米スタンフォード大学でプレーする花巻東OBの佐々木麟太郎内野手(20)にNPBとMLB間で新たなルールが制定され、今秋のドラフトでの指名が可能になったことがわかり、複数球団が指名の可能性を検討している。夏の甲子園では、母校・花巻東の応援に駆けつけ、後輩たちの戦いを見守った怪物の進路に、日米の注目が集まっている。
聖地で後輩にエール、父・佐々木洋監督「卒業生の活躍につながれば」
アメリカでは大学でのシーズンを終え、2年生に向けた休暇期間となっている佐々木麟太郎は、この日も三塁側内野席から、真剣な表情で後輩たちの戦いを見守った。8日の1回戦・智弁和歌山戦に続き、15日の2回戦・東洋大姫路戦にも駆けつけ、声援を送った。後輩たちは偉大な先輩の応援に応えることができず、2回戦で敗退となったが、後輩のプレーに自らの甲子園の思いも蘇ったはずだ。
父であり、花巻東を率いる佐々木洋監督は、麟太郎選手が応援に駆けつけたことについて、「卒業生全体がそうですけど、我々の活躍を見て、卒業生、OBの活躍につながればと思っています」とコメントしたが、試合に関する質問以外は、「麟太郎の話はナシで大丈夫ですか? 試合の話なので。すみません」と、息子の進路に関する言及は避けた。
新ルール制定で今秋ドラフト指名が可能に、巨人、ソフトバンクなど5球団以上が指名検討
史上最多の高校通算140本塁打を放った佐々木選手は、今春から米スタンフォード大学へ進学。1年目から52試合に出場し、打率.269、7本塁打、41打点と、その長打力は米国の舞台でも通用することを証明した。当初、NPBのドラフト対象となるのは早くとも2026年以降と見られていたが、今年に入りNPBとMLB間でドラフト指名のルールが確認され、今秋のドラフトでの指名が可能になった。
NPBのルールでは、交渉権を獲得した選手とは翌年末までに契約できなければ交渉権を失うとされていたが、MLBのドラフト会議後の7月末までに延長され、今年のNPBのドラフト会議で指名されたあと、翌年6月のMLBのドラフト会議の指名を待ってから契約することが可能となった。またMLBのドラフト会議は「4年制大学で2年生を修了、または21歳以上になった時点」での指名が可能で、来年の4月に21歳になる佐々木選手はMLBのドラフト指名対象選手となるため、NPBは今年のドラフト会議での指名が可能となる。
この動きを受け、NPB球団も水面下で調査を加速。巨人、福岡ソフトバンク、埼玉西武などはすでに米国へスカウトを派遣し、佐々木麟太郎選手のプレーを直接視察。現時点で5球団以上が指名を検討しているとみられるという。ある球団関係者は、「人気、注目度が高く、指名するなら1位で行かないと失礼」と考えており、複数球団による1位競合の可能性もあるとした。
セ・リーグDH制導入も追い風、焦点は「メジャー志向」
佐々木選手への注目が高まる背景には、2027年からセ・リーグで導入されるDH制も影響している。「一塁と指名打者が本職で、打つことが専門の麟太郎をセ球団が指名しやすくなったのは事実」とNPB関係者は語る。
最大の焦点は、本人の「メジャー」志向で、もともと、2026年7月のMLBドラフトでの指名を目指し、米大学へ進学した経緯がある。NPB球団が指名権を獲得しても、来年のMLBドラフト終了まで交渉ができないというリスクに加え、ポスティングシステムによる将来的なメジャー移籍の容認や、スタンフォード大学の単位取得のためのシーズン途中の渡米など、様々な条件交渉が必要となる可能性が高い。「どこまで麟太郎の希望、要望を受け入れるかどうか。各球団の誠意が試されそうです」と、パ・リーグのスカウトは語る。
それでも佐々木選手はドラフト時に、日本のプロ野球でプレーすることもギリギリまで悩んでいた。渡米時には「まだまだ未熟ですが、2年後以降にMLB、またはNPBのドラフトで指名をいただけるチャンスもある。理想は2年後、3年後のドラフトで指名をいただければうれしい。それを選択肢の一つとして考えている」と話している。
秋のドラフト会議では、この佐々木麟太郎選手の指名についても、大きな話題となりそうだ。そして、球団にとっても上位の枠を一つ使って佐々木選手を迎える覚悟があるかが問われる。
佐々木麟太郎選手 プロフィール
- 氏名:佐々木 麟太郎(ささき りんたろう)
- 所属:スタンフォード大学
- 出身高校:花巻東高校
- ポジション:内野手
- 投打:右投左打
- 主な特徴や実績:高校通算140本塁打の歴代最多記録を持つ。花巻東高校卒業後、米国のスタンフォード大学へ進学。大学1年時には52試合に出場し、打率.269、7本塁打、41打点を記録。今秋のNPBドラフトで1位指名される可能性が浮上している。













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