昨夏に左肘のトミー・ジョン手術を受けた健大高崎(群馬)の左のエースで、「ミスターゼロ」の異名を授かる佐藤龍月投手(3年)が6月22日、330日ぶりとなる対外試合のマウンドに上がった。鶴岡東(山形)との練習試合に先発し、1イニングを14球で三者凡退に抑える完璧な投球を披露。視察に訪れた巨人、東北楽天、横浜DeNAなど8球団11人のスカウトに、順調な回復ぶりと変わらぬポテンシャルをアピールした。
「感謝の気持ちでいっぱい」8割の力で143キロ、1回を完璧に
佐藤龍月投手は左腕を振った。8割程度の力感ながら、ストレートは最速143キロを計測すると、カットボール、カーブを織り交ぜ、遊ゴロ、投ゴロ、三ゴロと、わずか14球で打者3人を完璧に抑えた。投球後に「安心しました」と話し笑顔を見せた。
「今まで支えてくれた方たちへの思いが湧き上がってきた。凄く感謝の気持ちいっぱいで投げました」と登板した約11ヶ月ぶりの実戦マウンド。「思っていたよりも、いい数字が出た。これからもっと出力を上げていきたい」と、確かな手応えを感じていた。
この日は、肘への負担を考慮し、宝刀のスライダーは封印。インステップの幅を約20センチから約10センチに狭めた新フォームで、肘の故障対策もしっかりと行った。自己採点は「85点くらい」と、上々の再スタートを切った。
巨人「リストに十分入れる」楽天「夏に間に合う」DeNA「復帰の早さ凄い」スカウト絶賛
昨春のセンバツで22回無失点と圧巻の投球でチームを優勝に導いた左腕の復活登板に、8球団11人のスカウトも熱い視線を送った。
巨人・大場豊千スカウト:「順調すぎますね。手術明けの怖さを感じさせることなく腕を振ることができていました。ケガをする前の去年の実績やスライダーの威力は皆が知るところ。十分ドラフトのリストに載る投手だと思います」
東北楽天・井上スカウト:「夏に間に合うと感じさせてくれた。上司にもぜひ見てもらいたいと言わなければ」
横浜DeNA・稲嶺スカウト:「プロでもトミー・ジョン手術から復帰までに1年ないし1年半かかると言われている中で、それを上回る早さで復帰できたのはすごい」
まずは復活の投球を確認し、いよいよ迎える夏の群馬大会に向けて、視察の予定を組み入れたことだろう。球団幹部への打診も行うこととなりそうだ。
大谷翔平から「勇気もらった」苦しいリハビリ乗り越え
昨夏の群馬大会優勝後に左肘痛が限界に達し、高校卒業後のプロ入りを見据えて手術を決断した。「腕を固定して動かすこともできず、運動すらできない」という苦しいリハビリ期間の支えとなったのが、同じ手術を乗り越えたドジャース・大谷翔平選手の存在だった。大谷選手が復帰登板でいきなり100マイル超えを記録した姿に、「自分が不安にしていたところを、大谷さんを見ることで自信、勇気をもらった」と、迷いは消えた。
連覇のかかる夏の群馬大会では、主に4番・外野手として出場し、投手としてはエースの石垣元気投手(3年)らを支えるリリーフとして短いイニングを任される予定だ。「けがする前より数段階レベルアップした自分を見せたい」。大谷選手に刺激を受け、「二刀流」で挑む最後の夏。投手・佐藤龍月の止まっていた時間が、再び力強く動き出す。
佐藤龍月投手 プロフィール
- 氏名:佐藤 龍月(さとう りゅうが)
- 生年月日:2007年7月13日
- 出身地:川崎市
- 経歴:陣屋少年野球部(下小田中小1年) – 東京城南ボーイズ(西中原中) – 健康福祉大学高崎高校(3年)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:173cm・73kg
- ポジション:投手、外野手
- 主な特徴や実績:昨夏に左肘トミー・ジョン手術を受け、2025年6月22日に330日ぶりに実戦復帰。1回を三者凡退、最速143キロを記録。巨人、楽天、DeNAなど8球団のスカウトから高い評価を受ける。2024年春のセンバツでは22回無失点でチームを初優勝に導き「ミスターゼロ」の異名を持つ。U15侍ジャパン選出経験あり。





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