でその力を見せていた創成館の森下翔太投手が、この日のパナマ戦でその真骨頂を示した。初回、先頭打者に三塁打を浴び、いきなり1点を失ったものの、その後は圧巻の投球を展開する。伸びのあるストレートは低めのコーナーに決まり、ストライクゾーンをかすめるスライダーで、相手打線の空振りを奪った。
2回以降は一人の走者も許さない完璧な内容で、パナマ打線を完全に手玉に取った。タイブレークに突入した8回、2アウトを取ったところで降板となったが、7回2/3で90球を投げて許した安打は初回の一本のみ。11個の三振を奪い、四球はゼロだった。
侍ジャパンは6回に同点に追いついたが、8回に森下投手が降板すると、奥村頼人投手、辻琉沙投手の制球が定まらずに四死球で4点を失った。しかし、侍はその裏に横浜高校トリオの阿部葉太選手、奥村凌大選手、為永皓選手の横浜高校トリオが3連続タイムリーヒットで4点を奪い返した。その勢いで延長9回にサヨナラのスクイズで勝利し、侍ジャパンは見事に1位で決勝進出を決めた。
小倉全由監督も「森下があれだけ投げてくれてて、もう本当良かったですよね」とその快投を絶賛した。
33回1/3連続無四死球を支える「精密機械」にソフトバンクスカウト部長も評価
この日の快投に、森下投手自身も「まっすぐをコースに集めていたところと、カーブで緩急をつけられたところが、世界に通用したと思います」と大きな手応えをつかんだ。
夏の甲子園に出場を決めた時は、阪神の森下翔太選手と同姓同名で、甲子園で森下翔太がプレーするというような話題が先行してきた。しかし、夏の甲子園の開幕戦で9回6安打13打奪三振1失点で無四球の完投勝利を挙げると、続く神村学園戦では7回からリリーフで登板し、3回2安打1奪三振無四球で無失点に抑え、九州チャンピオンを倒した。3回戦の関東第一戦では8回1/3を投げて11安打で4失点し敗れたものの無四球を続けた。
その投球で、今や森下翔太と言う名を、阪神の選手と同姓同名という話題は聞かれなくなった。「精密機械」と評される制球力で、今大会も開幕のイタリア戦とこの日をあわせて13イニングで無四球となり、、夏の甲子園初戦から続く連続無四死球イニングを「33回1/3」まで伸ばしている。「3ボールになっても絶対に四球は出したくない。ヒットを打たれてもいいと思って投げている」と、四球を絶対に出さないという強い思いが結果を生んでいる。
この日、視察した福岡ソフトバンクの永井智浩編成育成本部長兼スカウト部長も、「指先の感覚がいいのはもちろん、バランスの取り方がうまい。それがボールにも生きている」と評価を示した。
素晴らしい高校最後の夏を、次はベンチから連覇を後押し
大会規定により、76球〜90球を投げた投手は、中3日の休養日を取らなければならず、あと2日の今大会で、森下投手の投球はこれが最後となる。「最後と分かっていたので悔いがないように投げようと思った。回を追うごとに腕が振れるようになった」と話した。
「チームに勢いをもっていくピッチングができた」と話す。一足早く、高校野球での最後の登板となった森下投手だが、その投球は高校3年間の森下選手の成長そのものだった。
侍ジャパンは決勝進出を決め、再び強力投手陣のアメリカと対戦する。投げることはできないが、ベンチから全力でサポートする。「世界一をとって2連覇をしたいと思います」。侍ジャパンの連覇へ、森下投手のこの日の熱投は、石垣元気投手をはじめ、他の投手にも十分伝わっているはずだ。
森下 翔太 プロフィール
- 氏名:森下 翔太(もりした しょうた)
- 所属:創成館高校 3年
- ポジション:投手
- 投打:右投
- 主な特徴や実績:「精密機械」と評される抜群の制球力が武器の本格派右腕。U-18 W杯パナマ戦で7回2/3を1安打11奪三振無四球の快投。夏の甲子園から33回1/3連続無四死球を記録した。ヒールアップ投法から安定した投球を見せる。






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