2019年のドラフト会議で大学生は、投手17名、捕手6名、内野手4名、外野手9名の36人が指名された。ドラフト会議で指名された大学生を、ポジション別にドラフト指名順に並べた。プロにたどり着いた選手、そして共に道を走ったドラフト候補選手たちをストーリーで追う。大学生編の第1話です。
2019年ドラフト総決算(1)高校生の選手達・・・高校生編
2019年ドラフト会議、大学生で指名された選手
1~2位 | 3~4位 | 5位以下 | 育成 | |
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投手 | 森下暢仁 明治大 吉田大喜 日本体育大 橋本侑樹 大阪商業大 坂本裕哉 立命館大 | 津森宥紀 東北福祉大 伊勢大夢 明治大 津留崎大成 慶応大 村西良太 近畿大 杉山晃基 創価大 大西広樹 大阪商業大 | 福森耀真 九州産業大 望月大希 創価大 小川一平 東海大九州 | 松田亘哲 名古屋大 本前郁也 北翔大 出井敏博 神奈川大 大関友久 仙台大 |
捕手 | 佐藤都志也 東洋大 海野隆司 東海大 | 郡司裕也 慶応大 | 石原貴規 天理大 梅林優貴 広島文化学園大 | 植田将太 慶応大 |
内野手 | 柳町達 慶応大 福田光輝 法政大 勝俣翔貴 国際武道大 | 山崎真彰 ハワイ大 | ||
外野手 | 宇草孔基 法政大 | 高部瑛斗 国士舘大 | 蝦名達夫 青森大 片岡奨人 東日本国際大 | 宮田輝星 福岡大 小野寺暖 大阪商業大 奥山皓太 静岡大 大下誠一郎 白鴎大 佐藤優悟 仙台大 |
2015
まず4年前を振り返ってみる。2015年の高校野球、センバツは敦賀気比が、夏の甲子園は東海大相模が優勝している。県岐阜商の高橋純平投手が152キロの速球を投げてNO.1と言われ、センバツ優勝の敦賀気比では平沼翔太が投手だけでなく野手としても注目された、篠原涼と共にドラフト候補だった。また2年時から優勝候補と言われた東海大相模の小笠原慎之介、吉田凌が優勝をして注目された他、準優勝をした仙台育英からも平沢 大河、郡司裕也、佐藤世那などが注目された。他にも、その前年のセンバツで2年生ながら優勝投手となった龍谷大平安の高橋奎二、元氏玲仁や近江の小川良憲、九州学院の伊勢大夢などが注目されており、夏は秋田商の成田翔、花巻東の高橋樹也、霞ケ浦の綾部翔、専大松戸の原嵩、遊学館の小孫竜二などの好投手が注目された。
甲子園では特に早稲田実の清宮幸太郎や九州学院の村上宗隆といった1年生が注目されたが、早稲田実の加藤雅樹や静岡商の堀内謙伍、内山竣、安本竜二、中京大中京の上野翔太郎、九州国際大付の富山凌雅と山本武白志なども注目された、関東第一のオコエ瑠偉が抜群の足と守備で注目されたのもこの年だった。
この年のU18代表を見てみると、投手ではプロ注目の高橋純平や小笠原の他に、大分商でプロが注目した森下暢仁も甲子園に出ていなかったが代表入りしている。しかし大会では甲子園で好投をした仙台育英の佐藤や中京大中京の上野が中心となっていた。打線は主軸がやや弱く、1年生の清宮幸太郎が選出され4番を任された。しかし最後には東海大菅生の勝俣翔貴が4番を打った。他には平沢大河、宇草孔基、オコエ瑠偉、船曳海、津田翔希、杉崎成輝など足や守備の安定した選手が集まっていたが、日本の甲子園などで行われたU18ワールドカップは、決勝に進出したもののアメリカに惜しくも敗れ、準優勝に終わっていた。宇草は代表では代走や守備固めで起用されており、なかなかヒットが出ず、2次ラウンドのキューバ戦でようやく初ヒットが出て、それはそれで話題となっていた。
