全国高校野球選手権の甲子園大会4日目では、今春のセンバツ王者・横浜(神奈川)が敦賀気比(福井)に5-0で快勝し、1998年の松坂大輔(元西武ほか)を擁して以来27年ぶりとなる春夏連覇へ好発進した。来秋のドラフト候補、2年生右腕の織田翔希投手が7安打12奪三振で完封勝利。横浜の2年生投手が夏の甲子園で完封するのは史上初の快挙。打っても先制のタイムリー三塁打を放つなど、投打にわたる活躍で聖地を沸かせた。
「夏投げてこそ本物」雨の中断にも負けず127球の熱投
「夏、投げてこそ本物。1回から9回まで幸せなマウンドでした。100%楽しめました」。試合後、織田翔希投手は満面の笑みで聖地のマウンドを振り返った。今夏初先発となったマウンドで、その言葉通りの圧巻の投球を披露した。最速149キロをマークした伸びのあるストレートと、カーブ、チェンジアップを巧みに操り、敦賀気比打線から12個の三振を奪った。
4回には突然の豪雨により、試合が1時間7分中断するアクシデント。しかし、「体を冷やさないように」と万全の準備で再開を待った右腕は、直後の5回に1死満塁のピンチを招くも、レフトに入っていたエースの奥村頼人投手(3年)の本塁への好返球にも助けられ、無失点で切り抜けた。「困難なイニングを乗り越えることができ、一つ成長につながった」と、この中断もプラスに変えた。
7回を終え、村田浩明監督から交代を打診されたが、「約束を果たしていないのでまだ投げさせてください」と続投を志願。最後までマウンドを守り抜き、横浜の2年生としては夏史上初となる快挙を成し遂げた。
「松坂さんを超えるんだろ?」監督の檄と大先輩からの金言
この日の完封の影には、偉大な大先輩の存在があった。試合終盤、疲れからか気の弱さを見せた織田投手に対し、村田監督は「3年生が頑張っているのに、お前がしっかりしないと。松坂さんなんて200何球投げて次の日投げて、弱さなんか一つも見せてないぞ。松坂さん超えるんだろ?」と檄を飛ばした。その言葉で、右腕は目を覚ました。
神奈川大会前には、その松坂大輔氏と対面する機会があった。「自分に一番必要なことは視野を広くすること。視野を広げることでさまざまなことに気づけるようになる」という金言を授かり、この日も「周りに声をかけられたし、周りからの声も耳に入っていたので視野を広げることは実現できた」と胸を張った。その松坂氏もこの日、テレビの取材で甲子園を訪れており、「投げながら自分の状態を把握し、その時にできる最善の投球をしました。こんなマウンドさばきを2年生ができるとは恐ろしいな」と、後輩の快投を絶賛した。
小学生時代の誓い「いつか勝負をするためにここに来る」
北九州市出身の織田投手にとって、甲子園は特別な場所だ。小学生の時、チームメイトと初めて甲子園を訪れた際、友人たちが記念グッズを買い求める中、一人だけ店に入らなかったという。「僕はグッズ、買わなくていい。いつか勝負をするために、ここに来るから」。その固い誓いを、有言実行の快投で果たした。
打っても2回にセンターフェンス直撃の先制タイムリー三塁打を放つなど、投打で躍動。「バッティングも見ててください」と語っていた通り、その非凡な野球センスでチームを勝利に導いた。春夏連覇へ、横浜にまた一人、頼れる“怪物”が現れた。
織田翔希投手 プロフィール
- 氏名:織田 翔希(おだ しょうき)
- 生年月日:2008年6月3日
- 出身地:北九州市
- 経歴:足立小(1年) – 足立中学校(軟式野球部) – 横浜高校(2年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:185cm・76kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速152キロを誇る2年生右腕。2025年夏の甲子園1回戦で7安打12奪三振の完封勝利。横浜高校の2年生投手による夏の甲子園での完封は史上初。打っても先制タイムリー三塁打を放つ。今春のセンバツ優勝に貢献。
















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