日大山形は9回、先発し8回まで無失点を続けてきた斎藤堅史投手が4連打を浴びて1失点し、尚もノーアウト満塁のピンチで、荒木監督は迷わず滝口琉偉投手をマウンドに送った。
ノーアウト満塁
高校野球で9回に突然崩れることは、これまでもこの夏も何度も見られた場面だった。個人的に9回の壁と読んでいるが、その壁を越えられずに敗れたチームも少なくない。
しかし、滝口琉偉投手はその壁を力で抑え込んで越えることができる、数少ない投手だった。山形大会でも決勝の東海大山形戦でピンチで登板して抑えきると、7-9と2点差の9回も、マウンドで堂々とストレートを投げ、あっさりと壁を乗り越えていた。
この日も、1-4と3点差のノーアウト満塁の場面だったが、初球に低めに145キロのストレートを投げた。ストライクの度胸満点の球だった。少しスライダーが高めに上ずったものの、ストレートが常時145キロ以上を記録した。スライダーも小さく鋭く曲がる軌道で、空振りを奪えた。
2つの三振を奪って最後のバッター、147キロを記録したストレートやスライダーで追い込むと、最後はマウンド上で何度の首を振り、選んだ球は145キロの外角ストレートだった。球がわずかにカット気味に動き、空振りを奪った球はミットに収まった。ノーアウト満塁からの三者三振の13球は、一言では表せないような投球だった。
「5回から準備していたけど、まさか無死満塁とは。」と話したものの、「自分が抑えるという強い気持ち。集中した投球ができました。凄く投げやすい球場でした」と甲子園のマウンドについて話した。
150キロを出したい
滝口投手は182cm82kgの選手で、遠投115mに50m6.0秒の強肩俊足の外野手としてプレー、肩の強さを生かして登板もし、146キロの速球を投げていた。
しかし、昨年12月に右肘の手術を受け、3ヶ月は投球できない状況となった。それでも「自分の体を見つめ直す期間になったと思います」と体幹と下半身を鍛えていくと、制球が安定し140キロ中盤の球を思い切り投げても、ストライクを取れるようになった。
「これから、どんどん強い高校と当たるけど、シビれる場面でも強気の投球ができれば。甲子園で150キロを出したい気持ちはあります」と話す滝口投手、この試合で多くの人に名前が知れ渡ったことは間違いなく、将来を大きく広げる投球となった。
ストレートの力にスライダーのキレもそうだが、何よりも初球のストライクや最後のストレート、そして甲子園の大舞台でもさらに力を発揮する度胸に、非常に可能性を感じさせる。マウンド上でもふてぶてしくも感じさせるが、その表情も見ているものに何かを与えるものがあり、プロでも印象に残る投球を見せてくれ、ファンの多い投手になりそうだと感じさせる。

2度も首を振った。滝口が選んだのは、一番自信を持つ直球。145キロを外角に投げ込み、最後の打者から空振り三振を奪った。圧巻の3者連続三振。絶体絶命のピンチを力に変えた13球だった。
「5回から準備していたけど、まさか無死満塁とは…。でも、自分が抑えるという強い気持ち。集中した投球ができました。凄く投げやすい球場でした」。右腕はそう振り返り、甲子園に感謝した。



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