明治神宮野球大会の決勝が11月19日に行われ、青山学院大学(東都大学野球連盟)が立命館大学(関西五連盟第二代表)を4-0で下し、史上6校目となる大会連覇を達成した。この試合で先発した中日ドラゴンズのドラフト1位、中西聖輝投手(4年・智弁和歌山)は、圧巻の17奪三振、2安打完封勝利を挙げ、学生野球生活の最後を最高の形で締めくくった。
7回2死までノーヒット、江川卓に並ぶ「決勝の伝説」へ
神宮の杜のマウンドに、エース・中西聖輝投手が輝いた。満を持して登場したエースは初回からエンジン全開。最速148キロの直球と鋭く落ちるフォークを武器に、4者連続三振という絶好のスタートを切った。
「今日は行けるな、と思いました」。その言葉通り、立命館大打線を寄せ付けない投球を展開。7回2死まで無安打に抑える「ノーヒットノーラン未遂」の快投を見せた。安打を許した後も弱ることはなく、最後も連続三振を重ねた。終わってみれば9回127球を投げ抜き、被安打わずか2、与四死球2、そして奪った三振は実に17個。決勝での2桁奪三振完封勝利は史上3人目の快挙であり、2年連続の決勝勝利投手は元巨人・江川卓氏(法政大)ら以来、史上4人目という歴史的なパフォーマンスだった。
「普段しない配球」で翻弄、女房役・渡部との絆
この日の快投の裏には、冷静な分析と修正力があった。中西投手は「相手が真っすぐを張ってきていたので、今日は変化球主体の投球にした」と語るように、直球狙いの相手打線に対し、あえて変化球を多投する「普段しない配球」で翻弄。左右に曲がるスライダーでタイミングを外すと、16日の初戦では不調だったフォークを見事に修正し、次々とバットに空を切らせた。
そして、そのエースを援護したのが、智弁和歌山高時代からの女房役・渡部海捕手(3年)だ。0-0で迎えた6回、1死二、三塁の好機で値千金の先制3ランを左翼席へ叩き込んだ。試合終了の瞬間、マウンド上で抱き合った二人。中西投手は「扇の要にふさわしい。今まで組んできたキャッチャーの中でやっぱり一番」と最高のパートナーを称えた。
春の涙を笑顔に、安藤監督も感涙「竜の希望」へ
今春の全日本大学選手権では準決勝で敗れ、人目もはばからず涙を流した中西投手。「泣きたくない。悔しい思いをしたくない」という強い反骨心で成長を遂げ、最後の最後で最高の結果を残した。優勝インタビューで涙を流した安藤寧則監督は、「本当の集大成として投げ込んでくれた。人間的にも投手としても成長してくれた4年間だった」とエースを最大級の賛辞で送り出した。
中西投手には「勝」の一文字がふさわしい。ネット裏やSNSでは、早くも中日ファンから「竜の希望」と歓喜の声が上がっている。大学4冠、リーグ6連覇、日米大学野球でも先発して勝利するなど、大学生投手としてはこれ以上のない活躍をみせてきた右腕だが、ドラフト会議前はその活躍ほど評価が上がらず、ドラフト会議でも単独1位指名だった。
しかし神宮連覇、この決勝の投球で、やっぱり大学N0.1は中西と証明してみせた。「勝てる投手」の称号を手に、黄金ルーキーがプロの世界へ堂々と乗り込む。
中西聖輝 プロフィール
- 氏名: 中西 聖輝(なかにし・まさき)
- 所属: 青山学院大学(4年)
- 出身: 智弁和歌山高等学校
- ポジション: 投手
- 投打: 右投右打
- 身長・体重: 182cm、92kg
- 主な特徴や実績: 最速152キロの直球と多彩な変化球を操る本格派右腕。智弁和歌山高時代に甲子園優勝投手となり、青学大でもエースとしてリーグ6連覇、神宮大会連覇、全日本大学選手権優勝などに貢献。2025年ドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受ける。






















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