ドラフト会議では高橋純平と平沢大河が1位指名で重複し、オコエ瑠偉、小笠原慎之介が外れ1位で指名され、智弁学園の廣岡大志、日大三島の小澤怜史なども上位で指名された。しかし全体的には明治大の高山俊、富士大の多和田真三郎、青学大の吉田正尚など大学生が注目された年だった。
郡司裕也や桐生第一の山田知輝、作新学院の朝山広憲、木更津総合の檜村篤史、早稲田実の加藤雅樹、東海大相模の杉崎成輝、豊田寛、大阪桐蔭の福田光輝、中部商の前田敬太などはプロ志望届を提出せずに大学に進学し、東海大菅生の勝俣、聖光学院の佐藤都志也、遊学館の小孫竜二などはプロ志望をしたものの、指名漏れとなり大学に進学をした。
大学で頭角を現した
いきなり結果を見せたのは、慶応大の柳町達である。1年生春の開幕戦で7番センターで出場すると、2ランホームランなど5打数2安打3打点の活躍を見せ、2回戦でも3打数2安打3打点の活躍を見せた。この2試合が、高校時代はそれほど注目されていなかった柳町の人生を大きく変えたかもしれない。これ以降、センターは柳町の物となり、打率.311に2本塁打8打点でいきなりベストナインを獲得した。慶応大では左腕の高橋佑樹も4試合に登板すると、鳴り物入りで入学した郡司裕也もまずは1打席に立つと、秋にはスタメンマスクを被るようになっていった。明治大の森下暢仁も入学から注目された。しかし、1年の春秋はまだ肩慣らし程度に登板となり、2年生になってから本格的に投げ始める。
東都では国学院大の伊藤雅人選手が活躍を見せる。関東第一時代にオコエと共に注目された選手だが、1年春に10試合34打席に立ち9安打を記録していた。また東洋大は二刀流の山田知輝が春に投手として登板をした他、U18代表だった津田翔希が春に30打数7安打と経験を積んだ。
地方リーグでは石巻専修大の1年生・菅野一樹が4勝1敗、防御率0.70でいきなりリーグ1位の成績を残した。聖和学園出身の140キロを超す球を投げる本格派で期待が膨らんだ。また共栄大の清水蓮も4勝1敗、防御率1.61でリーグ2位の成績を残した。九産大の浦本千広も2勝0敗ながら防御率1.88で好投手のそろう福岡六大学でリーグ2位となった。東北福祉大の八木彬も1勝0敗、防御率1.71でリーグ5位の成績を残した。
甲子園で優勝した東海大相模の選手が多く進んだ国際武道大では、磯網栄登がいきなり18安打を打ち、リーグ4位となる打率.400を記録した。奈良学園大の菅田大介も打率.379を記録しリーグ3位となる。京都共栄出身のそれほど注目されていない選手だったが、その後、二刀流としてプロのスカウトが注目存在になっていく。大学野球選手権でもその菅田は9番バッターで出場し初戦で2安打を打ったものの、続く2試合はノーヒットだった。共栄大の清水も中央学院大戦で先発をしたものの3回途中で降板し、東北福祉大の八木も九産大戦、上武大戦で先発を任されるも3回まで持たずに降板した。その中で、リリーフで登板した津森宥紀は九産大戦で1回1/3を1安打3奪三振無失点、上武大戦では1回1/3を無失点に抑える好投を見せるのだった。
そんな中、熊本では4月14日と16日に震度7を観測する地震が発生し、神奈川の横須賀工業時に注目されていた小川一平投手はそこで被災した。寮の近くのアパートも倒壊し、住んでいた学生が犠牲となった。野球部は一度休部となり、部員は実家へと散っていく。野球ができるのかどうかという中での大学野球のスタートとなった。
大学生の主役候補
2017年、東京六大学で昨秋に優勝を争った明治大と慶応大はエースの交代期を迎える。明治大はリーグ通算23勝を挙げた柳裕也が抜け、4年生の斉藤大将、3年生の水野匡貴などのエース争いなると見られたが、この春にエースの座に就いたのは2年生の森下だった。森下は序盤の3カードは2戦目の先発を任され1勝2敗だったが、安定したピッチングが評価され、立教大のカードで1戦目に先発し、6回まで7つの四死球を与えながらもノーヒットピッチングを見せた。ノーヒットのまま降板をしたがこの投球がインパクトを与え、3戦目も先発を任されると8回を1失点に抑える好投を見せた。最終的に2勝2敗、防御率2.48でリーグ2位の成績を納め、明治のエース・森下を強く印象付けた。
