東洋大姫路・阪下漣投手が復活の11球!右肘靱帯損傷から148日の約束のマウンド

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全国高校野球選手権は10日目、東洋大姫路(兵庫)が花巻東(岩手)に8-4で勝利し、14年ぶりのベスト16進出を決めた。この試合で、今春のセンバツで右肘靱帯を損傷した悲劇のエース・阪下漣投手(3年)が、148日ぶりに公式戦のマウンドに上ると、9回のピンチを11球で切り抜けるリリーフを見せ、亡き祖母、そしてチームメイトと交わした約束を果たした。

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「足が震えてました」悪夢払拭する11球2K

「足が震えてました。鳥肌が立った。これだけのみなさんが待っていてくれたのか」。4点リードで迎えた9回無死二塁の場面。その名前がコールされると、甲子園全体が大きな拍手に包まれた。今春のセンバツ1回戦、同じマウンドで右肘を負傷し、わずか23球で降板した悪夢が蘇る。「選抜みたいになったらどうしよう」。その不安を振り払うように、懸命に右腕を振った。

先頭打者を見逃し三振に仕留めると、続く打者も139キロのストレートで空振り三振。最後はこの日最速の143キロで遊ゴロに打ち取り、わずか11球で試合を締めた。「楽しみながら、緊張感の中でやれた。ホッとした」。試合後、その目には安堵の涙が浮かんでいた。

手術か、保存療法か…仲間と選んだ最後の夏

阪下漣投手はセンバツでは初戦の壱岐戦に先発するも、1回を投げて2失点して降板した。その後に下された診断は「右肘靱帯損傷」。医師からは「確実に手術」と言われ、「高校野球を諦めようという気持ちにもなった」と話す。しかし、高校野球で復活という決断を覆させたのは、仲間たちの存在だった。代わりにエースナンバーを背負った木下鷹大投手(3年)らから、「もう1回夏に甲子園出よう」と声をかけられ、手術ではなく保存療法を選択。

「チームの力になりたくて保存療法を選んだのに、何のためにやってきたんや」とリハビリが長引き、葛藤する日々もあった。しかし「そばに木下がいてくれたから。俺が甲子園に連れて行ってあげるからと」という盟友の言葉を信じ続けた。

その木下投手は、この日8回まで4失点と力投。9回、先頭に二塁打を浴びたところで、マウンドを阪下投手に託した。「お前だったら抑えられる」。その言葉を受け、阪下投手は「木下が甲子園に連れてきてくれた分、自分は恩返ししたい気持ちがすごい。木下のためにというか、チームの勝利のために腕を振るだけだった」と、最高の形で期待に応えた。

天国の祖母へ「甲子園で活躍する」

このマウンドには、もう一つの約束があった。中学3年の1月、肺がんで亡くなった祖母・美枝子さん。病室で「甲子園で活躍する」と誓った。センバツでは果たせなかったその約束を、最後の夏、ついに有言実行した。

阪下投手は昨年秋に近畿大会を制覇した主戦投手で、出場した明治神宮大会でも初戦の聖光学院戦で5回2安打無失点でコールド勝利すると、横浜戦では9回まで1失点に抑えて奥村投手、織田投手と互角以上の投球を見せる。タイブレーク10回も無失点に抑えたが11回2点を失い1-3で敗れたが、2025年の右投手では、健大高崎の石垣元気投手と東洋大姫路の阪下が双璧だった。

その実績と、苦しんだ日々が、甲子園での大歓声を呼んだ。8-4とリードするも9回に先頭打者に安打を許して球場全体が花巻東を応援する雰囲気に傾きかけた。しかし、岡田監督はすかさず、マウンドに阪下投手を送り込み、その雰囲気を一気に変えた。ただの復活劇ではない感動を覚えるマウンドだった。

試合後、岡田監督は、主将の渡辺拓雲選手に、ウイニングボールを、「阪下に渡してあげ」と指示。大切な記念球を、力が入るようになった右腕で、力強く握りしめた。「目標は日本一。自分がその1ピースになれれば」。48年ぶりの全国制覇へ、東洋大姫路に最後のピースが復活を遂げた。

最速143キロ、スライダーも駆使し1回ノーヒットで2奪三振と素晴らしい投球だった。しかし、昨年までのフォームからは、首や体の反動を使うような形で、なんとか球速のある球を投げようとしているフォームになっている。また、スライダーについても以前よりは曲がりもキレも小さい。プロ志望の意志を持っていた阪下投手にとって、本格的な復活というのは、今の肘の状態では難しいのかもしれないが、それでも堂々とスライダーを投げ、真っ直ぐもしっかりと投げ切る投球は、将来、プロのマウンドで投げる姿をイメージできる。

阪下漣投手 プロフィール

  • 氏名:阪下 漣(さかした れん)
  • 生年月日:2007年7月5日
  • 出身地:兵庫県西宮市
  • 経歴:浜脇タイガース(小2) – 兵庫西宮ボーイズ(浜脇中) – 東洋大姫路高校(3年)
  • 投打:右投右打
  • 身長・体重:181cm・86kg
  • ポジション:投手
  • 主な特徴や実績:最速147キロ右腕。今春センバツで右肘靱帯を損傷するも、保存療法で復活。2025年夏の甲子園2回戦で148日ぶりに公式戦登板し、1回無失点2奪三振と好投。昨秋はエースとして明治神宮大会4強。50メートル走6秒9、遠投100メートル。
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この記事を書いた人
yuki

 1996年よりドラフト会議ホームページを解説し、30年間に渡ってドラフト候補選手の分析や12球団のドラフト会議の指名を分析してきました。
 雑誌「野球太郎(http://makyu.yakyutaro.jp/)」にも執筆。
 2008年からはドラフト会議に関する情報を毎日投稿しており、2024年時点で23,000以上の記事書いています。
 また、ドラフト候補の動画とみんなの評価サイト(player.draft-kaigi.jp)では、みなさまがおすすめするドラフト候補選手が、これまでに3万5千人以上登録されておりその評価も行っています。

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