全国高校野球選手権大会は、来年のドラフト戦線を間違いなく牽引するであろう、怪物2年生が、甲子園に主役となっている。今春センバツ王者の横浜(神奈川)は最速152キロ右腕・織田翔希投手が完封し17年ぶりのベスト8に、そして、沖縄尚学は最速150キロ左腕・末吉良丞投手が2年ぶりの8強に導いた。
横浜・織田翔希投手、胃腸炎も志願の106球!松坂超えの夏2年生初・2度目完封
「3年生とまだまだやりたいので僕は投げます」「監督信じてください」。試合前のホテル、織田翔希投手は村田浩明監督に先発を直訴した。2日前の夜から食あたりとみられる胃腸炎に襲われ、前日の練習を欠席。当日も万全とは言えず、チームバスとは別の車で球場入りするほどだった。それでも、エースの自覚が弱音を許さなかった。
そのマウンドは、まさに圧巻だった。自己最速に迫る151キロを計測したストレートを軸に、津田学園(三重)打線を5安打5奪三振。106球の省エネ投球で、今大会2度目の完封劇を演じた。「野手の方にも支えられての勝利です。球数を減らすためにストライク先行で、打たせて取ることを意識しました」と、7回の1死満塁のピンチを遊ゴロ併殺で切り抜けるなど、クレバーな投球も光った。
8回を終え93球。指揮官が交代を打診すると、「絶対、代えないでください」と今度は続投を志願。「周りの選手を温存して、自分が犠牲になっても勝ちにこだわりたい」。その熱意に、村田監督も「お前、俺を超えたな。負けたよ」とその熱意に脱帽。試合後、織田投手は「夏投げられてこそ本物。本物のピッチャーになって帰ってきました」と胸を張った。
横浜高校の2年生投手が夏の甲子園で2度完封するのは、あの松坂大輔でも成し得なかった史上初の快挙。偉大なOBも「こんなマウンドさばきを2年生ができるとは恐ろしいな」と、後輩の快投を絶賛した。
沖縄尚学・末吉良丞投手、169球の熱投!仙台育英との死闘制す
魂を揺さぶるような投げ合いを、2年生左腕が制した。沖縄尚学の末吉良丞投手は、仙台育英(宮城)との3回戦で延長11回を投げ抜き、9安打3失点、12奪三振。自己最多となる169球の熱投で、チームを2年ぶりのベスト8へと導いた。
仙台育英の3年生で、プロも注目する147キロエース・吉川陽大投手(3年)との左腕対決。「投げ合いでは絶対に降りたくない」と燃えた。3-3で迎えた延長10回裏、タイブレークで1死満塁のサヨナラ負けのピンチを招くも、「バントするものならやってみろ」と強気に内角を攻め、スリーバント失敗とライナーで切り抜ける。その気迫が、直後の11回表の勝ち越し2点に繋がった。
「競ったゲームで自分がどれだけ崩れないかが鍵と思っていた。自分のピッチングを生かせるように、しっかり投げ込んでいきました」。今春のセンバツで横浜に敗れた悔しさをバネに、下半身を徹底的に強化。その成果が、169球を投げ抜くスタミナと、ピンチでも動じない精神力を生み出した。これで甲子園通算30勝を達成したチームの、新たな歴史を担う。「夏のてっぺんを獲れるように頑張りたい」。琉球のドクターKが、頂点を見据える。
2年生が主役に
この夏の甲子園は、3年生で主役になると見られていた健大高崎の石垣元気投手や神村学園の早瀬朔投手、未来富山の江藤蓮投手が初戦で姿を消し、その後はこの織田投手、末吉投手や山梨学院の菰田陽生投手のBIG3がベスト8に勝ち進み、名実ともにこの夏の主役に立った。
怪物2年生の夏、結末はどうなるのか。8強からの戦いからも目が離せない。
織田翔希投手 プロフィール
- 氏名:織田 翔希(おだ しょうき)
- 生年月日:2008年6月3日
- 出身地:福岡県北九州市
- 経歴:足立クラブ(足立小1年) – 足立中学校(軟式野球部) – 横浜高校(2年)
- 投打:右投右打
- 身長・体重:185cm・76kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速152キロを誇る2年生右腕。2025年夏の甲子園で2度の完封勝利。横浜高校の2年生投手としては夏史上初の快挙。今大会23回2/3連続無失点中。甲子園通算6勝。憧れの投手は松坂大輔。
末吉良丞投手 プロフィール
- 氏名:末吉 良丞(すえよし りょうすけ)
- 生年月日:2008年11月18日
- 出身地:沖縄県浦添市
- 経歴:仲西ヴィクトリーBBC(仲西小2年) – 仲西中学校(軟式野球部) – 沖縄尚学高校(2年)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:175cm・89kg
- ポジション:投手
- 主な特徴や実績:最速150キロを誇る2年生左腕。2025年夏の甲子園3回戦で仙台育英相手に延長11回169球を投げ抜き3失点12奪三振で完投勝利。沖縄県勢として夏の甲子園での2桁奪三振&1-0完封は史上初。パドレス・松井裕樹投手を参考にしたスライダーが武器。




















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