慶応大もリーグ通算26勝を挙げた加藤拓也が抜けた。その中で2年生の高橋佑が6試合に先発し2勝0敗の成績を残した。またキャッチャーの郡司は3本塁打に12打点、打率.345でリーグ3位となる活躍を見せた。しかし、その記録を早稲田大の加藤が上回る。4本塁打16打点、打率.375を記録し堂々の首位打者を獲得した。しかし、今季の主役は立教大、そして立役者は同じ2年生投手の田中誠也と手塚周だった。田中は大阪桐蔭から立教大に入学して2年目、今季は10試合に登板してそのうち7試合に先発し3勝3敗の成績を残す。そして手塚も5試合に先発し3勝1敗と好投し、2人で8勝を挙げた。そして立教大が実に35季ぶりとなるリーグ優勝を果たした。藤野隼大も2年生ながら正捕手としてマスクを被り、打率.321を記録し、黄金世代の気配をにおわせた。
東都でも2年生が主役となる。東洋大の佐藤都志也が2年目にしてブレーク、打率.483を記録して首位打者を獲得した。まだ捕手としてではなく一塁手で出場しベストナインも獲得、この佐藤の活躍で東洋大は優勝を納めた。
また関西六大学リーグでは大商大の大西広樹が突き抜ける。5勝0敗、防御率1.43という堂々たる成績を残し、大学野球選手権でも初戦の京都学園大戦で9回4安打1失点完投勝利を挙げている。また国際武道大は勝俣翔貴を始め、東海大相模で優勝した杉崎成輝、豊田寛、磯網栄登などがチームを引っ張り、大学野球選手権決勝まで勝ち上がる。しかし、そこに立ちはだかったのは立教大の2年生コンビ、決勝戦では手塚、田中のリレーで武道大打線を抑え、二人は日本一を勝ち取った。
そんな中、関西学生リーグでは近畿大の竹村陸、谷川刀麻、中川智裕の3人に注目が集まる。谷川は3番を打ち1本塁打に打率.292、竹村は4番を打ち打率.382を記録した。中川は186cmの大型遊撃手として注目されていた。また、関西学生リーグでは一人の投手が156キロを記録して大きな衝撃が全国に走る。福島滉貴は東福岡高校から入学した172cmの大きくない投手だったが、5月6日の関西大戦でビハインドの場面で登板すると、156キロの数字を表示させた。これで勢いづいた打線は一気に同点に追いつくと、福島も5回を投げて10奪三振無失点の見事な投球を見せた。今季、福島は12回1/3を投げて7安打無失点、奪三振はイニング数の倍となる24を奪った。怪物誕生の期待が膨らんだ。
秋は明治大の森下が故障のためほとんど登板をすることができなかった。また春に首位打者を争った加藤、郡司も、打率で下位の方に低迷し、まだ本物とは言えなかった。その中で立教大の藤野が4本塁打、打率.386の活躍を見せ、この3人の争いは続いていく。東都リーグでは東洋大の佐藤が秋もリーグ3位の打率を残し、こちらは本物という声が大きくなる。しかし東都では、入学時に期待された投手がいまいち活躍が見せられずに、やや寂しい状況が続いていた。
地方リーグでは創価大の杉山晃基が6勝0敗、防御率1.26という素晴らしい成績を残し、リーグ1位となった、田中正義の抜けた創価大に新たなエースの誕生を予感させた。国際武道大の勝俣は秋に2本塁打、打率.413と、U18の4番を打った実力を順調に伸ばしていた。しかし、全体的に2年生の投手はやや伸び悩み、多くの選手の名前が挙がることはなく、3年生を迎えるのだった。
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