第98回選抜高校野球大会が阪神甲子園球場で幕を開けた。開会式直後の第1試合、昨夏の甲子園を制し史上5校目の「夏春連覇」に挑んだ沖縄尚学(沖縄)が、15年ぶりに聖地へ帰還した帝京(東京)と激突。昨夏の優勝投手であり、今秋のドラフト上位候補に挙がる最速150キロ左腕・末吉良丞投手(3年)が先発のマウンドに上がった。5回まで帝京打線をわずか1安打無失点に抑える完璧な投球を見せたが、8回に守備の乱れから逆転を許し3-4で惜敗した。力量不足と話した末吉投手は、「プロ一本」を示した。
121球の熱投実らず。逆転を許した「直球勝負」への後悔と責任
序盤の末吉良丞投手は、まさに王者の風格を漂わせていた。新しく習得したチェンジアップと最速147キロの直球を織り交ぜ、帝京の強力打線を翻弄。5回まで1安打無失点、6奪三振。6回には1死一、三塁のピンチでセーフティースクイズをスライダーで空振りさせて併殺に仕留めるなど、勝負所での落ち着きも際立っていた。もし仮に、現在議論されている「7回制」が導入されていれば、末吉投手は球数96の4安打完封勝利を飾っていた。
しかし、ドラマは9回制の野球だからこそ生まれた。1点リードで迎えた8回、先頭を遊ゴロ失策で出すと、四球と犠打失策が重なり無死満塁。4番を三振に取ったものの、5番・蔦原悠太選手に対し、カウント1-1から内角を狙った直球を中堅フェンス直撃の2点適時二塁打とされ逆転を許した。結局、末吉投手は7回2/3を投げて5安打4失点(自責点0)、121球でマウンドを降りた。試合後、「直球で勝負した自分の責任。力負けです(日刊スポーツ)」と唇を噛み、「勝てるピッチャーは味方のミスを自分でどうにか抑えるもの(スポーツニッポン)」と、一切の言い訳を拒絶した。
比嘉監督がエースへの期待
昨夏の優勝を経験し、高校日本代表でも腕を振った末吉投手。しかしこの日、自らに下した採点は厳しいものだった。「追い込んでから三振が取れないところが敗因。これが今の自分の力量(日刊スポーツ)」と語る言葉には、勝利を確実に手繰り寄せるための「絶対的な制球力」が不足していたことへの自戒が含まれていた。
比嘉公也監督(44)も、エースの異変とチームの課題を感じ取っていた。「8回はエラー、四球、スローイングミス。やはり1イニングにあれだけのミスが出たら、こういう結果になってしまう(スポーツ報知)」と悔やみつつ、「末吉には酷だけど、末吉なら何とかしてほしかった(スポーツ報知)」と、エースへの信頼ゆえの厳しい言葉を贈った。昨秋はフォームを見失い、もがき苦しんだ時期もあった。そこから復調して見せた今回の147キロの快投。比嘉監督は「一回り大きくなって、また夏に甲子園で投げてほしい」と、再起を促した。
ネット裏のスカウト陣は絶賛「もうプロを狙うレベル」と4球団が太鼓判
敗退こそしたものの、ネット裏に集結したNPBスカウト陣の評価は、昨秋を大きく上回るものだった。最速147キロを計測した直球の質に加え、緩急をつけるチェンジアップ、さらには球速の増したフォークなど、進化した投球術に注目が集まった。各球団のスカウトは、末吉投手のポテンシャルを以下のように評価している。
DeNA・八馬アマスカウティンググループグループリーダー:「今日は上体が突っ込む分、ボールが高かった。そこを修正したらもっとよくなる。まだ荒さがあるけど、投げる能力が高く、いい投手ですね」
巨人・武田スカウト:「去年の秋よりはまとまっている。出力や変化球の精度は夏までに取り戻してほしい。これからも楽しみ」
オリックス・縞田スカウト:「昨夏が終わってから調子はだいぶ上がっている印象。真っすぐの質も上がり、強さもある。順調ですね」
日本ハム・大渕CBO補佐兼スカウト部長:「ベースの前で、あれだけの生きた球を投げられる。真っすぐでも変化球でも、空振りを取れる。もうプロを狙うレベルですね」
末吉投手は試合後に自らの進路について、「いまはプロ一本でやらせてもらっている。国内です(スポーツ報知)」と断言した。横浜の織田翔希投手や山梨学院の菰田陽生投手とともに「BIG3」と称される逸材は、この悔しさをプロへの糧にするつもりだ。
「夏の甲子園、全員で戻れることを目標に頑張りたい(デイリースポーツ)。」末吉投手は涙を見せることなく、しっかりと前を見据えて聖地を後にした。剛のイメージだった投球に柔らかさが加わりつつある。昨夏の優勝メンバーから野手が総入れ替えとなったなか、背番号1を背負い、チームを支え続けた121球。新垣有絃投手(3年)らとともに、沖縄で再び日本一を目指す。
【末吉 良丞】 プロフィール
- 氏名: 末吉良丞(すえよし・りょうすけ)
- 所属: 沖縄尚学高校(3年)
- 出身: 沖縄県(豊見城市立長嶺中出身)
- ポジション: 投手
- 投打: 左投左打
- 身長・体重: 178cm、90kg
- 主な特徴や実績: 2025年夏の甲子園優勝投手。高校日本代表。最速150キロを誇るプロ注目左腕。直球の伸びとスライダーに加え、今春はチェンジアップとフォークで投球の幅を広げた。進路はプロ志望を明言している2026年ドラフト上位候補。











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