広陵・河野佳投手の150キロ完封までのストーリーと、投球の良かった点

広陵高, 河野佳

広陵の河野佳投手が八戸学院光星戦で先発すると、初回に150キロを記録して三振を奪う。その後は素晴らしいピッチングの組み立てで9回を投げ切って、126球、3安打8奪三振で完封勝利を挙げた。四死球は4つ。広陵・河野佳投手のスカウト評価(6球団)「候補に入ってくる」

河野投手のストーリー

甲子園の高校野球ファンが河野佳投手を見たのは、初めてではないはずで、昨年夏の甲子園でも初戦の二松学舎大付戦で、劣勢の8回に登板し1回を1安打1奪三振で無失点に抑えている。その時の球速は142キロだった。

河野投手は、その前の昨年4月に、中井監督から投手クビを宣告されたことがある。1年生の冬に「だめだから。とにかく速い球を投げたがる」と投手クビを言い渡され、そこから2か月間は野手として練習をした。そして一度は投手に復帰を許されたが、昨年4月に投手クビを言い渡された。そして2週間を野手として練習をしたものの、投手としてあきらめきれず、河野投手は「最後まで投手をやらせてください」と監督に涙の訴えをした。中井監督は「泣くくらい投手がやりたいなら、頭を使って投手をしろ」と話し、投手に復帰させた。

それでもこの日の150キロの道のりは簡単ではなかった。制球を意識するあまり、球速は120キロまで落ち込んだ。それでも先輩・森悠祐投手からのアドバイスや仲間からの励ましがあり、夏の甲子園では142キロを記録するまでになると、秋は同学年で140キロを超す球を投げる石原勇輝投手、森勝哉投手と競い合い、トレーニングを続けて148キロを記録、中国大会で背番号1を手にして、このセンバツに、そして150キロに繋げた。

中井監督は、投球時に噛む力が強すぎて歯を痛める事が多く、練習時もティッシュを噛んで投げていた河野投手に、大会前にマウスピースをプレゼントしていた。河野投手も「つけるようになってから調子いいです」と話し、この日の投球を生み出した。そしてこの日の試合後、中井監督は「クビにしようと思ったことを謝ります」と話した。

短いイニングも長いイニングも

高校野球で力のある投手は、まだ体力のある初回に自己最速を狙ってくる事が多い。河野投手も初回に思い切り投げて球速がどのくらい出るかを狙っていた。「出そうと思っていなかったけど」と話したものの、「初回に150キロが出てほっとした。そのおかげで途中から7,8割の力で投げることができた」と話す。

初回には146キロの外角低めの球を投げており、低めへの伸びのある球が、河野投手の持ち味だと思う。しかし2回以降は球速を130キロ前半から140キロ前後に抑え、スライダーと、やや沈むチェンジアップに近いシュートを覚えた。前日の石岡一・岩本大地投手のように、まずは変化球から入って2ストライクに追い込んでから、ストレートでスバッと攻めた。

力を抑えながら投げた事もあり、最後まで安定感を見せた。それでも9回は疲れから球の力が落ちたが、最後はファーストライナーに抑え、9回を抑えきった。9回3安打8奪三振4四死球で無失点、見事な完封勝利だった。

河野投手の評価

河野投手はリリーフで登板することが多かったが、初回の投球を見るとリリーフでも150キロ級の球を連発しそう、しかし、先発として変化球や制球に安定感を見せられ、プロのスカウトからは、広陵OBで広島・野村祐輔投手の名前が挙がった。投手としてのクビ宣告はもうないだろうが、今度は良い意味で先発として投げたいか、リリーフとして投げたいかという判断が出てきそうだ。

先発ならば、8割くらいの力でも140キロを常時続けられるようになり、試合の6回、7回でも、ここぞという所では145キロ超の球で抑え込むような投球を見せたい。現時点ではドラフトの指名の可能性が高くなったという所で、その投球が夏までに見せられれば、ドラフト2位前後での指名という事になってきそうだ。

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実は2度も「投手クビ」を言い渡されていた。不振で制球力も球速も落ち、身長1メートル74と大きくない――。指揮官から1年冬に2カ月、2年の4月に2週間、野手転向を命じられた。それでも投手をあきらめきれず、涙ながらに復帰を直訴。憧れだという楽天・則本昂のようなダイナミックなフォームを意識し、体の使い方を変えたことで球速が飛躍的に向上した。中井監督は「クビにしようと思ったことを謝ります」と笑いエースを称えた。

河野についてヤクルト・橿渕スカウトグループデスク
「うちのスピードガンでは148キロ。小川(171センチ)がいるように、身長がどうかだけでという見方はしないので球の力とか評価していく」

オリックス・長村球団本部長
「うちの山岡と背丈は同じくらいだとしても横(体重)はあるだろう。スピードそのものより切れの良さを感じる」

阪神・山本スカウト
「このぐらいのスピードは出ると思っていた。スライダーも切れている。今後も見ていきます」

かむ力が強いあまり、2月下旬には右の奥歯が痛むアクシデントにも見舞われた。虫歯ではなかったが、あまりの痛さに「ティッシュを詰めて投げていた」ほど。この日は中井監督からプレゼントされたマウスピースを初めて着用。口の中の“快適さ”も快投につながった。「次も低めに集めて完封します」。

制球を意識し過ぎるあまり120キロ台まで落ちていた球速は、体を大きく使う意識とトレーニングで徐々に改善。石原勇輝投手(3年)、森勝哉投手(3年)のライバルと切磋琢磨(せっさたくま)することでも成長曲線は上昇カーブを描いた。昨秋の中国大会で背番号「1」を手に入れ、今大会初戦で大仕事をやってのけた。


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